上司への信頼と部下自身の肯定感の醸成のために配慮の一言をいつも忘れずに。
2018-04-19 15:46:25 : コーチング
職場の何気ない会話の中に、部下のやる気を削ぐ「種」はいくらでもあります。
I太君のように上司をロールモデルにしているようなケースでは、特に配慮が望まれます。
I太君:
「係長、聴いてください!!(若干気持ちが高揚している感じ)課長ってひどいんですよ。僕が都合が悪いってしってるのに、飲み会セットしたんです」
係 長:
「それは怒れるね。課長もひどいな」
I太君:
「そうですよね。僕、前から課長と呑みたいって言ってたし、課長が候補日を上げられたんで、都合が悪い日をちゃんとお伝えしたんです」
係 長:
「I太君は、ちゃんと都合が悪いことをお伝えしたんだね。それでも、その日にされたのは、何か理由があったんじゃないかな? 伺ってみた?」
I太君:
「はい、他の社員の参加が一番多い日に決めたっておっしゃってました。どうせ僕なんて、末端の末端の部下だから、仕方ないですよね」
係 長:
「I太君は、末端の末端の社員なんだろうか?」
I太君:
「そうですよ。僕は、まだ入社2年目ですし、他に誘われたのは、5年以上の社員ばっかりだから、その人たちの方が優先されるのは仕方がないです。でも、僕も予定聞かれたので、ちゃんとお伝えしたから・・・期待していたんです」
係 長:
「期待を損なわれたことに腹が立つんだね。僕が代わりに謝るのはおかしいことかもしれないけれど、僕の気持ちとしてお詫びしたい。申し訳ないことをしたね」
I太君:
「いえいえ、そんな・・・係長にお詫びしてほしいとは思ってないんです。それに、皆の都合を合わせるのは、たいへんだから、課長も仕方がない選択だったと思います。僕、課長のように仕事ができる人になりたくて・・・でも、僕なんか、まだまだ見積もりの一つも自分では作成できていないし。僕がきちんとお伝えしなかったかもしれないから。」
係 長:
「そうなんだ。I太君は、課長のような仕事ができる上司になりたいんだね。また、機会を作るよ。今度は僕が課長とI太君の二人の都合を調整するよう、約束しよう。」
職場の何気ない会話ですが、I太君のように、憧れの人からの声かけであれば、期待を損なわれた残念な気持ちが、自己肯定感を下げてしまう場合があります。
もし、課長が、飲み会の予定がI太君の都合に合わせられなかったことについて、申し訳ないという配慮を言葉で伝えることができていたら、更にI太君の課長への信頼と、自分への肯定感は上がっていたことでしょう。
上司は、いちいちそんなことは言葉で言わなくてもいいだろう…程度に考えることでも、部下の心は沈む場合があります。コーチングを学習することによって、相手の性格や才能に適した声がけができるようになるため、こういったコミュニケーションミスマッチを避けることができるようになるでしょう。
会話の行く先を常に意識することを忘れないようにしましょうね。
問題や課題を抱えている当人が、解決しようと決意し、どう行動するかを決めていく過程をサポートするために行うものです。
問題解決のために、上司と会話する場面が多いので、どうしても、上司が助言や指示を与えてしまいがちですが、部下の心の声は、果たしてそれを望んでいるのでしょうか?
( )の中は、それぞれの心情です。
今回は、そんなことを考えながら、お読みください。
(今年も頑張ってほしいという期待を込めた質問)
部下:
「はい、わたしも今年で35歳。崖っぷち状態から脱出しようと思います」
(新年早々、何を聴かれるかと思えば、目標設定かぁ・・・重いな・・・)
「崖っぷちにずっと立っているのかい?」
(そんなこと思っているのか?ちょっと驚いたな)
部下:
「はい、ここ数年、思うように成果が上がっていません」
(ちょっと謙遜しておいたほうがよさそうだな)
係長:
「成果が上がっていないと感じているのなら、改善策を考えたらいいのじゃないのかね?」
(おいおい、伸び盛りの君がそんなに気弱なことでどうする? ここはハッパをかけたほうがいいな)
部下:
「いえ、改善策は考えているんですが、毎年、結果に結びつかないので」(そんなことはとっくに考えてます!)
「それは、改善策とは言えないんじゃないのか?」
(結果が伴わないなら、それは改善策ではないことくらい、彼なら理解していそうなのになぁ)
部下:
「はぁ、そうかもしれませんが、アイデアはいいと思うんです」
(面倒なことになったな・・・しまったなぁ)
係長:
「アイデアはいい?じゃ、何が悪いんだ?」
(本気でこの子は考えているんだろうか?)
部下:
「はぁ、続かないんです」
(ヤバイから、本音を言って、話しを終えたいな)
係長:
「続かないんじゃなくて、続けないんじゃないのかね?」
(おいおい、冗談じゃないよ。助言したほうがいいみたいだな)
部下:
「・・・・」
(おお・・やっちまった!面倒なことになった 説教だなこのパターン)
係長:
「主体的に考える癖がないように思うんだが・・・」
(自分の自己成長は自己責任で計画しなきゃダメじゃないか。自分は常にそうしてきたから、今があるのだ。わからせてやろう)
部下:
「はぁ・・・・」
(だから何だって言うんだ。ちゃんと考えているけど、今は何を言ってもダメだな)
係長:
「君に一番足らないことは、自分を信じるということじゃないのかね?
決めたことを決めたとおりに実行する。そこには、イレギュラーはない。
自分を大事にすることだな。今年は、君の自信を高めることが優先されるなぁ」
(自分で考えられないなら、指示を出そう。きっと自分を見失っているだけだ。落ち着けば、自分を取り戻すだろう)
部下:
「ありがとうございます。自分を裏切ることに慣れているせいか、係長の言葉 はイマいちピンときませんが、自信が大事だという気持ちは湧いてきました」
(せめて、ちょっとは言い返しておこう。なんで新年早々説教なんだろう。なんで目標を指示されなきゃならないんだ?)
コーチングの難しさは、部下の話すことを、自叙伝的に聴いてしまうか、あるいは、自分の経験的知見で解決してあげようというおせっかいな気持ちが手放せないからでしょう。
また、会話の目的を見失わないよう、会話の行く先を常に意識することを忘れないようにしましょうね。
負のループを断ち切る人編
ヒントになっていますか?
係長:
係長:
係長:
「具体的にどうすればいいんですか?」課長:「何を望むかではなく、何ができるか、自分たちで考えるよう促してくれないだろうか?」
係長:
「自分たちで考えろと、わたしが指示を出したところで、すでに自主的ではないと思いますが、いいんでしょうか?」課長:「そこまで厳密に考える必要はないと思うし、そんなことを言っていたらいつまでも目標が未達の状態が変えられないのではないだろうか」
:「課長は、今の目標未達の状態をどう受け止めていらっしゃるのでしょうか」
「負の連鎖だよ。これはまさしく。」
「どういうことですか?」
課長:
「上司の指示を真剣に聴いてくれるのは嬉しいが、いちいち、理論的な自己解釈を披露する前に、自分ができることを見つけて行動してほしいと、わたしは考えている。目標未達の大きな原因は、考えすぎて、行動できないことだろう。漠然と動くことは一見非効率なもんだが、効率を重視するなら、どんな動きが効果的、どんな動きが日効果的かを知らなければならない。とにかく、あなたの役割は、一人一人が、今までの経験を使って、今までより大きな成果を得られるよう指導することです。とにかく、行動の質は次の目標にして、行動の量を増やすよう指示してください。」理論派は、どうしても、理屈先行で行動量が少なくなってしまいます。
時には、事態を打開するために、行動量を増やすことが望まれます。
この課長のように、部下の話を一生懸命聞いたうえで、指摘と指示をだすことをためらわないように行動してみてくださいね。
自己信頼感の低い部下の育成
ヒントになっていますか?
「ありがとう。ようやく契約が成立したそうだね」
部下:
「いやぁ、あんなに長く時間をいただいた件ですから、ぜんぜん褒められないです」
「そんなことはないよ。ここまでよく粘ってくれたと思っている」
部下:
「いえいえ、係長のフォローのおかげです。自分では何もできていないですから。」
「そうかな?一生懸命頑張ったと思っているんだけどな。自覚がないのも残念だな」
部下:
「なぜ、残念なんですか?わたしはまだ、期待を寄せていただける人間じゃないです」
「自分に厳しいことはいいことだが、自分を褒める力もつけないとな。君が先輩になったり、上司になった時、部下に厳しくなりすぎることを考えないとな」
部下:
「係長は、私のそんな将来まで考えてくださっているんですか?」
「キャリアは、今、ここに集中することも大事だけれども、キャリアターゲットだけでなく、ビジョンを持たないと、自分の成長が実感できないばかりか、自分の才能や能力の使いまわしができないから、成果が安定しないんだ」
部下:
「そうなんですね。僕の契約は常に小さくて・・・少しもチームへの貢献ができずに、苦しいんです」
「君たちの年代は、誰かの役に立ちたいと思う気持ちが強いのは傾向としてあるようだね。しかし、他者への貢献は、自分への貢献とバランスがいるんだ。自分ご褒美ばかりも困るが、他者貢献だけでは心も体ももたなくなる。」
部下:
「そうなんですね。でも、自分を自分で認めるのは抵抗があります」
「私が何か手伝ったら、自己認識を高めることができると思うか?」
部下:
「ん・・・・考えたことがないので・・・」
自分への評価が厳しい人は、他人にも評価が厳しくなりがちです。
職場が求める評価の基準を、実感させることによって、自分と周りの見え方を変化させることができます。
また、キャリアとは、繰り返し実行して成果を得て初めて習慣化させることができるものです。
基準を肌で感じさせ、成功を満たししているのかいないのかを教えるとともに、
今回の成功を次に活かすためにどうしたら良いかを考えさえるために、一つの行動の結果は、必ずフィードバックしてフォローするようにしましょう。
初の新人指導係になる人編
協働作業のヒントが見つかりますように。
係長:
係長:
係長:
係長:
係長:
係長:
「わたしの役割ですか?・・・仕事を教えること・・ですかね」
係長:
「仕事を教えることも役割の一つですが、不安を抱くことがないよう、まずは、困っていることを聴いて、フォローして安心させてあげてください。新しい環境に入れば、誰でも不安を抱くものです。上司や先輩の名前一つがわからないことが、不安の種になります。最初から、仕事を軸に置いた関係を整えるのではなく、まずは、会社の生活に馴染めるよう、フォローをお願いします。あなたは、日ごろからとても親切な人なので、私は心配をしていません。
しかし、初めての指導係ですから、あなたの不安を持つかもしれませんから、いつでも相談してくださいね。」
誰もが抱く「不安」を払しょくするために、誰かの手がそこに伸びていることを知るだけでも、心が落ち着くものです。
部下への心配りを忘れないようにしましょう。
調整力の高い人の表現:
ノリのいい性格の行動特性:
行動を起こそうよ編
2017年も、皆様のコミュ力向上や、人材育成力アップのお役に立てたらうれしいです。どうぞ、よろしくお願いします。
「また、採用の時期が来ました。頭が痛い日が続くよね」
コーチ:
「毎年のことですね」
「大体、うちみたいな弱小企業に就職を希望する人なんていないんだよ」
コーチ:
「弱小企業だから、応募しないのでしょうか?」社 長:「そりゃぁ、大企業がいいに決まってるだろう。安心できるし、カッコいいんだろうな」
「セッションのテーマは、「大企業になる」ではないでしょう」
「そりゃぁ無理だよ。すぐになるわけない。まぁ、企業買収でもされない限り・・・」
「では、今日はどんなテーマでセッションしますか?悩み事を伺う時間でもOkですけどね」
「いや、それは時間の無駄遣いだと思う。うちに足らないものを教えてくれないか?外からの目から見て、何が足らない?」
「わたしの意見も大事かもしれませんが、御社のご担当者は何といってらっしゃるんですか?」
社 長:
「うちみたいな企業では、優秀な社員は採用できないという意見だよ」
「それは、社長の言葉にうなづいていただけではないですか?ご自分の言葉でおっしゃいましたか?」
「いや・・たしかに、そうですねと同意しただけのような気がする」
「ご自分の勤める会社に魅力がないと嘆く社員は、喝を入れ直さないとなりませんよね」
「?(ハッと気づく)・・・それが、コーチ、あなたの意見ですか?それなら、まずは、私が喝を入れられないとならんね・・言いづらいことを指摘するからこそ、あなたは信頼できる。もう一度、考えてみるよ」
できることからコツコツと積み上げるしかない問題がテーマであれば、コーチは、まず、とにかく行動を促すための指摘を恐れずに出しましょうね。
信念と思い込みの違い編
思い込みの激しい部下との会話です。
何か、ヒントを得ていただけると嬉しいです。
「店長、お客様の関心が、このごろ私たちの店から離れているように思う
のですが、店長、感じていらっしゃいますか?」
店長:
「そうかな?たまたま、今週は客足が遠のいているだけじゃないかしら?」
「いえ、確実に客足が減っています」
店長:
「減っていると感じる理由は何ですか?」
「トイレのペーパーの減り具合です」
店長:
「トイレットペーパーの減り具合?面白い観察をしているんですね」
「はい、お客様の来店に左右されるものの一つだからです」
店長:
「仮に、客足が減っているとして、何が問題になりますか?」
「はい、客足が伸びなければ、利益も増えることはありません」
店長:
「客単価を上げたら・・とは考えない理由は何ですか?」
「絶対的な量には勝てないからです」
店長:
「なるほど、それは確かに一つの考え方でしょう。でも、それ以外にもいろんな考え方はあるように思います。あなたが店の利益のことを十分に考えていることは、とてもうれしいし、とてもありがたいと思います。
しかし、だからと言って、一つの考え方にとらわれ過ぎるのはどうかと思います。思い込みと信念を持つことは違うように思いますが、いかがでしょうか?
もう一つ、あなたがそういう考えを持っていることを、職場のみんなに共有してもらいましょう。他のスタッフの考え方も足したり、ひいたりすると、もっと広い視野で課題を見つけることができるようになることでしょう。みんなと協力してみませんか?」
相手の主観的意見に振り回されると、管理者自身の意見が持てなくなってしまいます。管理者は、多角的に見渡したうえで、課題の発見や、問題への対処ができるようになっておかなければなりません。
部下の思いの強さが思い込みにつながりすぎることがないよう、指導と教育を行うようにしましょう。信念のある人というのは、考え方や表現にブレがないだけでなく、行動も一貫しているので、見分けが可能です。単なる思い込みの激しいだけの人は、言行一致がなく、自分ではそれに気づいていないという致命的な矛盾が見られるので見分けることができることでしょう。よく使う用言
「いえ、そうではなくて・・・」「絶対に・・・」「やっぱりそうでしょう」など行動の特徴
人の意見について、受け入れることなく反対の意見を述べる
自論を語りたがる
「成長支援に興味がある上司とない課長編
動かない会話を動かすきっかけになれば、うれしいです。
「どうかね?この頃の若い世代は、自己成長に興味を持っていると思わないかね?」
課長:
「はぁ、自己成長ですか・・・やれる子はやれるし、やれない子の方が多いですから。そんなに前向きな部下ばかりではないように思います」
「そうかなぁ。この間、東君と京谷さんと話をしたが、それぞれ面白いアイデアを持っていたよ。成長を予感させるものがあると思ったよ」
「部長は、毎日を知らないからですよ。あの二人は、まだ、自分の行動計画すら、自分では立てられないんですよ」
「それは、課長の指導が悪いからじゃないのかね」
課長:
「(沈黙)・・・・」
「そもそも、君は、年間どのくらい、自分磨きに投資しているのかね?」
「本を買ったり、ジムに行くお金を集めたりすれば、まずまずの投資だと思いますが・・・」
「そういう投資で、自分が成長したという実感はあるのかね」
「実感・・・ですか・・・」
「そうだよ。人を育てる役割を持ったなら、自分が成長している実感を得ることだよ。そうじゃなきゃ、自分を成長させる喜びを知らなくちゃ、できることじゃないだろう。時間もかかるし、育てる君の方に忍耐力が必要なことだからね。君はいつも、部下に細やかな目配りをしてくれているし、指導も適切だ。が、同時に、できないことができた時、部下と一緒に喜ぶというような係わりを見たことがない。どこか、冷たいというか・・仕事だからやっているという感じがする。人は、成長するものだけれども、企業内においては、成長させてあげるような係わりが必要だよ。勝手に育った部下は、いつか、自分の目を他に移す。信頼関係を維持し、会社の利益に貢献できるようにするためには、育てるという行為が必要なんだと、わたしは常に考えるが、違うかな」
課長:
「おっしゃる通りです」
「時間をかけるなとは言わない。しかし、時間をかけすぎても、ダメなものはダメなこともある。どうしたら、もっと相手をやる気にさせ、挑戦する勇気や覚悟が持てるようになるか考えてみてほしい。そのためには、若い社員と話をする時間を増やしてみることと、その時、今目の前にいる部下を受け入れることだよ。君には期待しているよ」
課長:
「はい。ありがとうございます」今後はますます労働力不足になります。
思いつくままに訓練をするようなことを避けるためにも、戦略を立てて、計画通りに進めてくださいね。
人格やキャリア履歴を活かしたコーチングの事例
業界によっては、若い世代に現場のトップを任せなければならない場合があります。経験も少ないリーダーを育てるヒントになればうれしいです。
「理想のマネジャー像とのギャップ編」
「新しい企画で、6週間のイベントをやっているんですが・・・取引先にもこの程度?って思われているようで・・・」
役員:
「歯切れが悪いね」
「はぁ、元々、イベント会社の持ち込み企画ですし、やったことがないし、準備の時間もそんなに持てず、苦戦しているんです」
役員:
「苦戦かぁ・・それは辛いな」
「マーケティングも十分手を打てたかどうか・・・」
役員:
「やったことがないのであれば、他のイベントと比較せず、通年の同月で比較して、売り上げは伸びてないのか?」
「いえ、それは伸びてます。天気も恵まれていますし、施設全体の客足も伸びていると聞いています」
役員:
「で、何が苦戦の原因なのかね?」
「部下の対応が、ほんとうにそれでいいのか?とか、取引先の応援などを要請する日に限って、客足が伸びないとか。自分の経営センスを問われているように思えてならないのです」
役員:
「考えすぎているようにも思うが、自分の仕事に悩みを抱えるほど、真剣に考えてくれていることを、うれしく思う。」
「ありがとうございます。でも、結果が出ないと・・」
役員:
「一つ、君に必要な事を示したいが、いいかな。そんなに自分を見くびって何か・・・そうだな、勇気や決断ができるものなのかな?
まず、君は、自分が理想とする店長がどんなイメージか、明確に描け。そして、今の自分とのギャップを感じる理由を書き出してみたらいい。やったことがないことに挑戦しようと思った、その君の心意気を役員会は承認したわけで、その理由を、役員のわたしの立場から考えてみよう。いつでも考えがまとまったら、連絡してきなさい。話を聴く。このイベントを成功させるには、君の自分を信じる気持ちが左右する。そして、そういう理由で失敗をさせたくはない。このイベントの成功が、君の自己好意感を高めることになるから、真剣に頼むよ」
人を育てるには、実学は重要で、「やらせてみなければ、人は育たず」という基本的な教え通り、行動を促しましょう。しかし、そのためには、承認する、励ます、考えさせるという地道な育成を忘れないようにしましょう。よく使う用言
「どうせ・・・」
「(自分なんて)こんなもんですよ」行動の特徴
自分の中だけで考えて、行動が鈍る
自分以外、 周りに協力者がいないと思い込み、一人で抱えこむ
適応性の高く職務経験の少ない人材の活かし方編
今回は、職務経歴の少ない30代の女性のコーチングです。
本人は、一貫した対人業務に自信があるようですが、指示を受けて仕事をしてきたその経験をどう活かすことができるか、どんなことをすればよいのかに気づけるでしょうか。
「どうですか?職場の雰囲気には慣れましたか?」
新人:
「はい。おかげさまで。皆さん言い方ばかりなので、とても居心地がよいです」
「そうですか。それは良かった。これまでも対人業務だったので、コールセンターの仕事にも早く馴染めるのではないかと思って安心はしていました。しかし、転職は初めてで、これまでに仕事は2つしか経験がありませんから、応用できるものが少ないですからね」
新人:
「ありがとうございます。皆さんの応対を参考に、お客様とのやり取りの瞬間を楽しんでいます」
「それは心強い。しかし、やり取りの中には、気が滅入るようなものもあるだろうから、主任に相談して進めてくださいね。」
新人:
「ありがとうございます。でも、わたしは早急の対応など、プレッシャーがエネルギーになるタイプですから、安心してください」
「あなたは、自己分析もしっかりできているし、自分の才能をよく心得て上手く使える人なので、安心です。しかし、これまでのように顔が見える関係ではないので、そこは注意してほしい」
新人:
「あるがままに、お客様の声に耳を傾けたいと思います」
「そうですね。まずは、お客様の声をしっかり聴いてください。慣れてきたら、あなたにはそれ以上の成果を期待していますが、何か勉強したいことはありますか?」
新人:
「お客様は、心理的に満足を求めていらっしゃるだけですよね?」
新人:
「コールセンターは、お客様の質問に答え、お客様の不満や疑問を解決するのが仕事。だから、しっかり応対ができれば良いのではないでしょうか?」
「そうですね。それも大切ですが、それ以上に何が必要だと思いますか?」
新人:
「そのほかに・・・ですか?」
「そうです。そのほかにです」
新人:
「商品知識はもちろんです」
新人:
「はぁ・・」
「例えば、交渉力。お客様の満足を高めるということは、お客様の意見を全部受け入れる。聞き入れるということではありません。お客様の意見と私ども会社の意見を合わせて、どちらも満足できるような新しいアイデアの提案をしながら、話を進めなければなりません」
新人:
「交渉ですか・・・苦手かもしれません」
「お客様は、自分の言い分を通すことで満足を得ると思いこんでいらっしゃいます。でも、新しい意見や、他の考えに触れることで、気持ちが変わることだってあるんです。あなたが勉強することはたくさんあるように思いますが、どうですか?」
新人:
「そうですね。わたしが今、何を一番学べばよいか、教えていただけますか?」係長:
「そうですね。では、まず、電話口の人の表情を想像しやすくなるように、相手を理解するために聴くという傾聴を学びましょうか?その人の表情が想像できれば、その人の人格に触れることができれば、お客様に理解を得られやすくなるでしょうし、あなたも1本1本の電話の後で、達成感が大きくなることでしょう。そのために、何を準備したらよいか一緒に考えましょう」この新人のように、職務経歴が少ない場合、応用できる知識や経験が少ないので、不安に陥りがちです。
しかし、適応性という才能に恵まれた人は、ともすると、突然の要請や、予期せぬ変更を待ち望む柔軟性があるので、仕事の成果があげられていると錯覚を起こすことがあります。また、急な修正や対応など、プレッシャーがエネルギーとなってやる気が高まるという行動特性があるため、日々の勉強を怠る傾向がみられるのです。今、この瞬間を生きることがモットーなこのタイプには、「未来」があることや、その未来は自分次第でいかようにも変化させることができるということを予感させ、今の積み重ねがその未来につながることを前提に、継続的に学習し、教養を高めるように指導してから、準備計画などについて、コーチングを行うようにしましょう。
競争性と指示性の高い人材をどう生かすか編
今回は、経験者採用により、中途入社したばかりの社員が、競争性と指示性という才能に恵まれていた場合を考えてみましょう。
「竹内さん、昨年秋に採用した社員の件で、ご相談したいんですが」
CC:
「どんなご相談ですか?」
「彼女に与えてある業務の結果には、問題がないんですが、部内の先輩を先輩と思わないような言葉遣いや態度が気になるんです」
CC:
「そうですか。言葉遣いと態度が気になるんですね。具体的に伺いたいですね」
「例えば、先日、先輩社員が彼女に仕事の指示を与えたのですが、笑顔もなく、はぁ・・わかりましたと、どうでもよさそうな感じで答えていたのを見かけたので、注意したんです。」
CC:
「どんな注意を与えたのですか?」
「もっとはっきり返事をしたほうが、指示を与えた人間にも快く仕事を受けた感じを持ってもらえるし、責任ある仕事ができる人のように見える。うちは、部内のコミュニケーションを大事にする風土があるから、早く馴染んでほしい」
CC:
「彼女の反応は薄かったんではないですか?」
「そうなんですよ。何が悪いの?みたいな顔をしていました」
CC:
「そのほかに、何か気になることがありますか?」
「人の会話に首を挟むというか、先輩たちが話をしていると、知識をひけらかすというか。この間も、道の駅の農産物の話をしていたら、いきなり、TTP交渉が成立したら、日本もそんなに呑気なことを言ってられなくなるかもしれませんね、なんていうもんだから、場がシラけてしまって。単なる雑談なんだから、雑談レベルでいい話なんですが、一事が万事です。」
CC:
「業務は的確にできるけれども、人間的にどうか?ということですね」
「そうなんです。どうしたらいいのでしょうか?」
また、内面では、コンプレックスを抱えているかもしれず、だから、人には負けてはならないと、才能の使い方に歪みがあるかもしれません。この才能に恵まれている人は、空気を読むとか、他者への配慮、場を和ませる、間接的な表現が苦手なので、「感じ」「気配」などという伝え方では理解ができないのです。理解できないときも、競争性という才能が邪魔をして、素直に「それはどんな意味ですか?」と、聴き返すことができないので、無表情、無反応になってしまうのです。
このタイプの人材には、できる限り直接的な表現や指示、理論的な伝え方をして、自己納得を促すとともに、人と競うのではなく、自分との戦いを促してください。
締め切りは5日後だけれども、4日でやってもらえたら、次の仕事が頼めるので助かるというような具合です。
また、褒める、認めるという行為も、本人的には、褒められて当然、認められて当たり前という意識がありますから、おべんちゃらは通用しません。
何がどうだから褒める、認めるというように、理由や根拠をはっきり示してくださいね。
肩書で仕事をすることに疑問を持たない人編
ヒントになっていますか?
「新しいプロジェクトのメンバーから相談を受けたんだが」
課長:
「どんな相談でしょうか?PJは、とても活気があっていいチームです」
「そうか、そうならいいが、メンバーはそう思っているんだろうか」
課長:
「わたしが時間をかけて計画を立てた事業です。問題ありません。何を思って部長に相談したんでしょうか」
「いや、メンバーは君の仕事ぶりに疑問があるようだ」
課長:
「仕事ぶりですか?わたしは、課長でもあり、PJのリーダーですから、きちんと指示、命令を与え、成果についても評価しています。何か、問題があるのでしょうか?」
「どうなんだろう・・・」
課長:
「PJリーダーですよ。わたしは。わたしがやりたいと思うことをやるのに、どうしていちいち、メンバーの意見を聞いて、調整する必要があるのでしょうか?」
「まぁ、そういう考え方もある。しかし、みんなが満足しているのだろうか」
課長:
「満足ですか?わたしは会社に利益をもたらすことが望まれているのであって、メンバーの満足感は、達成したら自然に高まると思います」
「君自身は満足しているのかね?」
課長:
「いえ、こんな成果ではまだまだです。それはメンバーも同じでしょう」
「君に今すぐやってほしいことがある。メンバーを集めて、達成の基準や方法を話し合いなさい。これは要求です。受け入れますか?」
課長:
「・・・・」
かつての時代とは変わって、マンパワー、個人の成長力頼みでは、業績を上げ辛い社会です。仕事を通して自己成長に興味を示す若年層は、こういうタイプの上司の下では、長続きしません。
自分のやり方がすべて正しいと思いこんでいるような視野の狭い人に気づかせるには、断定的な表現が必要です。コーチングも、時には明確な要求を出してきっかけを与えることで変化を起こさせてみてはどうでしょうか?肩書で仕事をすることに疑問を持たない人の特徴:
自分のやり方が最善だと思いこんでいる
上に立つことで、積年の我慢を晴らそうとしている
共感力が低い肩書で仕事をすることに疑問を持たない人の行動特性:
自身にとって不都合な情報をカットする
信念があるわけではないので、指示がコロコロ変わり、部下を振り回す
ふわりとしてとらえどころのない人編
ヒントになっていますか?
「君は、何かやりたいことはあるのかね」
部下:「いやぁ、特にはないです」
「新しい仕事とかも」
部下:
「はぁ、会社の命令なら引き受けますが・・」
「人事異動だけじゃなくて、気持ちの問題なんだけどな」
部下:
「気持ちですか・・いや、仕事なら何でもやります!」
「では、今の仕事に何か思い入れはあるのかね」
部下:
「思い入れというか、成果が出せたらいいなと思ってはいます」
「で、その成果は出せていると思っているのかね」
部下:
「はい、それなりに。自分ではこれでいいと思っています」
「満足してるということかな」
部下:
「満足?満足ですか・・・」
「満足じゃなくても、充実感でも、会社の役に立っているということでも」
部下:
「いやぁ、それほどの大きなものはないです」
「・・・・・」
人を育てる時は、育てられる側の価値観を知っていることも一つの条件です。
この係長のように、心地悪くても、最後まで相手の言いたいことをじっくり聞く姿勢を大事にしてください。
また、相手の考えや意思を確認したいのであれば、質問の仕方に工夫が必要です。一問一答にならないようにするためには、「ど」のつく質問、「な」のつく質問を考えましょう。
忍耐ではなく、面白がる感覚でトライしてくださいね。ふわりとしてとらえどころのない人の特徴:
とことんまで自分を追い込んだことがない
自分をないがしろにしていることに気づけない鈍感さをもつ
一般的な常識に縛られるふわりとしてとらえどころのない人の行動特性:
右といえば右、左といえば左とすぐに行動を変えることができる
決断や判断する場面を避け、人の指示に素直に従う
おせっかいが過ぎる人編
ヒントになっていますか?「おせっかいが過ぎる人編」です。
「あの資料、例の資料、どうなったかな?」
部下1:
「あの資料って何ですか?」
部下2:
「ああ、次の営業会議の資料。来期の予算立てに・・・」
部下2:
「来期の予算立てに使うけれど、早めに課長と部長が相談される必要があるから、仕上げを急いでと言ってらっしゃいましたよね。だから、部下1さんは、昨日も遅くまで残って作成していらっしゃいました。もうすぐ、できるのではないでしょうか?」
部下1:
「・・・・」
「そうなのか?で、いつ頃仕上がりそうかな?」
部下1:
「はい、そうですね・・」
「明日の夕方仕上げないと、まずいんじゃない?課長と部長のためにも」
「はぁ・・ただ、お客様からご依頼いただいている見積もりも・・」
部下2:
「あ、じゃ、その見積もりは、わたしがしましょうか?」
係長:
「部下2さん、部下1さんの話をまずは聞こうじゃないか?君が心配してくれるのはありがたいが、そう先回りしたら、部下1君のためにならないと思う」
「はぁ・・・すみません」
部下1:
「僕こそすみません・・・・」
出すぎず、ひきすぎず。バランスが崩れていることは自分では気づきにくいもの、育てる上司がアサーティブにそれを指摘することができると「は!」とした気づきにつながります。おせっかいが過ぎる人の特徴:
観察力が高い
なんでも手を出すことを自分の役割だと勘違いしているおせっかいが過ぎる人の行動特性:
機動力がある
仕事の量をこなすことができる
やると言ってもやらない人編
ヒントになっていますか?「やると言ってもやらない人編」です。
「今年はどんな目標を立てたのかな?」
部下:
「はい、わたしも今年で40歳。崖っぷち状態から脱出しようと思います」
「崖っぷちにずっと立っているのかい?」
部下:
「はい、ここ数年、思うように成果が上がっていません」
「成果が上がっていないと感じているのなら、改善策を考えたらいいのじゃないのかね?」
部下:
「いえ、改善策は考えているんですが、毎年、結果に結びつかないので」
「それは、改善策とは言えないんじゃないのか?」
部下:
「はぁ、そうかもしれませんが、アイデアはいいと思うんです」
「アイデアはいい?じゃ、何が悪いんだ?」
部下:
「はぁ、続かないんです」
「続かないんじゃなくて、続けないんじゃないのかね?」
部下:
「・・・・」
「主体的に考える癖がないように思うんだが・・・」
部下:
「はぁ・・・・」
「君に一番足らないことは、自分を信じるということじゃないのかね?決めたことを決めたとおりに実行する。そこには、イレギュラーはない。自分を大事にすることだな。今年は、君の自信を高めることが優先されるなぁ」
部下:
「ありがとうございます。自分を裏切ることに慣れているせいか、係長の言葉は、イマいちピンときませんが、自信が大事なんだという気持ちは湧いてきました」
だからこそ、身近に、観察し、応援してくれる人が必要なのでしょう。
自分が育てられたように、誰かを育てることができる自己成長を、楽しめる1年になりますように。やると言ってもやらない人の特徴:
自分に自信がない
自分の価値を知らない
覚悟や決断することが苦手やると言ってやらない人の行動特性:
行動しない言い訳を常に考える
目の前に起きる刺激に即反応してしまう
経験不足が選択肢不足を招く
着想がニユークな人
企業は人なり。どれほど時代が変わったとしても、価値観が変わったとしても。普遍的なものの一つではないでしょうか?
人を育てるということは、意識と知恵、根気比べかもしれませんね。常に新しいアイデアを提供する「着想がニユークな人編」
「新商品の販売キャンペーン、君のアイデアに決まったよ。いつもユニークな企画を立ててくれるって、部長が喜んでいらっしゃったよ」
部下:
「ありがとうございます!」
「今回は、大幅に予算ももらえるし、人も出してもらえることになったよ」
部下:
「そうですか!!嬉しいです」
「ただ、ちょっと気になる評価もあったのが残念だったなぁ・・・」
部下:
「え??そうなんですか?なんだろう・・・前回のキャンペーンのお客様アンケートを反映させてあるし。ただ、前回の延長線上のキャンペーン
では、お客様が飽きると思って、角度を変えたのがまずかったのかなぁ」(落ち込む様子を見せる)
「いや、それほどひどい意見ではないんだ。ただ、顧客のロイヤルティーが上がるかどうか?それだけは、検討するようにという条件付きで許可をもらったから、ぜひ、それを検討してみてくれるかな?」
部下:
「顧客のロイヤルティーですか・・・それは、お客様の有益性をあげるという解釈でいいのでしょうか?」
「まぁ、それでもいいとは思うが、せっかく創造的な君のことだから、ぜひ、お客様のロイヤルティーのレベルが向上するような仕掛けにしたら
どうだろうか?」
部下:
「わかりました!簡単ではないですが、組み合わせを考えて、キャンペーンの内容を再度検討してみます。時間はどれくらいありますか?」
「2週間は猶予がもらえるから、大丈夫だ。顧客満足という本質について、さらに新しい考えに育ててもらえたら、君の成長にもなる」
部下:
「はい!やってみます」すでに誰でも知っていることについても、意外な角度から眺めることができるのは、着想の才能を持っている人の特徴です。新しい着想をすることができるまで、スリルを求めるような面を持っていますが、本来は、物事に一貫性を求めるなど、単なる冒険者とは違い、意欲的にその仕事に取組み、さらに、自分のアイデアを見直し、発展させることができる慎重さを持っています。一つの達成に満足させるのではなく、テーマや改善方向を定めて、さらに良いアイデアを求めると、企画を立てること自体が成長の糧になるタイプなので、どんどん成長を促すことができるでしょう。
ほんとうは・・・ すごいと思わない? 組み合わせ、融合、もし仮に~したら~じゃない?行動の特徴
創造(空想)することを好み、アイデアを組み合わせて発展させる
既成概念にとらわれず、本質を追求し、新しい考えに育てる
先が見えないと動けない人
企業は人なり。どれほど時代が変わったとしても、価値観が変わったとしても。普遍的なものの一つではないでしょうか?
人を育てるということは、意識と知恵、根気比べかもしれませんね。お手本が社内にいないので頑張れません!という「先が見えないと動けない人編」
「どうした?この頃。まったく成績が上がらないじゃないか・・・」
部下:
「成績が上がらないんじゃなくて、まったくないんです」
「おいおい、開き直ってる場合じゃないだろう?」
部下:
「開き直っているんじゃないです。ただ・・・わたしは将来誰をお手本として働けばいいんでしょうか?先が見えないと、やる気がでないんです」
「そうか・・君なりには考えているんだなぁ」
部下:
「はい。営業部の先輩や課長をお手本にするとなると、ちょっとキャラが違うんです。だから、お手本には正直、したくないんです」
「そうか・・・君にとってお手本は、そんなに大事な存在なのか?」
部下:
「そりゃぁ大事ですよ。だって、お手本を見習えば、成功に近づけるじゃないですか?」
「そうだな。たしかにそれは言える。でも、うちのチームは、みんなとても面白いキャラクターぞろいだから、みんな、お手本でもあり、みんなお手本ではない感じで面白いと思うよ」
部下:
「でも、それじゃぁ、わたしはどう成長したらいいか・・想像ができないじゃないですか?」
「なるほど。君にとってイメージできないことは行動すべきではないと思うんだろうか?」
部下:
「はぁ、無駄にしたくないんです。せっかくの時間、一生懸命働いて、成
長したころに上司から、君は求める人材ではないと言われたら・・時間
と努力を無駄にしたくないんですよ。もっと確実に進みたいんです」
「そうか、君は努力の中には無駄になるものがある思っているんだ」
部下:
「はい。できる限り、ストレートに進みたいんですよ」
「社内にお手本となる人がいないというが、本当にお手本になる人はいないんだろうか?自分の目指す姿が描き切れていないから、そう思うのであって、5年先のキャリアビジョンやキャリアターゲットをもう一度見直してみたらどうだろう?今のように、君自身が自分の成長に関して、責任を持たないというような姿勢では、わたしも課長も応援しようにもすべがないから残念だよ」
部下:
「はぁ・・・あまり気が乗りませんが・・・イメージできないですから」
「うちの会社じゃなくてもいい。自分が目指す方向性に近い人をまず探そう。それからもう一度話そう。そうすれば、会社が君の応援をどうしたらよいか?考えることができるよ」
部下:
「はい。だれか、探してみますが・・時間がかかりそうです」
「それは仕方がない。しかし、このまま、いつまでも成績が上がらないと、自分の居場所がなくなることを覚悟しておいたほうがいい。だから、できる限り早く、探すことが望まれると思うよ」
部下:
「はぁ・・・」
「それから、君を一人前の社会人として尊重するからこそ言いたいことがある。やる気というのは、自分で作らなければならない時がある。自分のご機嫌は、自分でとらなければならない。それができるようになるために必要なサポートをするから、遠慮なく声をかけてくれると嬉しい」
部下:
「はい、ご心配おかけします・・・」
自分の気持ちさえ、誰かに上げてもらおうとする依存性の高い人や、自分の気持ちが上がらないのは、周りの人に責任があると、責任転嫁する幼稚な人が職場に一人いるだけで、そのチームの生産性が下がってしまいます。人は、勝手に育つことも稀にはありますが、関わりあう人に育ててもらう必要があるのではないでしょうか?
なぜなら。自分の姿形などの外見や、価値観などの内面的なことも含めて、自分を知っているつもりになっているだけで、自分を見つめて等身大に受け入れることができないからです。「イメージ」や「印象」などの表現にこだわる部下を育成するときには、できる限り目で見えたように表現したり、イメージを描きやすくなるような表現を多用したりしてみてくださいね。
適応性の高い、チャレンジャー
職場の望む人材へと成長させることは、組織を強くする何よりも大事な戦術なだけに、学習を深めたいところですね。突然の養成や予期せぬ廻り道に強い「適応性の高い、チャレンジャー編」
「先月立ちあがった例のプロジェクトなんだけど、方向性が変わるらしい」
部下:
「え?そうなんですか?」
「私も先ほど、立ち話で、課長に言われたから、詳しいことは判らない」
部下:
「どうしましょうか?今週末までに仕上げる予定の資料。続けない方がいいんでしょうか?」
「そうだな。早く答えが出ないと、みんな混乱するよな?」
部下:
「はい。できる限り早く、状況判断する必要がありますよね」
「課長の顔は、結構渋かったからなぁ・・・次の役員会まではどうにもならないんじゃないかな?」
部下:
「そうなんですか・・。まぁ、不測の事態になればなったで、気持ちを切り替えて、やるだけですからね。とりあえず、現状のまま進めておいた方がいいんじゃないでしょうか?」
「そうだな。君にはこのまま続けてもらって、状況が大きく変わった時に、すぐに対処できるチームをメンバーを決めておくことにするよ」
部下:
「そうですね!正式に決まったら、すぐに自分も合流できるように心がけます!」
「頼むよ。課長に呼ばれたら、どんなふうにでも柔軟に適応することができるので、安心していただけるよう、話してみる」
部下:
「はい。よろしくお願いします!」
どんなに難しい仕事にも果敢に取り組む
楽天的で「なんとかなる」と前むきな信念を持っている
自由な発想をし、企画力が抜群である
締切などの直前に集中力を発揮して仕事を進めることができる
内省的な研究熱心プロの人
職場の望む人材へと成長させることは、組織を強くする何よりも大事な戦術なだけに、学習を深めたいところですね。緻密な仕事は評価が高い「内省的な研究熱心なプロフェッショナルな人編」
「○○さん、この間お願いした資料、どのくらいできてるの?」
部下:
「はい、現在のところ情報の精査を行っています」
「つまり、まだ、見せるほどの資料はないということですか?」
部下:
「はい、締切までにはたくさんの時間がありますが、そろそろ一度まとめようかと考えています」
「考える時間が長いのは、自分で理解してる?」
部下:
「はい。専門的な知識の裏付けが必要なので、慎重にやっています」
「あなたの作る資料、信憑性が高いのはとても助かります」
部下:
「ありがとうございます」
「ただ、進捗状況を見ていると、どうも遅れがちに見えてしまうから心配なの」
部下:
「すみません。いい加減なものを作ることはできないので・・・」
「いえ、いい加減なものを作るとは思っていません。途中での報告がないと、傍目から見ると、仕事を進めていない様に見えるのが残念なのです」
部下:
「はい。これからは注意して進めます」
「あなたの仕事には信頼していますから、スピードをあげるように工夫してください」
部下:
「はぁ・・・」
何がどこまで必要であるか、仕事を渡す前にきちんと確認してから取りかかることと、中間報告の重要性に気づかせることが必要でしょう。内省の高い人の表現:良く考える、どんな人か知りたい、存在価値、自問自答研究熱心なスペシャリストの行動特性:
一つの物事に対して、とことん追求することを厭わない
のめり込んだら泊らない
知らず知らずに無理をする
意志と決意が固く、プラスに作用するときはより高いレベルに活かし、マイナスに作用するときは被害妄想を抱き、復讐を考えたり、完全に関係を断ち切る
競争性を持つ
今回は、
あなたの意見は?と思わず尋ねたくなる人のためのセッションです。
「人に嫌われたくない八方美な人」です。
「今度の社会貢献活動のアイデアまとめましたか?」
部下:
「皆さん、いろいろな切り口を持っていらっしゃるので、まだ・・・」
「早くしないと、係長への報告、明日でしょ?大丈夫なの?」
部下:
「そうなんですが・・」
「どんな意見を集めたの?」
部下:
「はぁ、同期の多くは、道路の雑草が気になると・・2年先輩たちは、社員駐車場のごみが目立つとか・・・」
「どんなふうに意見を集めたの?」
部下:
「はぁ、お昼の休憩の時、社員休憩室とかで話しました」
「環境美化という切り口で括ればいいんじゃないの?」
部下:
「はぁ、でもそのほかにも、花壇の手入れが必要とか・・・」
「たくさんの意見を集めた努力は素晴らしいと思うし、わたしにはなかなかできないことだと思う。ただ、集めた目的は何かを見失っていない? 自分の意見は?」
部下:
「どれも必要で・・何からすれば良いのか、判断が付かなくて」
「それは、判断が付かないのかな?あなたはインタビューした先輩や同期に嫌われたくなくて、判断を伸ばしているのかもしれないね。それについてはどう思う?」
部下:
「はぁ・・・どうしたらいいか・・・わたしは、草刈りかと思うのですが・・」
親密な関係を築くことが上手いのは良いのですが、誰にも良い顔をしてしまうことが多いのは欠点です。また、本来は知的で意思決定能力が高いのですが、決定を先延ばしして自分の決断が周囲と違うことで、対立を引き起こすことに対して臆病になっていることがあるので、集めた情報を論理的に集約させて結論を出すよう、コミュニケーション支援をしてあげてください。人当たりよく社交性の高い人の表現:
仲間、人を信頼する、みんなで集まる行動特性:
調和と校正に価値観を持って、仕事や趣味に活かすことができる
天性のサービス精神があり社交性には自信がある
相手の本心を聴き出すのがうまい
積極的に周囲の人と強い絆を結ぼうとするが、時間を必要とする
社交性の高い人
今回は、
自己信頼の低い部下をコーチングして行動を促すためのセッションです。
「共感性と豊かな感受性を持ち合わせた面倒見の良い人」です。
「あしたの入社歓迎会、準備はできたか?」
部下:
「はい、概ねできましたが、ちょっと自信がないんです・・」
「どんなことが気になってるの?」
部下:
「はい、参加者の人数がイマイチ・・・」
「イマイチ少ないと思うわけだな」
部下:
「ちょっと、周りの人に聞いてみたんです。どう?って。そうしたら、こんな忙しい月末に近い日程はどうかって言われて・・・」
「それで自信をなくした?」
部下:
「はぁ、それと、余興のマジックショー、ウケるかな?と」
「君は、マジックをどう思うの?」
部下:
「はぁ、楽しい雰囲気が作れると思うんですが、自分だけの楽しみを中心に考えてよかったのかと思いまして・・」
「それについて、周りの反応は?」
部下:
「いいね!とは言ってくれるんですが・・自分への配慮なのかも。自分も皆さんを楽しませようと思って考えるんですが、マジックは、初めてのことなので反応が読めません」
「初めてのことに挑戦する時は、だれでも理屈抜きで怖いものだ。でも、君の人を楽しませようと思う気持ちや、みんなの気持ちを感じる力がちゃんと発揮できれば、その場、その場での盛り上げ方が分かって上手くいけるんじゃないか?」
部下:
「そうですよね!その場を和ませればいいんですよね!」
「そうだね。職場のイベント事は、君に任せると、いつも楽しませてもらえる。これまでの準備も怠りはないようだし。楽しみだよ。」
雰囲気、気持ち、感じ取る豊かな感受性を発揮する面倒見の良い人の行動特性:
勘を働かせて、本人が言わんとすることが何かを言い当てることができる
思ったことが素直に言うので、好感をもたれて受け入れられる
礼儀正しく秩序を重んじる
競争性を持つ 陽気で明るくオープンな人
今回は、
デザインコンペティションへの応募
「競争性を持つ 陽気で明るくオープンな人」です。
部下の持つ性格や才能にあった表現やアプローチを心がけるということは、相手の信頼を勝ち得、モチベーション向上に不可欠な要素を満たすことを実感してくださいね。
「○○市のゆるキャラのデザインコンペに応募する件は知っていますか?」
部下:
「はい、社内メールを読みました」
「広報と、経営企画室からPJのメンバーを出すことになったんです」
部下:
「はい!楽しそうですね!でも、やるからには、勝たなければなりません」
「そうですね。他社の参加もあると聞こえてきています。まだ、何社のコンペになるかはわかりませんが・・・」
部下:
「勝つためにはデザイン性が必要なのでしょうか?」
「それも含めて、情報を集める必要がありますね。だから、広報も加わるのでしょう」
部下:
「うちの広報の情報収集力はすごく高いですからね」
「情報を集めてもらって、相手を出し抜けないと勝てませんからね」
部下:
「そうですね!」
「わたしとしては、あなたを推薦しておきました。あなたの楽しく遊び心にあふれたセンスや、創造性をぜひ、発揮してください」
部下:
「ありがとうございます、頑張ります!」部長:「プレゼンテーションの成功も、期待していますね」
ナンバーワン、勝つ、勝者、陽気で明るくオープンな人の行動特性:
人を楽しませるためのクリエイティブな活動が活発
生命力や活力がみなぎり、行動の自己制約をしない
創造性が高く、遊び心があふれ出る
社交性高く、情報通なコミュニケーションの達人編
才能(資質)や性格を活かしたコーチングの事例。
今回は、
新規顧客とのつながりを始める
「社交性高く、情報通なコミュニケーションの達人編」です。
「この間、ようやく受注したAさんのお客様と会食をすることにしたんだ。
担当のAさんと同席してほしいんだが・・・」
部下:
「え?いいんですか?僕は、何にもしてないんですけど・・・」
「もちろん、あれはAさんの頑張りが成果に繋がった案件だ」
部下:
「粘っていましたね・・・」
「これから、お客様の信頼に応えられる関係を作るためには、ぜひ、君も同席して、つながりを強くするために、打ち解けられる席にしたいんだ」
部下:
「ハイ! ありがとうございます。」
「Aさんだけでなく、我が社として、先方との絆を深めたい」
部下:
「承知しました!まずは、お客様がどんな方か?知りあうために、くつろいでいただけるよう心がけます」
「そうだ。それには、君の初対面の人と、物怖じせず接する力が必要なんだ」
部下:
「ありがとうございます!」
「先方の担当者がどんな考え方をなさるかが分かれば、お互いのよさを活かして相乗効果を得ることができると思う」
部下:
「わかりました!Aさんのためにも、頑張ります!」
「よろしく頼むよ」社交性の高い人の表現:
話し上手で話し好き
タレント性がある
知的好奇心が旺盛で、収集した情報を論理的に分析し適切な選択をする
規律性ある忍耐強い人
職場での人材育成やクライアントのコーチングに役立たせていただくためには、相手をじっくり観察するようにしてくださいね。正しく仕事を進めるための仕組み作り。「原点思考高く忍耐強い真面目な人編」
「5S運動がマンネリ化しているというあの件、何とかしろと、上がうるさいんだよ」
部下:
「はい、係長、わたしもみんなの意識が薄れていて、事故に繋がりはしないか、心配です」
「とはいってもなぁ・・・朝礼で毎日声に出して確認しているんだが・・」
部下:
「係長。朝礼での確認は、みんな気持ちを込めていませんよ」
「そうかなぁ?あんなに大きな声で唱和するんだ。気持ちが入らないのは、おかしいんじゃないか?」
部下:
「係長。そもそも、この朝礼での唱和の目的をみんな、見失っているんじゃないでしょうか?」
「どういうことだ?」
部下:
「はい。大声で唱和することが目的になっていて、5Sを意識して仕事しようという気持ちに結びついていないと思うんです。一度、原点に戻って、5Sの再認識を促す何かをしたほうがいいと思うんです」
「なるほど。で、何をしたらいいと思う?」
部下:
「そうですね・・・5Sの導入は、他社の真似をしたかっただけではなく、小さなミスによって、大きな損失を出したあの失敗を繰り返さないため
でしたよね。今、社員もずいぶん入れ替わって、あの損失を知らない人も増えてきています。わたし自身も、説明できるかと言われたら、自信ないですもん。」
「そうか。意識が薄れてきているということか?」
部下:
「というよりは、目的を見失っているという感じです。来週の月曜日の朝礼で、そのあたり、説明したらどうでしょうか?」
「そうだな。形骸化したことをやり続けるのもな。意味がないことだな」
部下:
「はい。今週末までに、資料などを読み返して、説明できるようにしておきます」
「膨大な資料だぞ?大丈夫か?」
部下:
「まだ時間ありますから、やりくりしたら、間に合うと思います」
「そうか、では頼む。君は忍耐力があるから、安心して任せられるよ」
そして目的や目標の不明確さは、当事者意識を失わせることに繋がります。
古い職場の風習も、いつものままにしておこうと看過せず、人の入れ替えなどの機会に見直し、意識付けをし直す時、規律性の高い忍耐強く細かな作業を真面目にこなすことのできる人材を活用してみてくださいね。原点思考の高い人の表現:
積み重ね、成り立ち、そもそも、歴史、過去の失敗から学ぶ。忍耐強い性格の行動特性:
完璧に仕事を仕上げようと裏付けをする。
根気強く細心の注意を払った職務の遂行。
集中している時は、話しかけづらい雰囲気を持つ。
調整力あるノリの良い人
自分自身をどう生かすか? もっとも関心を寄せ、研究したいことですね。
また、あなたの周りの人をどう輝かせるか? コーチにとっては、これも関心の高いところですね。今回から、才能(資質)や性格を活かしたコーチングの事例をご紹介します。
職場での人材育成やクライアントのコーチングにお役に立てたら嬉しいです!職場に一人はいてほしい強い味方。「調整力が高く、ノリがいい性格の人編」
「このところ、職場の空気が重いんだよなぁ」
部下:
「係長、そうなんですよ!なんだかみんな元気がないですよね」
「やっぱりそう感じるか?」
部下:
「はい!この間の新人の○君の初受注直前までいった、あの失敗が大きいんじゃないでしょうか?」
「ああ、あれは残念だった。自分も迂闊だったよ。まさか失注とはなぁ」
部下:
「係長が浮かない顔したら、この係はみんな沈みますよ」
「君に慰められるとはなぁ・・・」
部下:
「係長、この空気を何とかしないと。今月の予算達成、厳しいですよ」
「そうだなぁ・・・どうしたらいいと思う?」
部下:
「飲み会、しばらくやってないじゃないですか?」
「でもなぁ、売り上げできないと、みんな戻りも遅いだろう?」
部下:
「たしかに。みんな遅いですよね。帰り辛いですもん」
「でも、空気は変えたいよな?何かアイデアないか?」
部下:
「そうですね・・・夜は、みんなそれぞれの予定もあるでしょうね。だけど、やっぱりある程度の時間を一緒に過ごすには、仕事を早めに切り上げた方がいいと思うんです。とにかく、今よりもっといい空気にしますから、今週末まで、時間もらってもいいですか?
みんなの時間を作ってもらうよう調整します。あ!係長。基本割り勘ですけど・・よろしくお願いします!」
「君はいつもスピーディで助かるよ。仕事の早い君にしかできないことだから、よろしく頼む」
その空気を入れ替えるだけで、人の動きが変わることがあります。
短い時間で、一瞬に何かを変える時には、調整力の高い、ノリの良い性格の人の才能・性格を活かして、特別な指示を与えてみてください。
新しい協調関係を作るために、躊躇なく自ら混乱に飛び込みます。
ただし、このタイプの人材は、あまり細かな指示を出すと、行動が起こせない傾向があるため、できる限り、ざっくりとした思いだけを伝えるにとどめ、細部は任せるようにすると強みを活かした行動ができます。調整力の高い人の表現:調整、幹事、状況、しくみ、選択肢、もっといい方法。ノリのいい性格の行動特性:とにかくスピーディに動く早い仕事が早いと褒められることでより大きな成果を上げる。
お父さんの家庭での立場~家族とお父さんのコミュニケーションを考える~
「うん・・どうもこのごろ子どもの気持ちが理解出来なくて」
「急に優しくなったり、急に感情的になっていたり」
「情緒不安定。そうそう、まさしくそんな感じだね。女の子っていうのは、どうしてああ、感情で物事を捉えるのか僕には理解出来ない」
「ええ、そうです。二年生になって、ますます理解出来ないですよ。黙って帰ってきて、邪魔!とかって言われるし。ここは僕が立てた家で、休日に横になっていて何が悪い?って言うと、『何向きになるの?ばっかじゃない?』って言うから、「親に向かって馬鹿とは何事だ!」っと怒鳴ろうもんなら、食事もせずに部屋に上がってしまう。女房からは、『食事前くらいそっとしておいたら?』と言われる始末で・・」
「難しいなぁ・・色ですねぇ?」
「うん・・・黒かなぁ・・グレーかなぁ・・・」
「そうですね。赤じゃなくてもいいけど、青とか、緑とか、はっきり目で見てわかる色ならありがたい」
「ええ、殺気立っていることはわかるが、原因がわからないのは困る」
「?・・・・」
「格好が悪いの?」
「うん・・・複雑そうですね。心の中」
「最初にね、機嫌のいい日もあるとのことでしたが、機嫌がいい日は、普通に会話出来るんですか?」
「会話じゃないですね。会話と言うのは、一つの言葉から、お互いの意思や感情を共有するために、膨らみますからね」
「お嬢さんと、どんなことを話してみたいのかしら?」
「何をお尋ねになりたいの?」
「学校のことや部活のこと以外には?」「・・・」
「思いつきませんか?」「思いつかないことに気づきました・・・」
「そうですね。何かを話したいというよりは、聞き出したいだけなんじゃないかなと感じました。でも、それで娘さんは話したいと思うでしょうか?たとえば、『お父さん、このごろ会社どう?』って聞かれて、お家で家族に話したいことってありますか?」「そうだよなぁ・・言ったってしょうがないと思うし。愚痴になってもいけないと思うし」
「お嬢さんの情緒が不安定なことについて、奥様は心配されてるんですか?」「いや、女房と娘はいろんな話をしてる。機嫌のいいときは」
「機嫌がいいときだけの会話かもしれませんが、それで奥様は何を感じていると思われます?」「女房に聞いたことはないなぁ・・・」
「大谷さん、娘さんとの関係だけじゃなく、奥様とももう少し情報交換したほうがいいんじゃないかしら?」「そうだなぁ・・。何か、わかったような気がする。僕は、自分の家に自分の心の居場所がないんだ。でもそれは、自分が家族とコミュニケーションをとらないからだ。でも、どうしらいいだろう」
「そうですね。今のお気持ちを、率直に家族に話されたらいかがでしょうか?」「抵抗あるなぁ・・」
「勇気を出すためには、何が必要ですか?」「うん・・・でも、せっかく家にいる時間が持てるようになったわけだしなぁ」
「私にお手伝い出来ることがあれば、させていただきますが・・」「そうだ!お茶、飲みに来ませんか?」
「お茶をご馳走になれるのですね?」「ええ、そうすれば、コーチを交えて会話が出来る」
「きっかけを作るということであれば、いい方法ですね」「じゃ、早速家にいらっしゃいませんか?」
「ちょっと待ってくださいね。私は同じ主婦として意見があります。聞いていただけますか?」「はい」
「主婦としては、急なお客様ほど対応に困ることがありません。たとえば、整理整頓が出来てないとか、お茶菓子がないとか」「そういうもんですかねぇ・・我が家はいつも女房がきれいにしてますけど」
「でも、お客様を迎えるのは別ですよ。提案があるんですが・・・」「どうぞ」
「カフェスタイルの喫茶店に奥様をお連れになったらいかがでしょうか?」人にはいろいろな役割があります。
お父さんとして、夫として、息子として。
家族の中でも、二つも三つも役割をこなします。
それぞれにふさわしい役割の果たし方を考えてみてはいかがでしょうか?
日常会話2例、コーチがしゃべると・・・~何気ない会話をコーチング的に変化させる事例紹介~
エスカレーターのベルトを、屈んで触って遊んでいます。
弟:「うん、お兄ちゃん、でも、お母さんに怒られないかな?」
弟:「そうかなぁ・・・ぐるぐる回るね」
販売員:「ここで遊ぶと、危険だから、お母さんのところに行こうか?お母さんはどこにいるかな?」
販売員:「お子さんがエスカレーターのベルトで遊んでいらっしゃったのでお連れしました」
母:「お手数をおかけしました。ごめんなさい。私が目を離したものですから」
母:「はい、気をつけます」
兄:「退屈だし・・・」
弟:「でも、パフェ食べたいし・・」
母:「よかったわ、エスカレーターで怪我しなくて。よくね、巻き込まれて怪我をするっていうニュースがあるのね。目を離したお母さんも悪いけど、これからはエスカレーターで遊ばないようにしないでもらえるかな?怪我をしたら悲しいから」
兄:「うん、ごめんね」
母:「いいよ」
2.どっちも頑固では家庭の中は暗くなります
妻:「ねぇ、この間話したあなたの転勤の件だけど、子どもたちのことを考えると、どうしてもみんなで一緒に動くことは無理だと思うのよ。あなた、単身赴任して欲しいんだけど・・・」
夫:「子どもにかまけて、お前が仕事を辞めたくないだけだろ?俺の会社は、単身赴任した人はいない。前例がない!いい加減にしろよ」
妻:「そうじゃなくて・・じゃ、転勤先に同じレベルの高校があるの?あんなに一生懸命頑張って入ったのよ?それとも何?、子どもたちだけおいていくっていうの?冗談じゃないわ」
夫:「論理の飛躍だね。そんなことは一言も言ってない。でも、とにかく前例がないんだからしようがないだろう」
妻:「じゃ、あなたが会社辞めれば?前例、前例って、未来に前例はないの!あなたが前例になればいいじゃない?それに、世の中とあわなければ、あなたが改善すればいいでしょう?」
夫:「うるさい!もう言うな」
(無言で食事を始める二人)
妻:「あなたと一緒になってから、ずっとあなたの転勤について、いろいろなところで生活出来たけど、今度ばかりは、ちょっと困ったと思うの。あなたはどう思う?」
夫:「そうだなぁ・・子どもも大きくなってきたからなぁ」
妻:「一番困るのは、高校の転校なんだけど、あなたはどう思う?」
夫:「そうだなぁ・・・あんなに受験、頑張ってきたのにな」
妻:「どうする?」
夫:「どうするといわれてもなぁ・・・転勤はもう決まったことだし」
妻:「ごめんね、二つに一つどちらかみたいに考えさせて。ねぇ、私の希望を言ってもいい?」
夫:「なに?」
妻:「あのね、半分、単身赴任ってどうかしら?」
夫:「どういうこと?」
妻:「平日はあなた一人で転勤先で生活して、週末や学校が休みのときは私と子どもたちがあなたのほうへ移動する」
夫:「3人で移動したら、交通費が大変だろう。それにクラブ活動とか、バイトとかあるだろう?現実的じゃないな?」
妻:「そうね。でも、これまでに単身赴任した人はいないんでしょう?あなたの会社での立場が悪くなっても困るわ。子どもたちの学費はかかるもの」
夫:「そうだなぁ・・・今すぐ答えは出せないと思う。もう少し、時間はあるから考えよう。会社にもそれとなく聞いてみるから」
妻:「そうね。よろしくお願いしますね。ご飯にしましょう。冷めちゃうわ」
(ふたり、和やかに食事のテーブルに向かう)
ファミリー・コーチング3例~親子のコーチングショートセッション~
高校1年生の息子を駅まで迎えに行った車の中で・・
息子:「違う、大きな声出しすぎた」
息子:「違う!僕は、3塁のコーチなの!僕がいないと、チームは点が取れない重要な役割なの。夏大(夏の甲子園地方予選大会)でゼッケンもらえる可能性が、一番高い役割なの!」
息子:「減ったって言ったって四十人いるから、二十人に選ばれるのはたいへんなことだよ」
母:「声、ひどくかれてるね。何かあったの?」
息子:「うん、ちょっと大きな声出しすぎた」
息子:「うん、今日から僕は3塁のコーチになれた。塁を進めるとき、大きな声で指示を出すからね。僕がいなきゃ、チームの点は入らないんだよ」母:「重要な役割を任されたんだね。嬉しいネェ・・・。頑張った成果が出てきたね?」
母:「そう、応援してるよ」頭では理解しているのですが、やはり自分が疲れていたり、自分にとって不都合なことがあると、会話を楽しんだり、盛り上げたりする気持ちになれず、ついつい、会話をカットしようと働きかけてしまう。
中学2年生の息子が、玄関をピカピカにしてくれました
息子:「うん、靴は全部下駄箱へいれてね。また、汚くなると、運が逃げるから」
息子:「うん、そうだけど・・・お母さんの靴も下駄箱へ入れるよ」
息子:(黙って、靴を下駄箱から出し、隅のほうに置きました)
息子:「うん、靴は全部下駄箱へいれてね。また、汚くなると、運が逃げるから」
息子:「うん、友達が来たとき、恥ずかしいから・・・」母:「そうだね。どうせすぐ、汚れるからといって、手抜きしてたからね。きれいにしてくれて、どんな気持ち?」
息子:「気持ちいいよね。ほうきで掃いて、それから水を流して。でも、そんな時間かかってないんだよ。十五分もかからず出来たし。」母:「いつ掃除してくれたの?」
息子:「朝早く起きた日。お兄ちゃんが出かけるときバタバタして目が覚めちゃったときに、そうだ!掃除しようと思って」母:「そう、ありがとうね。お兄ちゃんの朝早いお出かけ、もう少し静かにしてもらえるといいね。お母さんからお兄ちゃんに話してみるね」
息子:「うん、このごろ、僕まで寝不足になっちゃうからね」親子でゆっくり会話をする時間が楽しめると、心の中を共有することが出来るようになります。
頭では理解しているのですが、心や体が「時間」に追われて、ついつい一番大事なことに費やす時間を惜しんでしまうようです。
二人の息子ですが、ゆっくり会話する気持ちを持てば、彼らもそれに応えて話をしてくれます。
ワークライフバランス。難しいことですが、大切なことだと気づかされました。ファミリー・コーチング③(スーパーのお菓子売り場での親子の会話)【生の会話】
母:「早くしないさ。どれか一つだけよ」
子:「うん・・・これとこれ、一つ買うのと同じ金額だから・・・」母:「ダメって言ったでしょ?一つ。一つにならないなら、もうやめなさい。もう、置いていくからね、おうちに帰れなくなっても知らないからね」
子:「・・・・じゃぁ、これ・・・」(べそをかきながら、二つ手にしたお菓子のうちから一つを選び、とぼとぼとお母さんの後を追ってレジへ向かいます)【コーチングすると】母:「今日のおやつはどれにする?」
子:「これとこれ」(両手に一つずつお菓子を持つ)母:「そう、二つとも好きなお菓子だね」
子:「うん・・いい?(顔色伺う)」母:「二つ買ってあげたいと思う。でもね、今から二つ食べるとご飯が食べられなくなると思うのよね。今日は一つにして、明日また一つ買おうか?」
子:「うん・・・・でも・・・」母:「それとも明日は買わないで明日の分も買っておく?」
子:「それでもいいの?」母:「もちろん、それでもいいよ。ただ、明日は別のものが欲しくなるとお母さんはちょっと辛いかな?ほんとうに食べたいものをおやつにしてあげたいから」
子:「うん・・・」(迷い始める)母:「さぁ、あと少しで帰らないと、おやつ買っても食べられなくなっちゃうといけないから、二十数える間にどうするかを考えようか?」
子:「決めた!今日はこれにするね」
(一つを選び、一つを売り場に戻し母親といっしょにレジに向かう)
子育てで悩むお母さん~積極的なコーチからの働きかけによるセッションのあり方~
ところが、そのビジョンがはっきりしていることで、彼の生活はクラブ活動中心の毎日になり、家に帰ればぐったり疲れて眠ってしまうと言う有様。勉強で評価されることに価値を見出していないため、宿題を提出するのは気の向いただけという状態で、保護者会に出席するお母さんの福山さんは針のむしろの上にいるような気持ちでいっぱいになるそうです。そこで福山さんは、コーチングを学んで、何とか子どもとのコミュニケーションにおいて、子ども自身に自分で気づかせようとしますが、なかなか現実はうまくいきません。
コーチング学習中の模擬演技では、感情を抑えて相手とかかわれるのに、現実に向き合うとうまくいかず、この日も落ち込んだ姿を見せまいと、必死に模擬演技をする福山さんを見て、コーチは学習後、セッションを促しました。
「どうして分かるんですか?」
「うちでは話し始めて五分でアウトって感じなんです。今何とかしないと・アヒルさん(2)の行列どころじゃない、煙突(1)がいっぱい立っているんですよ?」
「そりゃあ心配ですよ。このままではどうなってしまうのか・・・・」
「勉強は普通でいいんです。どんな人生がいいかをしっかり決めている子なので、高い学歴は必要ないと思います。手先が器用であれば、今のうちの仕事は継げますから。でも、うちの仕事をつぐことと勉強しないことはつながってはいきません。学生は、勉強するのが仕事だし、学校の評価基準で評価されなければ意味がないのです。よく気がつく良い子だといわれても、それを評価する項目が、通知表にはありません。内申点に反映されません」
「一般教養や知識をつけるためです。だからと言って、それが即、現実社会で役立つことは少ないと思います。特に我が家の家業に必要な知識は、『センチ』の世界ではなく『尺・寸』の世界ですから。でも、それとこれとはやはり違う気がします」
「・・・そうですね。今は中学生としての視点を持つことです」
「評価されるという現実と、評価によって進学先が決まると言うことです」
「良い点はそのまま伸ばしたいので、いろいろな役割を言われなくてもこなせることはとてもいいことだと思うけれども、それを評価する項目がないことを、通知表を見せながら説明してやりたいと思います。」
「学校と言う社会では、勉強が出来るかどうかで評価が決まると言う現実です」
「今度の終業式の日、成績表をもらって帰ってきたときです」「どこで話しますか?」
「いきなり、何、この成績は・・とはさすがに言えません」
「・・・・」
「はい」
「お子さんの性格が良い、よく気がつく子だと担任が評価していたことから話し始めたらどうでしょうか?」
「でも・・・褒めた後に叱ったら、余計にこたえるんじゃないでしょうか?性格の優しい子ですから」
「初めて、息子さんを褒めましたね?」
「え?」
「今、初めてお子さんを『性格が優しい子ですから』とおっしゃいました。私も嬉しいです。お子さんの良い点をちゃんと認めておられるのに、今日はぜんぜん、その話が出てこなかった。残念だと思っていました」
「・・・・」
「子どもの可能性って、無限大にあると思いませんか?」
「はい」
「それを引き出してやるのは、親や教師をはじめ、子どもとかかわる大勢の人の役割だと思うんです。ただ、我が子となるとどうしても厳しい評価をしがちになる。子育てに責任を持てるのは親だけですからね。真剣勝負だし、全身全霊をこめてのかかわりになるから、ついつい厳しくなりますよね?でも、自分の子どもと言えども、人格をもった一人の人間です。冷静に距離をとって、良い点と悪い点というように、両方を提示してあげると、本人が気づくことも多くなるのではないでしょうか?」
「・・・」
「お子さんに伝えたいことをもう一度、整理して考えましょう。叱る叱らないじゃなくて、『伝えたいことは何か?』というようにポイントを絞って考えると、福山さんの気持ちも整理出来ると思います。いかがですか?やってみられますか?」
「はい。やってみようと思います」
親業をしていると、記念日はプレゼントをする日で、もらう日ではないと考えて過ごしているのではないでしょうか?
子育てに、親のやる気や欲は必要です。と、同時に、感謝が必要ではないでしょうか?
元気であること。学校を嫌わずに通う根気を持っていること。学校で友達と協調して集団生活出来ていること。褒めるべき点、認めるべき点、感謝すべき点はあらゆる角度から眺めてみればどこにでもあるはずです。子どもから毎日たくさんのものをいただいていることに、感謝出来る日があるといいなと思います。
若いお母さんの思いが娘さんに通じていません~自分の人生の不幸はすべて家族が引き起こすと考える母親の視点を変えさせる~
「(きりっとした姿勢のまま)はい、子どものダンスのオーディションに落ちたことで、今シーズンの終わりを感じました」
「はい、審査員の方の見る目がないんでしょうねぇ・・。明らかな『えこひいき』を感じましたが、結果は覆りませんでした」
「はい、一緒に受けた仲の良いお友達のお母さんもおっしゃったんです。絶対にうちの愛ちゃんのほうが上手かったって。だから、審査員に評価基準を公開してくださいとお願いしたんですけど、それは出来ないって・・・」
「愛とはダンスのオーディションが終わった後、喧嘩して以来、口をきいていません。結果が出た以上、愛も反省してもらわないと・・。あんなに『社会は厳しい、もっともっと寝る間も惜しんでレッスンしないとダメだって』言ったのに、『ママの言うとおりにしたんだから、文句言わないでよ。ママの夢と私の夢は一緒じゃないの!いい加減にして・・』と言ってむくれているんです。私だって、お盆も里に帰ることもせず、愛のレッスンの送り迎えや、先生の言うように栄養管理したり、体重管理したりして頑張ったのに・・・」
「私の夢ですか?一人娘ですから、愛が幸せになることです」
「まず、経済的に自立して、男性に頼らなくても生活出来るほどになっていること」
「いえ、男性社会の中で生き抜くためには、男より秀でた何かを身につけていなければいけません。それさえあれば、何とかなると思うんです」
「愛はまだ一〇歳です。夢なんてちっちゃなものに過ぎないでしょう。だから、親の私が道を決めてあげるのが役目でしょう?」
「私は自分で決めました。それで、今、後悔しているんです」
「父親の薄情さに呆れているんじゃないですか?そうじゃなきゃ、父親そのものを嫌いになったんじゃないですかね?」
「養う人が一人多いってくらいでしょ?男親なんてあてにならないんです。母親だからこそ、愛情があるからこそ、出来ることですわ」
「押し付け?コーチは、愛は嫌がっていると思ってらっしゃるの?それは違います!愛だって、二位の結果に満足出来ないと言っています。優勝して、留学するチャンスを逃したことをすごく後悔しています。ただ、愛は『まぁ、しょうがないじゃん、私の実力だから・・』と言って平気でいるんです。それが許せなくって・・・」
「諏訪さんはご自分の人生に点数をつけるとすると何点つける?」
「マイナス三十点って気分です。職場の上司にも認められず、夫にも恵まれず。愛は結果が出せないし。ホントに不幸ですよ・・」
「ご主人とは恋愛結婚でしたでしょう?」
「いつまでも愛情なんてあるはずがないでしょ?あんな薄情な男のことはいいんです。私を不幸せにしたんだから、せいぜい愛のレッスン代や、生活費のために働けばいいんだわ」
「ご主人は、お嬢さんのレッスン代や、生活費のために働けばいいんですか。もし、働きすぎて身体を壊されたらどうしますか。そうなったらそれでご主人はお払い箱ですか?」
「そんなことはしません。主人が病気になったら私が看病するし生活費だって私が何とかします。でも、今の主人の態度は許せません」
「うん・・残念ですが、諏訪さん、今日は時間が来てしまいました。今日のセッションを振り返って、何か感じることはありましたか?」
「はい、改めて夫の薄情さと、愛の反抗的な態度が、私を苛立たせているということです」
「次回までの宿題としてご主人と愛ちゃんの感情を推し量ってみていただけますか? 諏訪さんのどんな言葉に、愛ちゃんが反抗するのかとか、ご主人から厳しい言葉を聞くのかということを観察してきてください。メモを作っていただければ尚いいですね。」
「分かりました。やってきます!」
人の心は自分でコントロールしなければなりません。また、愛ちゃんのためにも諏訪さんのためにも、ご主人のためにも。自分の人生はみんな自分のものであることに気づいて、自ら考えを変えない限り、行動も結果も変わりません。
産休中の母親の悩み~中断しがちな女性のキャリアを考えるセッション~
「すっごく楽しかった。海外からの商品を輸入する証明書を書き、税関にお使いに行くときに、海が見えるんですが、この海の向こうに、自分が買い付けた商品があるんだと思うと、とても嬉しくなって・・早く、日本の皆さんにご紹介出来たらいいなと思っていました」
「はい、でも、散々迷ってのことです。育児休暇1年で、職場に復帰するつもりですが、これから1年、どうしたらいいのか、子育てだけに向き合っていたら、なんか、取り残されるようで・・」
「うん・・どうしたらいいかがわからない不安でしょうか?」
「そうですね・・復帰後、自分の会社での居場所を作れるかどうか、作るなら、どんな仕事をするのがいいかどうか・・1年のブランクなんで、大丈夫とは思うんですが、貿易事務が出来るくらいでは、今、変わりに来てもらっている人材派遣会社の人のほうが仕事が出来たりすれば、会社は私を必要としなくなるでしょうか?」
「それはそうだと思います・・。貿易事務といっても誰にでも出来る仕事ではありませんから・・」
「子どもは可愛いけど、ちっとも自分の思うとおりにも育児書のとおりにもならなくて・・私、こんなふうにいい加減で、親としてやっていけるかどうか分からなくて・・・」
「え?」
「子育てに、もっとご主人を巻き込んじゃったら?」
「でも、仕事して帰ってきたら疲れてるだろうし・・」
「南山さんが一人前に働いていたからこそ、ご主人のしんどさも理解していらっしゃるんでしょうが、楽しみだってあるんじゃないですか?」
「子育ての楽しみ?」
「ええ、笑ったとか、泣いたとかもそうだし、日に日に変わる顔をみてるだけでも、幸せって感じる人もいるようですよ。今しかないこのときだから、もっと赤ちゃんに触らせてあげたら?」
「でも、夫に出来るかしら。落としたりしたら大変だし・・」
「もちろん、モノじゃないので、落としたら大変でしょう。なら、畳に座って抱っこしててもらうとか、ローソファーがあれば、それでとか」
「ぶきっちょ何ですよ。彼」
「大丈夫、自分のお子さんですよ。なんでも一人で抱えていないで、少し、荷物を降ろしてみたらどうでしょうか?これからも一緒に考えてみたいのですが、いかがですか?」
「はい、子供連れでもいいとおっしゃってくださるなら、ぜひ、お願いします」
「もちろんですよ、赤ちゃんが泣いたら中断すればいい。疲れれば、また、眠りますから・・」
子どものせいで、自分の人生が思うとおりに運ばない、自分にとって不都合だと思うお母さんが増えたように思います。大人だけの生活から一変する生活の中で、女性は自分のキャリアを描き続けることが難しくもあります。
子育ても一つのキャリアだということを忘れている人もいます。まずはお母さんが輝くキャリアビジョンを持っていることが、子どものためになることを、一緒に見つけられたらいいなと思います。
親子コーチングの失敗事例~完全主義の母、子どもとのコミュニケーションを考える~
今日も、寝起きが悪く不機嫌そうな長男と向き合うと、つい余計ごとを口走りそうになるため、弁当を作った後は、さっさと自室へ戻りました。そんな母親を追って、長男が部屋に入るなり、「お茶、作っといて・・」との一言です。〝カチン〟と頭の中の音が聞こえるほど、腹立たしく感じたお母さんは、長男相手にコーチングしてみようと思ったそうです。
「はぁ?朝から何の話?」
「だから何?」
「はぁ?ってことは、やりたくないってこと? だったらそういえばいいじゃん!ぐちゃぐちゃ遠まわしに言わんでよ、うっとおしいなぁ・・朝から・・・」
お母さんは、冷静になろうと努めるのですが、あまりにもふてぶてしい態度に、つい、感情が高ぶってしまい、「ちょっと待った、あなた、誰に口聞いてるの?誰が学費払ってるわけ?高校生でも、アルバイトしながら学校通う子だっていると思うのに、あんまり当たり前だと思わないでよね?誰にとっても時間は価値を生むもので、眠って体力を維持しなければならないことであっても、それは次に働くエネルギーを作る時間だと思えば、価値があるじゃない? 自分のやりたいことなら、自分のことは自分でするのが当然でしょ?」
と、大きな声を上げてしまったそうです。
お母さんは約束はなかったのですが、緊急にコーチに電話をかけて、セッションを希望しました。
「うん・・辛いネェ・・・今、何を感じてる?」
「親子間ではコーチングは出来ない。それは残念なのかしら?」
「うん、そうですね。あと、体調。私が体調さえよければ、何も引っかかることはなかったと思います。弁当って、ホント毎日でしょ?大変なんです。朝1番電車に乗るって言われたら、四時半にはおきなくちゃ。そんな日に1日自分の仕事があると、体力持つかな?って考えちゃいますよ。そうすると、ちょっとの時間見つけて、横になりたいと思うんですよね。だって、仕事に穴を開けたら、お客様に迷惑がかかるでしょ?」
「うん・・・厳しい言い方だけど、受け入れなければならないかなぁ・・・甘えですかね?」
「そうですね。長男に分かりなさい、ママはこんなにあなたのためにやってるでしょ?もっと感謝しなさい!って言いたい気持ちがあります。小さいころは、親の顔色見て動く子だったのに、どこで間違ったのかしらねぇ・・・」
「いいえ、それはあまり望みませんが、自立して欲しいですね。自分の飲むお茶は自分で作る。弁当箱は洗っておくとか・・・」
「いいえ、ありません。そんなゆっくりした話は出来ませんから・・」
「帰ってくると、疲れている様子は伺えますから、けんかすることもないかな?と」
「ああ、そうですね。そういえば、いつもけんか腰ですね。このごろ」
「ええ、そうですね。疲れています。暑いのが苦手なせいもあるかな?」
「うん、そうかもしれません。暑い=大量消耗って感じ捉えていますから」
「うん・・・、難しいですね。お互い知らん顔ですかね?」
「あはは、子どもに絡まれる。面白い捉え方ですね・・」
「うん、やっぱり疲れていると思います。すべてネガティブですね考え方が・・・」「いや、そういう時もあると受け入れられたらいかがですか?すべてがうまくいくことはありません。そう考えたら、少し肩の力が抜けると思いますが、いかがでしょうか?」「そうですね。疲れのせいにしてもいけないけれども、疲れていることも事実ですからね」
「ちょっと、アドバイスしてもいいですか」「はい、どんなことでしょうか。参考にしますのでアドバイスをお願いします」
「お母さんは、毎日の家事と仕事で疲れている。子供さんも毎日のクラブ活動で疲れている。お互いが疲れているとき、また朝の忙しいときには話は出来ないと思います。すこし落ち着いて話が出来るタイミングのときに、お子さんに向けてのコーチングをされることをお勧めしします」
「そうですね。少し考えてみます。今日は、突然で申し訳ありませんでした。ありがとうございました」
受験発表を終えた長男とのコーチング~受験失敗を前向きにさせた母親のコーチング効果~
「我が家の桜は三年後まで咲く気配なしになりました」と、返してきた武田さんの言葉に、胸が縮む思いをし、一瞬目頭が熱くなりました。
武田さんは、受験発表を終えた長男とのコーチングの様子を山川コーチとのテーマに選びました。
「ご長男、受験でしたねぇ。結果発表はいかがでしたか?」
その気持ちが伝わったのか「ありがとうございました。この四ヶ月の中でのセッションは、受験する長男との付き合い方をテーマにしていただきましたから、コーチと一緒に戦ったような感じですね。
よもやという油断があったんでしょうね。もともと、ボーダーラインぎりぎりへの挑戦であったわけですから、どこかでプレッシャーをかけたほうが良かったのかもしれません。母親として、どうこの受験生と向き合うか、受験期の手綱を引くべきだったのか?後悔するんですねぇ。仕事先の皆さんも同じように受験をさせた父親が大勢いらっしゃったので、皆さんに気を遣わせてしまいました。仕事に私情を挟んだのは、初めてでした。最初で最後の経験かもしれません」さすがに、半日という時間に気持ちが整理出来ていたのか、武田さんは落ち着いて話します。
山川コーチは、そんな武田さんのそっと吐き出される言葉をじっくり受け止めます。
さすがに、電話の向こうの声は涙声でしたが、つらいだろうし悔しいはずなのに気丈に振舞っている様子に胸を打たれるなど、何度も私の気持ちもくじけそうになるんですよね。でも、その都度、大きく深呼吸して気持ちを落ち着かせ、仕事を続けました。昼の休憩は、食欲の塊のような私もさすがに食べたいという気持ちが湧かず、その代わり、担任の先生の電話や、塾からのお詫びの電話などを受け、先生方と話すことによって、次第に気持ちを落ち着けることが出来、恐らく、他の家庭のお母さんとは違う、冷静な対応が出来たと思います。長男と向き合いなおすにも時間はさほど長くかからず、1学期の学校管理ミスによる不幸な事故によって負った骨折と手術のこと、三年生最後のクラブ活動を断念し最高の応援者として、松葉杖をついてグランドに病院から駆けつけたこと。夏休み以降の学習中心の生活のこと、秋以降の家庭教師と塾による家庭学習の強化など、様々な過程をふりかえりながら、ここまでの努力がいつ実を結び大輪の花を咲かせるかとても楽しみだという、将来に向けて引き続き支援するよという親の気持ちを素直に伝え、長男の気持ちを前向きにするセッションにさほど時間をかけることもなく、お互いの協力を感謝しあう、評価感謝の時間を持つことが出来たことに、別の意味で、長男の成長を感じ、熱くこみ上げるものを堪えることが出来ませんでしたねぇ。
悔しいのは当たり前なんだけど、今回のことを通してまた一つ成長した長男を感じることが出来、これも長男に与えられた大きな試練、これを乗り越えていってこそ私の長男だと思っています。すこし強がりかもしれませんが、そう思うようにしています」
山川コーチは、ゆっくり時間をかけて読み、「中学生とは思えない文章ですね」と、武田さんに笑顔で話しかけます。
エデュケーショナル・コーチング~子育てコーチングセミナーに参加して~~子どもとのコミュニケーションを見直す~
そんなお母さんの気持ちを察してか、本間コーチが「よろしければ、私とペアになっていただけますか?」と、声を掛けてきました。
お母さんは、とっさに、「コーチとペアになったら、みんなの前でしなければならないのでは?」という思いを抱き、「申し訳ないんですけれど、私、途中で帰らなければならないので・・・」と、やんわりと断りました。
自分の優柔不断さで皆さんをお待たせしてしまったことが情けなくなり、お母さんは小さくなっていました。「私はいつもそうだ。自分の不得意なことから逃げようとするし、進んで参加しようと思って申し込んだのに、こういう結果になってしまう」お母さんは、すっかり暗い顔になって自己嫌悪におちいってしまいました。
躊躇しているのがわかったのか、本間コーチは、「話していいかどうか?ためらっておられるのですね?」と、質問をしてきました。お母さんは、仕方なくうなずきました。
「うん・・・、私の悩みが恥ずかしいことだから言えません」お母さんは、本間コーチの質問の答えにはならないことを感じながら、あえて、自分の言いたいことだけを返事しました。
「あの、私の答えは、本間さんの質問の答えではなかったように思いますが・・」と、お母さんは率直に伝えました。
子育てコーチング、リワークコーチング 専業主婦恵子さんの悩み~子育てと、仕事復帰を両立させたい気持ちの整理~
ふと、恵子さんは考えました。
そろそろ家の中にいるより外に出たい。仕事をしたい。社会に戻りたい。
そんな気持ちが自然と胸の中に広がってきたのは、長男の優太が小学三年生になり、学校からの帰宅時間も遅くなり、帰ってきても自分のことが一人で出来るようになり、塾にも一人で行き、お友達との遊びも活発になってきた頃でした。
でも、結婚を契機にそれまで勤めていた会社を辞めて十年、雄太が生まれてからの八年は子育てに専念していた。いまさらこんな私を受け入れてくれる職場があるのだろうか?
自分一人で考えていても始まらないと思った恵子さんは、PTA活動を通して仲良くなった浜本さんに、思い切って打ち明けました。
こういう時間って貴重なのよね」
「長男が五歳、次男は二歳だったわ。うちは自営業なのよ。夫が常に店というか家にいるわけよ、だから夫も子育てに直接関われるわけよね、私が外で働くためにはとてもラッキーだったわよね。もっとも、そのためにはそれまで以上に子供たちの世話をするという覚悟が必要なのよ。外にでるのだから、当然に子供達に関わる時間は短くなるわけだけど、そのぶん効率よくというか密度を高めるというか、時間がないのだから子供達の世話は犠牲にしてもいいという考えでは、外にでて働くということはやめたほうがいいわよ。それは夫の協力も必要だわ。食事の支度も、手が空いているほうがすればいいでしょ?っていうことを理解させる夫育てには、七年もかかっちゃいましたけどね。こっちのほうが大変だったわ(笑)」
「ええ、どうしようかと思って。このごろでは、三時半近くまで子供は戻ってこないし、戻ってきてもお友達と遊びに行っちゃうし。自分のことは自分で出来るようになっているんです。塾も、一人で行けるようになったし。なんか、取り残されているような気もするし、でも、まだまだ子育てに専念したほうがいいようにも思うし・・・」
「え?得られるもの?多少、自由になるお金かなぁ?」
「う~ん・・・。働いているという充実感?かな・・」
恵子さんは、この質問に対し、「そうですね。あせっちゃいけないのよね」と、素直に答えました。「もう少し考えてみます。今日はどうもありがとうございました」
浜本さんは、キャリア・カウンセラーでもあり、コーチングのキャリア専門コーチとして活躍していることを、後日、恵子さんに明かされたそうです。
ボタンの掛け違った親友との仲直り~仲たがいした親友とのミスコミュニケーション回復を目指す~
ちょっとしたボタンの掛け違えで起きたコミュニケーションエラーについて考えましょう。
幼馴染で、結婚したあとも、一つしか町内が離れていないというロケーションで暮らす、麻美さんと真由子さん。誰はばかることなく「親友」と言って紹介しあう仲良しでした。
“そういえば、隆(長男)にそんなようなことを言った気がする・・・”という記憶を呼び覚ましながら、どうしたら誤解が解けるのかをテーマに、コーチとのセッションを希望しました。
「はい、私たちはホントにこれまで仲がよかったので、たとえば、スーパーに行く時間とか、塾の送り迎えの時間とか、お互いの行動が予測出来るんです。だから、それを外すことも簡単で、なかなか偶然を装って出会うことも出来ず・・・」
「ええ、真由子がどんな経緯で誤解したかはわかりませんが、それはホントに誤解なんです。だから、早く解いて、元のように双子姉妹といわれるような仲良しに戻りたいんです」
「共通の友達はいるんですが、直接話したほうがいい。更に誤解させるようなことになっては申し訳ないといわれて、だれも間に入ろうとしないんです」
「メールは、何度か送ってみましたが、返事はありません。届いているのかどうかはわかりません。まさか、受信拒否の設定にはなっていないと思いますが・・・」
「メリットと言うか・・・、仲良くなれたら、いろんなことを相談出来ると思います。これまでも、お互いの愚痴を聞きあったり、子育ての相談をしたり。夫への不満を聞いてもらったり。とにかく、価値感が同じだから、話すだけで心が温かくなる存在なんです。とても大切な人なんです」
「ええ・・・」
「それがわからなくて。私が隆に言った言葉を、どうしてそんなふうに取り違えて聴いたのか・・・。由樹(真由子さんの次男)君が、真由子さんに何を言ったのかもわからないし」
「ええ、そうじゃないと、誤解は解けないから・」
「え??」
「ん・・・・・」
「そうでしょうか?」
「それはもちろん・・・」
「はい・・・・」
「断られたり、嫌な顔をされたくないし・・・・」
「断られて、失うものはありますか?」
「・・・・」
「今、既に、真由子さんとは話せない状態なんでしょう?」
「はい」
「それなら、断られても、状態が変わらないだけで、希望がなくなってしまうわけじゃないでしょう?」
「それは、そうですけど・・・・」
「繰り返し、麻美さんは真由子さんと話したいと思っているということを、自分の言葉で訴えてみてはいかがですか?」
「ふう・・・・」
セッションは、このあと、麻美さんの沈黙の時間が長くなったので、中断しました。
コーチにとっては勇気の出せる問題であっても、クライアントにはそんなに簡単でないことはたくさんあります。
障害をどう乗り越えるか、コーチはその方法を考えたり、計画を立てる支援したりすることは出来ますが、一番大切な勇気を出すことを、直接支援することは難しいことです。
何がきっかけになるのかわかりませんが、こういうケースでは、辛抱強くクライアントの気づきを、寄り添いながら待つことも大切です。
姉妹で始めたカフェ お姉さんの悩み~共同経営者とのコミュニケーションを回復させるためのセッション~
都会ではすっかり定着しているカフェですが、地方都市ではまだ馴染まれず、経営に対する理想と現実のギャップに疲れてきたようです。
今日は、妹の雅恵さんが僻みっぽく、お客さまについて何かと不平や不満をこぼすし、このごろでは、お客様がお帰りになるとすぐ後にでさえ、お客様の悪口を言うようになり、忘れ物でもして引き換えされたらどうしようか?と、はらはらしているお姉さんの悠美さんとのセッションです。
「はい、妹と違って、私はあまり話すのが得意ではないので、上手く話せるかどうか・・・」
「先輩の予定があるので・・・」
「悠美さん、すべての問題を解決するためには、悠美さん自身が行動を起こさなければならないのですよ? いつにしますか?」
「はい、明日、先輩の都合を聞くために、メールを打ちます。その返事次第では、すぐに逢う事が出来ると思います」
「そうですね。では、明日、メールを打ってみましょう」「はい、ありがとうございました」
「こちらこそ、厳しいことを申し上げましたが、お許しくださいね」
「いえ、厳しいとは思えませんでした。コーチのお人柄でしょうか?私もそんなふうになりたいですね・・・」
メタコミュニケーションを図って、このセッションを締めくくった例です。
誰にも目標があり、誰にもそれを解決する能力もある。そう信じることが大切ですが、クライアントを信じることと、黙っていつも見守ることが必ずしも機能するばかりではありません。最後の壁を乗り越えさせれば、行動を起こせるというときは、背中を押すのもコーチの役割ではないでしょうか?
保護者からの電話に悩む先生~真意を伝えるコミュニケーションを考える~
ところが、ある日の午後、練習を終え、残った仕事を片付け同僚であるバスケットボール部顧問の先生を誘いビールでも飲もうかと立ち寄った店の入り口で、保護者からの電話を受けたそうです。
「先生、食事の献立まで指図するのはいかがなものですか?我が家は共働きで、食事は簡単に済ませることだってあるし、出前をとることだってあるんです。
息子は、先生の立てるメニューどおりにしなければ、レギュラーから外されると神経質になり、ふさぎこみがちである。いったい、あなたは何様のつもりですか? 先生は栄養士の免状でも持っているんですか? たかが高校の部活の顧問ごときに、家庭の食事まで指図されなければならないことはない。それとも何ですか、うちみたいな共稼ぎの家の子供はサッカーをする資格がないって言われるんですか」
ショックを受けた坂本先生は、冴えない顔のまま、同僚が待つ店の中に入り、ビールで乾杯するも、気持ちはさえません。
「ああ、そうなんだ。今日は子供達の体も切れていたし、モチベーションも高かったから、いい練習が出来たって思ったんだけどなぁ・・・」
「ああ、まぁそうだな。残念っていうか、悔しいなぁ」
「ああ、今、部員の保護者からの電話でさ、俺の言い分を聞くわけでもなく、一方的に言いたいことだけ言われて、がちゃって・・」
「ああ、いいのかな?言っても・・」
「そうだな。たぶん、学校にも連絡が入るんだろうなぁ・・あの調子じゃな・・まいったな」
「実は、保護者からのクレームの電話でさ。たかがサッカー部の顧問ごときが、家庭の食事まで指図するなって言われちゃったんだ。確かにそうかもしれないけど、うちの子達は筋力が弱いんだ。だから接戦の試合では負けてしまうことが多いんだ。おまえも運動部の顧問をやっているからわかってくれると思うけど、子供達に勝つ喜びを味あわせてやりたいんだ。
全国大会になんて一足飛びには思わないけれども、県大会では上位を狙えるところまで上げていきたいんだ。うちの子供たちにはそれくらい出来る能力はあるんだ。それが肝心なところで凡ミスが出て負けることが多い。前の学校のときにうちのチームと試合して感じたことなんだ。
少しでも強いチームにして、子供たちに自信を持たせてやりたくて。ついつい、力が入りすぎたのかなぁ・・」
「ああ、そうだな。でも、真意を組んでもらえなかったのが悔しくて。子供たちのこと、自分だって真剣に考えているのに・・」
「ん?・・・どんなふうに?って、もしかして、重荷になってるのかなあ?自分は出来ればそうしてほしいとアドバイスのつもりで言ったんだけどな・・・」
おまえの気持ちをちゃんと保護者に伝える方法を考えたほうがいいと思うんだ。一方的に情報を流しても、双方向に意見交換しないと、真意を伝えられないし,真意も汲み取れないんじゃないか?
今回、クレームの電話とはいえ、保護者から意見が聞けたというのはコミュニケーションとしては一歩前進、双方向の意見交換が始まったということだぞ、それはそれとしていいことなんだ。
これを踏まえて、この先どう子供たちや保護者と向かい合っていくかということじゃないかな。
クレームととるのか貴重なご意見を頂いたととるのかは、お前次第だ」
よっしゃ、明日校長に今回のことを話し自分としての対応の仕方を説明して、保護者や生徒に自分の指導方法を伝える準備をはじめるよ。なんかすっきりしたな。雨降って地固まるでやってみるよ。よし、もう1度乾杯してもいいかな?」
しかし、コーチングを学べば、もっともっと、やる気を取り戻させ、行動計画を立て成果をあげることが可能になります。
ご自身の会話を振り返り、学ぶ前からコーチとしての資質を感じる皆さん。コミュニケーション能力向上と、人との関係をより楽しむためにも、ぜひ、一緒に学びましょう。
市長選挙に立候補~最終目標を達成するために確実な方法を考える~
しかし、地方の市の選挙出馬には、しがらみや決め事がたくさんあり、支援団体のご長老方の意見を聞いていると、このままでは出馬断念に追い込まれてしまいそうと、コーチングを受けることにしたそうです。
「はじめまして、よろしくお願いします。さっき、契約書に同意してサインしました」
「はい。まずは、選挙に出て顔を売り、私の主義主張というか私の考えを市のみんなにわかってもらうことです。そして出来れば当選、市長になって三期で市政を改革したいと思っています。ただし、市政を改革するというのは、みんなには内緒です。とくにご長老方には。そんなことを言うと、足をひっぱられますからね」
「いや、支援はしてくれていますが、どうも・・・私利私欲のために思えてならないんです。
これからの市の運営は、能力のある市長がひっぱらないと、すぐに財政が破綻に追い込まれます。これといった産業もなく、優遇・保護されている農家が多い。そんな町でも、ここは人が終の棲家とするには、自然にあふれた住み心地のよいところなんです。介護保険を使う世帯も多くなるでしょう。でも、安心して住めるふるさとにしたいんです。
ただ、この市は、今の市長の息のかかった業者や、市長の協力者が町政をしきっており、ここで変えないと、ずっと一部の考えで市の政(まつりごと)が進んでいってしまうんです。それで良いと思いますか?」
「どうしてそうお思いになるの?」
自分の支持している○○党に入れとか、自分の懇意のどこそこの社長に挨拶をして、社員に協力してもらえとか。そのためにはその人に受けのいい事をしゃべれとか 言われるんです。
しがらみのない選挙、草の根選挙を目指したいという自分の思いが、どんどん薄められていってしまう。いったい、自分は何のために選挙に出ようとしているのか、このごろでは、自信が持てないんです。それでも、私は戦うべきなのか・・・」
「うん・・・出来ないかもしれないって。選挙って、結局誰かの手を借りなければ出来ないものですから。でも、あんまり人の言うとおりに動かされたくない気持ちが強い。特定の政党員としてではなく、若い人たちと一緒に、この町の将来を考えていきたいんです。そのためには、1回や二回、落選することも覚悟の上です」
「・・・・生意気かな?」
「まぁ、そんなところでしょう。田舎なので、親父の代の人間関係とか引き合いに出されて、お前の親父の非情さを知っているから、お前を応援しないとあとで何をされるか分からない、だからお前を応援すると面と向かって言われたり。俺はお前が赤ん坊の頃から知っている。おまえみたいな甘ちゃんに、どんな考えがあるのか、えらそうなことを言っても、どうせ、たいしたことないだろう。くだらない理屈をあれこれ言わずに、市長になりたいのなら俺の言うとおりにしろ・・って言われたり。四十になった一人の男として扱われたことがないんです。ひよっこひよっこって、二の口つけばそれが出てくる。それでも、僕を信じてくれる同級生の仲間を頼りに、がんばろうと思うんですが・・」
「あなたは、何のために市長になりたいんですか」
「市長になって具体的に何をしていくつもりですか」
選挙までの時間は、八ヶ月しかありませんでした。選挙活動と平行して、コーチングも行った結果、現在、自分のポリシーや価値観を捨てずにみんなの理解を得て、新しいふるさとづくりのために、忙しく身を動かしています。
一念岩をも通す。支援するコーチも、時に心配なる位の芯の強さを失うことなく、コーチングを活かして、見事市長に当選。現在、新たな目標達成に向け、東奔西走しています。
専業主婦の悩み~社会復帰を目指すも心揺れる女性のキャリア・ビジョンの支援~
入社七年目、二十九歳のとき、自分の人生このまま仕事一筋でいいものかと迷っていたとき、会社から、女性なんだし、そろそろ結婚しないと子供を産めなくなるぞと上司に言われました。
「はい、いけないと思うのですが・・」
「そうですね。わかっているつもりなんですが、自分が思うとおりに自分もコントロール出来ないなんて、情けないですよねぇ」
「はい。なんだかわからないんですが、とにかくイライラして。自分の人生は自分で決めてきたつもりです。でも、こんなはずじゃない、もっと私は生き生きと生きているはずだったのにと、後悔ばかりの毎日です。男性社員と同じように昇級して、バリバリ仕事していたときのことを考えると、自分だけ、みんなに置いてきぼりにされているような気がして、うちにいても怖いんです。このまま、子育てだけに専念して、終わったと思ったら、その次は親の介護かもしれない。夫も私も歳をとってから結婚をしたものですから、両親はともに高齢で。なんだか、人の面倒見るためだけに生きているように思えて・・・」
「ええ、そう思うんですが、過去にやっていたイメージやデザインの世界は、変化が激しいし、子育てに専念して、読む雑誌も子育てに関するものが中心なんていう生活では、もう、イメージの世界には戻れないような気がして。でも、私はそれ以外の仕事をしたことがないから、仕事を始めようと思っても、他のことは出来そうにないんです」
「仕事をすることですかねぇ・・」
「それがわからないんです・・」
「家庭の仕事を仕事としてとらえる?主婦の仕事なんて、たかが知れているじゃありません?掃除、洗濯、食事作り、子供の世話に夫の世話。舅や姑が訪ねてくれば愛想よくもてなさなくちゃならず、一生懸命やっても、だれもありがとうといってくれないんですよ」
中小企業へ転職、やる気を失っている管理職への電話コーチング~転職先でのキャリア・プランを考える~
それでも何とか我慢をして、みんな社長の顔色を伺いながら、仕事はしているんです。ところが、先日、私の提案した新人事制度導入に当たって社長と意見が合わず、激しく口論してしまったんです。娘婿や娘もいたんですが、父親をなだめるでもなく、ただ、おろおろして父親を見るばかりで、他の社員の手前、私も引っ込みがつかなくなって思いのたけをすべてぶちまけたんです。社長は横を向いてしまって、それ以来、社長との間が上手くいかなくなっているんです。どうしたものかと悩んでいます。でも、社員には部長として私が職務を全うしているところを見せるのも、教育だと思ったから頑張ったのだからあれでよかったと今でも思っています。
「私と会社、いや、社長との関係さえ修復出来れば、私のこれまでの腕をもう一度振るうことが出来ると思うんです。なんとしても、社員のあの『どうせ何やったって、社長のご機嫌一つなんだから、余分なことはやらない』という消極的な姿勢を変えたいんです」
「修復するのに気をつけることですか?どうして、そういう質問をされるんですか?何か、私に落ち度があったんでしょうか?」
「かまいませんが、何か・・」
「え?! それは・・・」
ダイエットする気はほんとうにあるの?~目標達成の意思を確認する~
忙しい毎日を過ごす間には、ストレスもたまることが多いらしく、間食がすすみ、その結果半年で四キロも体重が増えてしまいました。このままでは健康を害してしまうが、食べることはやめられず、どうしたものかと悩んでいました。
このままではいけないと思って運動をすることにしました。カレンダーに、運動した日は○を、出来なかった日は×を記そうと決心し、初日は勢い込んで、ウォーキングをしたものの、始めて二週間で実行出来たのはわずか二日だけという、なんとも情けない結果となったカレンダーを見て、更に落ち込んでしまいました。
「はい、清水さん、どんなことでしょうか?」
「はい。やろうと決めたときはもちろん百点。今は、二十点かなぁ・・」
「百点になったら?・・・う・・ん・・百点になったら歩く習慣がつくと思います」
「健康維持を目的としたウェイトコントロールかなぁ・・」
「結果としては、体重が減ると思うけど・・。目的は、健康維持を目的としたウェイトコントロールかなぁ・・どっちだろう?」
「ああ、そうですね。どっちかじゃなくてもいいですね。それぞれお互いがお互いの結果であると思います」
「そうです。単なるダイエットだけだったら、食べる量を少なくすればいいことです。ウォーキングしてみようと思ったのは、単なるダイエットではなくて健康維持を目的としたウェイトコントロールを意識しているからです」
「うん、それが一番の理由だと思います。だけどそれだけではない、運動不足だから歩くのが嫌になる。だから、郵便ポストまで歩いていって郵便物を出すとか、別の用事をあわせてしようと思うんですが、買い物なんかのときは、帰りの荷物が重いとか、なんだか、自分でいつも工夫しているのは、ウォーキングをしないための理由探しみたいなんですね」
「そうですね。だから、すぐに中止に出来るんです」
「結局は面倒くさがりなのかもしれません。それと心のどこかにウォーキングをしても、体重が落ちないとき、もっと過酷なことをしなければいけないので、ウォーキングを中止にすることで、体重が落ちない理由作りにしているのかもしれません」
「・・・・」
清水さんは、この質問にじっくり考えた後、高橋コーチと歩いた日は、写メールを送るという約束をし、現在、ほぼ毎日歩けるようになったとのことです。
仕事の合間や、移動のとき、ドアのまん前までは車で乗りつけず、公共の駐車場などを利用し、二十分は歩くという目標達成を目指し、カレンダーの丸印を増やしているそうです。
受験プレッシャーに悩む浪人生~セッションを通して考え直す受験の目的~
今年こそは、国立大学の受験を失敗してはならないと考えています。
そのプレッシャーからか日一日と受験日が近づくにしたがって、気持ちがふさがっていくのを感じていました。
高校の卒業生で社会人となってコーチをしている人がいると聞いて、今の状況を何とかしたくて、わらをもすがる思いでコーチの元を訪れました。
これは、予備校の先生とはずいぶん違うと、兼子さんには、コーチを観察するゆとりが出てきました。
兼子さんには理由が分からないのですが、コーチのオフィスを訪ねてからどんどん、気持ちにゆとりを感じていったようです。
コーチは、兼子さんのゆったり穏やかになった表情を見て、質問を開始しました。
「家もそんなに裕福でもないんで、国立大学を目指しているんです」
「去年、受験して失敗してますので、今年はどうしても合格したいんです。両親も期待していますので・・・」
「農学部に入って、農業問題を研究したいんです」
「そんなことはないんです。私の勉強したいことは、多くの大学で学べることです」
「はい、自分なりに調べて方向性を決めてから、予備校の先生に相談したところ、兼子さんの偏差値で十分合格圏内に入っているので、そこを目指すようにと言われました。また、両親に相談しても、国立大学に入って、あなたのやりたい研究をどんどんやってくれれば、それでいいということで、予備校の先生も両親も賛成してくれたし、自分もそれがいいんじゃないかなあって思うんです・・・・」
(「自分は大学に行って何をしたいのだろう」)
(「大学に行きたいのか、大学に行って勉強したいのか どっちなんだろう」)
それを、コーチは、兼子さんの話すスピードや表情、しぐさなどを合わせることによって、しっかり聴いてくれることを感じさせながら、心の芯にある兼子さんの自分自身の気持ちと向き合わせてくれたのです。
兼子さんは、この1回のコーチングですっかり自分を取り戻しましたが、自分の気持ちがぶれないように、引き続きコーチングを受けながら受験勉強をしようと決心しました。
「彼の気持ちがわからない」との悩み~恋人への思いを整理し、相手の気持ちを知る~
久代さんは、コーチとそのことをテーマに会話をしました。
「久代さんはいつごろから彼の癖が気になりだしたの?」
「彼の心の中をのぞかせてもらうための質問で、彼がぜったいに嫌うタイプはどんな質問?」
そして久代さんは、次のデートで思い切って彼に尋ねてみたそうです。
えたということであったと、コーチに報告しました。久代さんは恋愛にもコーチングは必要で、機能することを感じたようでした。
喫茶店を開店したい専業主婦の悩み~専業主婦の夢を実現する嫁と姑のコミュニケーション~
ところが、順調そうに見えていた準備が、なぜかなかなか進まなくなっています。
お話を伺うと、メニューにゼリーをどうしても入れたいのだけれども、それはおかしいだろうか?
コーヒーをお出しするのはお嫁さんが得意だけど、ゼリーを召し上がっている隣の席でコーヒーの香りがするのはどうかしら?
など、たいへんな迷いようです。
目標である喫茶店を開くという期日は、来年の十月と決めてあります。
当初障害になるであろうと思っていた改装資金は、貯蓄を取り崩すことでクリアした矢先のこと。やはり、専業主婦にはムリなのかしらと、ずっと悩んでしまったままでした。
「私たちに今、出来ることは何かないですか? お母さん一人で考えないで、私も今すぐお手伝い出来ることを言っていただけると嬉しい」
「お母様の夢は喫茶店を開くということでしょ。それなら、ゼリーとコーヒーの両立したお店というのは、どういう形になるのか考えて見ましょうよ」
うっかり、自分のことになると、コーチングを機能させることを忘れて突っ走っていたのですが、改めてコーチングを身近に感じ、セルフコーチングしながら、来年の開店目指し、準備を快調に進めています。
「専業主婦・専業母だってやれば出来る!」と喫茶店のカウンターに立って胸を張っている自分の姿を夢見ながらゴールに向かっています。
板前修業に入って三年目。~他者の感情を理解する~
高校卒業と同時に、料理の世界に足を踏み入れた神山君ですが、このごろ元気がなく、コーチをされているお母さんに紹介されて、セッションすることになりました。
「いえ、こちらこそ、急なお願いをしてすいませんでした」
「はい、今後の進路のことをちょっと考えたいんですが、いいですか?」
「そうですね。板場の中でも、板場のものの食事『賄い』を作るときは緊張します。同じ道を志す下っ端が先輩のための食事を用意するわけですから。実力とアイデアを試されているようで、とても緊張するんです」
「得意なのは野菜たっぷりの雑炊です。魚のアラでだしをとり、野菜の切れ端を細かく切って、卵だけは料理長から分けてもらいますが、他は、すべてお客様にお出しした料理の材料の残りというか、切れ端でやれるようになりました」
「それはいいんですが、このごろ料理長が僕に何も言わなくなったんです。僕より下の新人にはいろいろ言っているのに、僕は何をしていいのかわからず戸惑う毎日なんです、僕は、料理長の気持ちというか、阿吽の呼吸で動くことが出来なくて・・・板場にいるのが苦痛なんです」
「・・・・」
「僕は、母一人子一人で。いつも母は夜遅く仕事から帰ってきて食事の支度をしてくれていたんです。だから、大きくなったら、いつか母に食事を作ってあげようと思って。それなら、いっそ料理人になって自分の店を持って、母においしいものを作ってあげたいと思ったんです」
「中学でまったく勉強しなかったし、家は経済的に難しいから高校へいけないと思っていた。でも、母は一生懸命に働いて、高校へはどうしても行けと応援してくれて。自分もバイトして頑張って卒業しました」
「親父を恨みました。親父がしっかりして、離婚してなければって」
「僕、親父がいないから、歳の大きい人との話をどうしたらいいかわからなくて・・」
「はい、料理長もだけど、先輩とかも。怖いんです、話し方が。いつも怒られている様で」
「そういう時もあるし、そうじゃなくて、仕事の指示を出されてるだけのときもあります。僕がわからないんだと思うんです」
「はい、『べつに料理長は怒ってないんじゃないっすか?』ってこともなげに言うんだけれども、僕にはどうしてもそう思えない」
「はい」
「表情ですか?」
「そうですか、まじめな顔ですね?先輩方は?」
「なるほど。お母さんのというか、女性の表情と比べて、何が違うと思う?」
「そう、例えば女将さんとの違いは?」
「厳しいことを言ってしまうけど、学校じゃないから、声かけてもらうまで待ってちゃだめなんじゃないかな?」
「迷惑だなんて心配することはないと思うわ。料理長はあなたが成長しているから、手取り足取り、何から何まで指図されて動かさなようにと考えたんじゃないかしら?料理長は神山君に任せて話しがあれば聴こうと考えているんだと思うわ」
「神山君はどんなことを話したいの?」
「なるほどね、いろいろ教えていただきたいんですが?って、自分から声を掛けてみたら?」
「もちろん、調理している最中はだめだよね?だとしたら、いつならいいと思う?」
「そうだね。声をかけてもいいときがいつなのか?1週間、観察してみようか?」
脱サラマスターの苦悩~苦手意識をなくし、コミュニケーションを考える~
喫茶店激戦地域とも言われる地域での厳しい競争の中、マスターこだわりの店になっているせいか、常連のお客様が多く、皆様思い思いのコミュニケーションの場になっています。
このごろは、定年退職された男性のお客様がモーニングの時間に多く来られるようになり、急に自由になった時間を持て余しているのか時間つぶしに長く店にいらっしゃいます。店内はお昼までの待合室の様相を呈する時間もあり、これまでとは少し雰囲気が変わった気がすると、こぼしていました。
「ええ、今日だけで解決するような問題ではないように思います。とにかく、この朝の重苦しい雰囲気を変えたいんですが、さりとて、男性のお客様入店お断りというわけにはいかないですからネェ・・」
「覇気がないというか、活気がないというか、とにかく雑誌や新聞をたくさん席に持ち込んで、コーヒーを飲み終わると、水だけで場所を占領する。まぁ、朝早い時間は、お客様が多いわけじゃないし、ビジネスマンが利用する時間帯よりは少し遅れて入ってくるので、むしろ、売り上げは増えているんです。ただ、とにかく空気が重くなるんですよ・・・」
「ええ、元気がないし、会話がない。オーダーを受ける際、『モーニング』といったまま、後はお水のお変わりを注ごうが、カップをさげにいこうが、とにかく黙ったまま。たまに話しかけてくるお客さんがいるかと思うと、景気はどうか?とか、新聞が汚れているとか、雑誌の次の発売日はいつかとか。あるいは、政治の話で、こちらは客商売なんだから、お客様と議論するわけにはいかないんだから、『そうですね』、『いいですね』と相づちを打つだけにしていると『あんた、何にも考えてないのか?』なんて意見されてしまう。
「そうなんです。どっちがいいとか悪いとかじゃないけれども、好きなのは、午後の主婦のお客様のほうですね。答えるのに困るような質問はめったになく、どちらかというと、私を相手に、愚痴をこぼすような感じでいらっしゃって、『話すだけ話したらすっきりしたわ・・ありがとうね、マスター』といって明るい顔で帰ってくれるんです」
「ええ、ぜんぜんダメですね・・・」
「うん・・・売り上げは減らせないから、来るなとはいえない。これははっきりしています。でも、それ以外は、どうしたらいいか・・・まったく分かりません」
男性は、とかく自分の感情を表に出したがりません。ここにコミュニケーションが上手くいかない理由があるのです。
お客様との議論は、勝ち負けではなく、相手の言いたいことを汲み取り、自分の意見も主張する良い機会として、他のお客様を巻き込むこともあり、午前中も活気ある雰囲気が取り戻せたそうです。
年配の部下とのコミュニケーション~年配者への配慮を持ちながら、職場の管理者としての役割を果たす戦術を考える~
中堅製造メーカーに勤務する川畑さん。年配職人社員とのコミュニケーションに悩み、コーチングを受けることになりました。
「はい、私は、製造工程表に基づいて、仕事の割り振りや資材の調達と管理を主にしています」
「仕事は楽しいんですが、現場の職人さんは皆さん、親父みたいな年齢の人ばかりなので、なかなか・・・」
「はい、職人さんは、コミュニケーションをとることもまっすぐ、実直にストレートに来るんで・・たとえば、急ぎの仕事を頼もうとしたりすると、『今出来んことぐらい見て判らんか!』とか、『そんなの自分でやれ!俺には関係ネェ』で片付けられてしまって。親父のような年代なんで、言われたらそれ以上は反論出来なくて・・。
「え?・・・」
「もちろんです!当たり前じゃないですか!そのために・・」
「いやぁ、初めて逢った人に職人さんたちを教育して欲しいといったって、彼らは心を拓きませんよ。プライドが高くて、閉鎖的なものの考え方をする人たちですから、あなたの言うことを素直に聞くとは思いません」
「職人さんの認められる部分は、やはり技術力の高さでしょう。人間的にも実直だしまじめだし・・」
「職人としては尊敬出来ます。でも、人間的かというと・・・すぐ大声出すし、すぐ怒鳴るし」
「いや・・・どうかなぁ・・課長には怒鳴ってないから、自分たち、若い者だけにかもしれません」
「馬鹿にすると言うか、頼りなく思ってるかもしれません。何せ、相手はこの道一筋四十年とか四十五年とかですから・・」
「年齢と言うよりも、技術力が不足しているからじゃないかな?職人は、プライドが高いですからね」
「はい、わずかな仕上がり具合が気に入らなくても、もう一回作るからと言って、勝手に納期を延長したりして、管理者としては、納品期日に間に合わないことのほうにやきもきさせられますよね」
「いや、もちろんいつもじゃありません。多くは守ってくれるんですが、どうしても見過ごせない傷が残ったとか、R(カーブ)の仕上がりが気になるとか、絶対譲れないポイントでは、納期度外視ですね」
「もちろんです。後工程のセッティングに影響が出るわけですし、会社の信用にもかかわりますから、そういう意味では、全体への影響もあります」
「そんなこと、いちいち気にしてたら利益も減るし、信頼もなくす。検査は、品質管理が判断するから、手直ししなくていいから早く出して・・と・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「そうですね・・話しているうちに、だんだん、自分のことしか考えていないことに気づきまして・・」
「はい、ぜひお願いします」
自分の業務を全うしようとする者同士、ガチンコで向き合うことが、かえって、コミュニケーションのゆとりを阻むことになった事例です。
お互いが相手を認め合うことが大切なことです。
政府の発表では、七五歳以上の高齢者が、総人口の一〇%を超えたとありました。
今後、地域においても、ますます高齢者とのコミュニケーションの難しさが、人間関係を悪化させるかもしれません。職場での経験は、一生を楽しく生きるためのトレーニングでもあります。
川畑さんの今後の人生に役立つコーチングを目指して、セッションは続いています。
年配者との交渉が上手くいかない~仕事がうまくいかないのは、コミュニケーションのとり方に原因があった~
ところが、今年の初め、正月気分が抜けないくらい早々にいただいたお宅の打ち合わせ以後、すっかり気持ちがふさがり、このごろは、仕事も休みがちで今後どうしたらいいのかというテーマでのセッションでした。
「すみません。病気とかではないんですが、なんとなく全身に力が入らなくて・・」
「いえ、病気一つしたことがなくて、おかげさまで医者に知り合いが出来ません。仕事でのクライアント以外は・・」
「はい、今年の正月にいただいた仕事が、お医者さんのご自宅の新築だったんですね。若いご夫婦といっしょに暮らすから二世帯住宅をというお話でした」
「そうですね。基本的には、親御さんの居住部分は、和のテイストでまとめることが多いですし、お若い方の住居部分は洋のテイストでまとめることが多いので二つの仕事を同時に進行させるという感覚で心構えをします」
「はい、スタッフは三名います。いずれも主婦の方で、パート契約をしています。仕事があるとき、時間があるだけ働いていただくというスタイルです」
「そうですね。三十三歳にしてこの発展は、ほんとうに幸運だったと思います。ただ、この年齢が災いしたのかなぁ・・」
「そのお宅のクライアントが、私の提案を、ことごとく否定するんですね。でも、同じことをスタッフが表現を少し変えてお客さんに打診させると、それはOK!って二つ返事で話が進むんです」
「はい、たとえば、『親御さんのお宅の玄関の壁を利用して、お写真を飾ったらいかがでしょうか?』と提案させていただいたんですね。とてもお孫ちゃんたちと仲が良いお宅なので、やり取りを聞いていたら、ほのぼのとしていい雰囲気だったんです。
ところが、スタッフが『お孫さん思いのおじいちゃまのお気持ちを、写真を飾ることで表現させていただけると嬉しいですねぇ』・・と言ったとたん『それはいい!ぜひ、そうしてください。写真を選ばなくちゃいけないなぁ』と、がらりと変わって『すぐに写真と写真を飾る額を選んでください』と、発注がきたんです」
「もちろん、結果だけを見ればいいんですが、どうして同じ提案なのに、私は駄目で、スタッフはいいのか、腑に落ちなくて・・・」
「コーチと同じです。結果が良かったんだから、それでいいんじゃないかって?」
「はい、結果は確かに良かったんですが、なぜ、私ではだめで、スタッフならいいのか。それが知りたいです」
「年配者との交渉がうまくいくと思います」
「ん??どういうことですか?」
「ん・・・お客様とは、商談や交渉はしますが、単なるご相談に乗っている関係であると思ったことがないので・・・」
「そうですね・・・」
「うん・・私が若いということは、問題ではないのでしょうか?」
「スタッフがみんな年配者だから、上手くいっているとばっかり思っていました」
「私には、相手に配慮するという視点が欠けていたんでしょうか?」
「そうか・・クライアントとは交渉するもんだと思っていました。お金をいただくんだから、責任ある仕事をしなくちゃいけないと思って、力が入ってたかも・・」
「うん・・・難しいけど、それをゆっくり探してみます。何か、目先のことだけ考えていたような気がします。歳は急いで取れないし。ちょっと気持ちが楽になりました。ありがとうございます」
時間をかけて支援出来る、コーチの仕事の魅力の一つですね。
ボランティア団体の一人の理事の悩み~コミュニケーションを拡大する~
鳴海さんもそんな一人で、今年度、初めて理事になりました。理事の一人として理事会に顔を出し、活動の方向や戦略を立案する側に立てると思い、ワクワクしながら1回目の会議に参加しました。
初めての会議ということあり、緊張して皆さんの話を聞いている間に会議は終了したが、何かしっくりしない気がして、なんとなく心が重い感じでした。最初ということもあり、まぁ、次はちゃんと発言出来るでしょうと、自分を納得させるようにして帰宅しました。
二回、三回と、会議は月に1度行われましたが、終わったあと、毎回何か心に重いものを感じて家に戻っていました。
任期は1年で、再任は妨げられないそうであっても、通常は十二回の会議に出席すると任期満了となるそうです。
今日こそは、すっきり「やった!」と満足する会議に参加にしたいと願い、はりきって時間前に会議場へ到着しました。ところが、10名の理事会メンバーのうちお一人しか会場に入っていません。「皆さん遅いですね?」と挨拶代わりに声を掛け合うも、開始七分前になっても会長すら会場入りしてきません。
何かが違うと思いながら、その日の会議に出席した後、コーチングの無料体験コースに参加されました。
「今、どんな感じですか?」
「どんなことでも、スッキリしない、満足しないという重荷を下ろすためにも、コーチングの無料体験を楽しみましょう」
「うん、それいいですね。会長のためにもなりますよね。会議の発言ルールを勉強するきっかけになるかもね。もちろん、そういう発言を勇気をもってすることによって、自分のためにもなりますよね」
「ご自分の考えに自信が持てないんですか?」
「憶測やイメージで私は意見を申し上げることは出来ませんが、鳴海さんがそう感じていることは支持したいと思いますよ」
新入社員との関係に悩む新任係長重田さん「社内コーチ制度」の失敗~社内コーチ制度を作るための環境整備~
そんなおり、部下への対応に悩む社員を助ける制度として社内コーチ制度が出来たとのことで、それがどんなものかわからなかったが、わらをも掴む気持ちでさっそく利用してみようと重田さんは人事部へと赴いた。
人事部の扉は硬く閉まっており、いつもながら、人事部への入室は気が重かったが、それでもこのままでは二人とも会社に居場所がなくなってしまう、何とかしなくてはという焦燥感に駆られて、とにかくノックだけでもしようと重田さんは行動しました。
ノックして、人事部に入った重田さんを待っていたのは、いつもいかめつい顔をして、威厳的というか、権威の象徴というような顔立ちの三上部長でした。
重田さんは、三上部長が苦手で、思わずしりごみしましたが、顔を見ただけで退室しては失礼であると考え、踏みとどまって思いきって聞きました。
日々の業務では、新人伊藤くんが自律した仕事が出来ないので、重田さんは二人分の仕事をこなす時間が多く、どんどんとストレスがたまっていきます。先日聞いた社内コーチ制度を使って、どうしたらいいのかを支援してもらおうと考えても見ましたが、しかし、三上部長の威厳的な態度と向き合う勇気は出ないので、どうしようかと迷うばかりで、仕事も手につかなくなってしまいました。
重田さんは救われたように、ドアを開け、胸に中の全てを井上課長に話しました。
「三上部長が自らコーチをやられるのですが、三上部長が不在の時には、代理として課長の私、井上がコーチ役をやらしてもらっています」
井上課長もそれに気づき、「今お話いただいていることは、私の胸のうちだけにしまうことですから、どうぞ安心して話してくださいね」と言われました。
洋菓子店の若奥さん 店員さんの教育に悩んでいます~モチベーション向上に必要な承認とアサーティブな表現~
「はい、ありがとうございます。開店前から、新作のチーズケーキのサービスを目当てに、大勢のお客様が行列をされて、大変でした」
「ええ、開店前に、常連のお客様の大きな声が聞こえたものですから、やっぱり我慢出来ずに、私が飛び出しちゃいました。ほんとうは、店員にやらせるつもりだったのに・・・」
「はい、父の代からのごひいきさん。母も、よく叱られた彼女です。地元では名士なんです。小言の多いことでね。でも、それを彼女は、自分の名前は有名で、どこに行っても私が来ましたといえばわかるからって勘違いしていらっしゃるの。何でも自分の思うとおりになると思われてるみたい・・・」
「でも、その方に困ったんじゃなくて、やっぱり社員が及び腰で対応するから、今回もトレーニングにならなかったことについて頭が痛いんです。あれほど、お客様はみんな大切、お客様によって区別してはいけないのよって、あれほど教育したのに・・」
「大きなため息ね。由香利さんの悩みの大きさが理解出来るわ」
「由香利さんや、ご主人の気持ちと言うか、会社の目標すら理解してもらってないと感じているのかしら?」
「それだけに、辛さも倍増しちゃったのかしらね?」
「今日は、少し、悲観的な気持ちでいるようですね。ところで、なぜ、無料の新作チーズケーキを配ったんでしたっけ?」
「どのくらい、新規のお客様に配布出来ましたか?」
「60%くらい配布出来たわけですね。この数字に対する、由香利さんの満足度は?」
「その結果について社員の方と一緒に喜びを味わいましたか?」
「そうですか、残念ですね」
「ええ、社員の皆さんは、残念だと思っているのではないでしょうか?出来たことは褒められず、出来なかったことを叱られる。確かに、出来なかったことを指摘し、考えさせることは大切だと思います。しかし、二つの件は、別々に評価出来ることだと思うのですが、いかがでしょうか?」
「このほかに、褒めてあげられることは何かありますか?」
「なるほど。由香利さんも、細かなところまで観察出来るようになりましたね?」
「もし、一つだけ、早急に改善して欲しいと思うことを話してもいいということになったら、何を取り上げますか?」
「なるほどね。やっぱりご年配の常連客への対応は気になるということですね?では、それをどんなときに伝えますか?」
「なるほど。では、どんなふうに話しますか?」
「なるほどね。それを、由香利さんが社員の立場で聞かされたとしたら、どんなふうに思いますか?」
「はい。そうです。いかがですか?」
「そうですね。ちょっとキツいですね。では、どうしましょうか?」
「もし、時間があるなら、今週はこの話はしないでいただいて、来週のセッションまでに話し方を考えてきていただけますか?」
「優しすぎず、キツ過ぎない言い方って、難しいですよね。頑張って考えてみましょう」
リニューアルオープンから四ヶ月。新しいチーズケーキは、テレビやタウン誌に紹介され、ますます忙しく働く由香利さん。あれ以来、社員に対する不平や愚痴はほとんど聴かれず、一緒に研修に取り組んでいるそうです。
部下とのコミュニケーションがうまく取れない新任課長のコーチングです。~部下とのコミュニケーションを考える~
「そうですね、まず、彼が何をしているのか、報告してもらったり、相談してもらえたりすればいいと思います」
「手に入るもの?・・・なんだろうなぁ。日ごろから報告や相談を受けていればもし彼に、スタンドプレーされても、安心出来るかな?
いまだと、何が起きるかわからないから、不安で落ち着けないことが良くありますからねぇ。いまより安心出来るんじゃないかと思うんです」
「まぁ、そうですね。私は彼の上司ですからね。取引先の人から、私の知らない彼の行動を教わる私の身になってください。管理者としての能力がないような気持ちに追い込まれるんですよ」
「怒りですね。もう少し人のこと考えろって感じかなぁ・・」
「うん・・それはどうかな?感じているんだったら、もっと積極的に自分から接触してきてもいいと思うけど・・」
「はぁ、まぁ、そういうことになりますか? よく分かりません」
1日のうちで、五分でもいいから。仕事の話でなくてもいいから、彼と話す時間を作ってみたらいかがでしょうか?」
「(無言)・・・」
「忙しければ忙しいで『今でなくてもいい』とつけ加えてみたらいかがですか」
「そのほか、どんな言葉を準備したらいいと思いますか?」
「うん、それいいですね。一度、声をかける練習をしてみましょうか?私が部下をやりますが、いいですか?」
傾聴と承認に終始したコーチングセッション~コーチはクライアントに常に寄り添う~
「いい加減なんだよなあ、みんな。みんなのそのいい加減な仕事の後始末をする自分が一人残って仕事をするのはほんとうに辛いです」と訴えます。コーチは、「お辛いんですね。それを今日のテーマにしますか?」と尋ねました。
「そうだね。休んでしまいたいこともあるわね。それでそんなときはどうするんですか。思い切って休んだりしますか」
「何があっても会社には行くわけですね」
「そんなこともあったんですか。それは辛かったでしょうね」
こんなときは、無理やり話を進めず、徹底した傾聴と承認を繰り返しながら、共感することに重点を置いた会話を進めます。人は誰しも、常に元気に前向きな姿勢で生きていけるものではないのでしょう。
孤独感は人を立ち止まらせます。こんなときは、コーチも一緒に立ち止まり、もう一度歩き始める気持ちを高めるための会話を進めることに徹しましょう。クライアントより早く立ち上がり歩き出さないようにすることが大事です。
クライアントの中に答えがあるわけです。クライアントの望まないほうに無理に引っ張らないことです。
コーチングは、コーチが決める結論に、無理やり引っ張るように答えを教えたり、押し付けたりすることではありません。
相手のペースで、その人が望む方向を目指して行動するように支援する。
原点を忘れないように・・・という戒めのようなセッションでした。
「入社三年目 若い人から同僚へのコーチング」~職場での不平不満を解消し、積極性を取り戻す~
同僚の田中君の言葉がきっかけとなり、私はさっそくコーチングをしてみることにしました。
まだ、コーチングの基礎的な傾聴や承認、質問のスキルを習ったばかりなので、自信はありませんでした。
しかし、田中君の元気を取り戻したい一心でチャレンジしてみたのです。
田中君とは、同期入社で同じ営業所に配属になったこともあり、時間さえあえば一緒にランチをしたり、飲み会をしたりする仲でした。入社二年半。とにかくふたりとも突っ走ってきたという感じで、営業成績もいつも競い合うようにしてがんばってきました。
その田中君が、夏以降、だんだん元気がなくなってきたのです。遅刻や欠勤があるわけではありませんが、朝の挨拶や営業所から外回りに行くときや帰ってきたときなど、なんとなく挨拶に生気が無く、気にかけていた矢先「会社休みたいなぁ・・」という言葉で本人の心の中をのぞく事になりました。
「いやぁ、おまえんとこの課長はおまえにいろいろさせてくれてるだろ? 資料作りだって、ある程度まで任せてもらっているようだし、いざってときには、課長が同行して交渉してくれているだろう?それに比べて、うちの課は、課長が絶対で、新しい資料作ったほうがいいなぁと思って指示されなくても作るだろ? そうすると、そんないらんことはしなくてもいい、お前は俺の言ったとおりの方法で売り上げさえあげてりゃいいんだって、えらい剣幕で叱られてさぁ・・。でも、資料なくて顔だけの営業って、先行き細くなる一方だと思うんだよなぁ・・」
「ああ、そうだね。課長たちの時代と今は違うさ。課長だって、今でこそ顔を出しさえすれば取引先がまぁしょうがないって感じで売り上げつけてくれるけど、最初からそうだったはずじゃないんだ。それなのに、自分の時のことは忘れちゃってて、俺のときは言うとおりにしろだって?それじゃ、俺は力がつかないって。何でも経験することが大事だって、社内報の社長の言葉にだって書いてあっただろう?社長が経験を大切にって言ってるのに、何で課長がそれを止めるのか?ホント!理解に苦しいよ。それで焦っちゃってさ・・・」
「え、だから、このままあの課長の下にいても何もさせてもらえないし、経験が不足するし、実績を上げられずに組織に貢献出来ないことがいやだからって、ストレートに言うさ」
「そりゃ、資料なんかもちゃんと作ったり、電話アポで見込みのあるところにだけ営業に行って効率よく動いたりだよ。つまり、今の課長とはまったく正反対のやり方をするってことさ。課長の鼻を明かしてやりたいよ」
「ああ、そうだよ。なにもさせなかった課長に思い知らせてやりたいなぁ」
「ん??そうだな。そう言われてみると、それぞれが違うことのような気もするな。一つひとつ考えてみるよ」
会社を休みたいと思うのは、ただ単に自分の思い通りにならずつまらないからで、異動をお願いしたい、課長の鼻を明かしたいというのは、単なる自分の思いを通すための手段であって、何らかの根拠のある事ではないことが、この後の会話で明らかになっていきました。
入社して三年。そろそろ会社の中での自分の立場や役割が理解出来る頃になると、急に不安を覚えたり、会社が何も与えてくれていなかったのではないかと疑心暗鬼になるようです。
しかし、どんなに長く社員として働いたとしても、常に会社は個人に何かを与えてくれるわけではありません。会社にどう自分をアピールし、自分から積極的に組織とかかわろうと努力しなければ、何も変わることはないのです。
自己主張をどうしたらよいのか?そのためにどんな行動を起こし、どんな実績をあげるのか?
すべて自分で組み立てていくことが大切であると気づかなければ、早晩、会社に居場所が無くなっていくことでしょう。
入社して三年。自分の居場所を自分で見つけるためにも、コーチングは役に立つことでしょう。
シティホテルのベテラン課長の部下とのコーチングでの悩み~コーチとのセッションによってコーチングを通した部下育成のあり方に気づく~
いつも不調に終わる今年入社したばかりの部下とのコーチング。不調の理由は、部下が質問にまともに答えてくれないからと考えています。何を聴いても「課長はどう思われるんですか?」「課長と同じように仕事は出来ません」と、はねつけられてばかり。人間関係も上手くいかなくなり、朝の挨拶もしてくれなくなりました。
それでも、杉田さんは自分の立場として、彼を一日も早く戦力にしないといけないと考え、機会あるごとにコーチングを行っていました。
しかしながら、最近ではあまりに進展しないコーチングのセッションを終えるたびに空しさを感じるばかりストレスもたまってやりきれなくなってしまったので、自分のコーチにテーマとして扱って欲しいと訴えました。
コーチングは、馬車に乗りたいと思った人を乗せて、その人がいきたいと思うところに運んであげることが大切であるということでしたね?
でも、今、杉田さんは馬車に無理やり乗せて杉田さんの思う方向に無理やり進めているのではないか?それにご自身が気づいておられるかどうかを伺いたかったのです」
そのことにコーチの話を聞いて気づいたようでした。何ゆえに、そんなに気持ちにゆとりがないのか?
コーチは、杉田さんの急ぐ気持ちを整理するセッションを行いました。
杉田さんは、知らず知らずのうちに、新入社員に一人前の人手を求めてしまっていて、彼の不安な気持ちに気づかず、これから自分がどんなふうにキャリア形成したらよいのか考える機会を奪ってしまっていたようです。
日常業務に追われている、新人の教育はめんどうばかりが多くて仕事が増えたという想いだけが先走っていて、自分の本来の仕事に専念するために1日でも早く一人前の戦力としたいと思って、新入社員の部下のためではなく、杉田さん本人のために部下にコーチングしていたことに気づいた杉田さんは、あせらないで一歩一歩やっていこうと思いました。
新入社員の部下から朝の挨拶をするのが、ビジネスマナー、そんなことも体験で覚えさせないといけないと思って、自分からは挨拶をしていませんでしたが、翌日早速、今までにない穏やかな笑顔で「おはよう」と言いました。
昇格して先がわからなくなった店長の悩み~コーチングを通して気持ちを整理し、目標達成をイメージする~
と問われたセミナーの帰り道、改めて近藤さんは自分のことを考えてみたそうです。
近藤さんは、大学生活を終えて以来、スポーツ用品店の販売員としてキャリアを積み上げていました。途中一度、更に大きなショップの店長を目指して同じ業界の別のグループ会社に転職を成功させ、着実に夢を実現してきました。
新しいショップでは、副店長として採用され、会社が必要とする以上の実績を上げることによって、販売実績もマネジメント能力も、ある一定の評価は得ていました。
いよいよ店長として昇格が決まり、全国販売コンクール優勝の売り上げ実績をつくり、社員教育プランも自ら率先して計画し実行する、自立型人材として働いていました。しかし店長となったとたんに、何かが違うような気がして、急にやる気にならなくなってしまったそうです。
近藤さんは、人材育成にコーチングを早くから取り入れており、自らもコーチングを受けていたので、セッション(会話)のテーマに取り上げて、このもやもやした状態から早く脱しようと思いました。
「そのとき、近藤さんが手にしているものは何ですか?」
「誰と一緒に頂上に立っていますか?」
未来日記を完成させたスッキリ感と、必ず達成出来るという自信にあふれ近藤さんは足取り軽く、帰ったそうです。
上司の手腕でやる気の戻った中堅社員~承認上手な上司との出逢いによって気持ちが変るクライアント~
商社に入社して六年目の佐伯さんは、このごろ仕事に対する意欲が低下しており、いっそのこと転職しようかと考えてみたもののどんな仕事が自分にふさわしいのかも分からず、とりあえず仕事はお金を稼ぐためと割り切って毎日を過ごしていました。
しかし、そうとはいっても、どうせ働くなら仕事にやりがいを感じたいと思い、頻繁にキャリア・カウンセリングルームに通うようになりました。
キャリア・カウンセラーに話を聴いてもらうことは、気持ちを穏やかにするには効果がありましたが、何か物足らないものを感じていました。そこで佐伯さんは、思い切ってコーチと話す時間を持つことにしました。コーチングを受けるようになって、半年たった頃、突然、上司が変わりました。
「はい、上司が仕事内容に不慣れなせいか、とにかくよく話しかけてくれるんです。これまでの上司は、いつも不機嫌そうな顔をしていたから、こちらから話しかけると怒られそうで話などしなかったんです。
今の上司は、とにかくどんなことでも意見を求めてコンセンサスをとるように、話しかけてくれるんです」
「嬉しい反面、そんな小さなこと、いちいち気にするのかよ?っていうときもあります」
「そうですね。うざったいんだけど、でも、話しかけてもらいたいんだよね・・」
「なんでかな?」
「たとえば、昨日は、メールで問い合わせていたことで、すでに返信してもらっていたのに、廊下ですれ違ったとき、『佐伯君、メールありがとう。気がつかなかったから教えてもらえて助かったよ。直接返事しなくて申し訳ない。時間がなかったからメールでの返信で勘弁してもらったよ』なんて、わざわざ説明してくれて・・
そんなふうにちゃんと対応してもらえると、嬉しい気がして、また、この人のために気づいたことをメールしてもいいんだって感じたなぁ」
「そうなんだろうなぁ・・何か、すっごく自分を大切にしてくれているような感覚になったんだよなぁ」
「そう、いつもこの上司はこんな調子なんだ。どうでもいいようなメールにでも、メール開封しましたとか、メールありがとうとか、すぐに返信してくれるから、読んだか読まないか、すぐ分かるし、指示をされるときも、なんか嫌じゃないんだよなぁ・・」
「目標とか、目的とか、必ず教えてくれる。それから、やり方をどうするか、必ず指示されたときその場で確認されるんだ。だから、ちゃんと考えなきゃまずいぞ!って思って、その場ですぐに考えるから、行動に移しやすくなる」
「そうなんです。コミュニケーションをとるのがすごくうまい気がする」
「それが、結果についての確認もきちんとされる。細かく説明させられるから、勘弁してよって思うときもあるけど、結果について必ずジャッジしてくれるので分かりやすいし、上司を通して会社との一体感もでるんです」
「それだけじゃない気がする。なんていうのかな、褒め上手っていうか、認めてくれてる気がするんだ」
「そうですね、自分の仕事に対する考え方とか、姿勢とかも含めて、認めてくれてるんだ。間違ったときも、前の上司みたいに、頭ごなしに怒鳴らず、どうしてそうなったかという原因を探ったり、工夫したほうがいいことは何かと、一緒に考えてくれている気がする」
「そうなんです。私の存在を認めてもらっているんです」
「とても充実した毎日を送っています」
「コーチ、この間話していた転職の事なんだけど、しばらくこの上司の間は、この職場で頑張ろうと思うんです。この職場では、まだまだ、やりたいことがないわけじゃなかったわけだし、転職しようにも、商社マンだった自分の魅力って何か、ぜんぜん分からないし。当分、この会社でどうしたらいいかを考えたくなったんですけど、いいですか?」
しかし、上司のコミュニケーションスキルによって、部下はこんなにも働き甲斐に満ちた生活が出来ることを知っていただければ、自己啓発の大切さや、コミュニケーションを大事にしようと、改めて考えていただけるのではないでしょうか?
定年退職後の再雇用者へのコーチング~コーチングの方向を決めるスタート間際のコーチングの組み立て方~
勤続約四〇年の大ベテランの彼女は、この事務所は彼女で回っているという評価に誇りを持って、仕事をしていました。
まもなく定年という歳を迎えた頃、親会社から送り込まれてきた上司は、そもそも女性が男性に伍して実力を発揮して定年まで仕事をするのはいかがなものかと考えている人物で、女性のベテラン社員の存在が目障りなのか、若い女子社員を煽ってみたり、お局は困る・・と、自分が被害者のように振舞うようになり、職場は、早晩、行き詰まりを見せ、仕事に支障をきたすようになりました。
山下さんからコーチングの希望を受けた当初の職場環境は、殺伐としており、本人も、これまでの自分の評価を、どんなふうに受け止めたらいいか、自信喪失な中での出会いでした。
「うん・・定年退職後、希望して再雇用してもらいました。でも、その判断が間違っていたかもしれないと、今は後悔しています」
「仕事は楽しかったし、ほかにするべきことが見当たらないくらい、これまでは仕事中心に生活してきたからです。夫は、三年前に定年退職しました。教員だったので再雇用はありません。今は非常勤で塾講師と、ボランティアで、郷土史の資料まとめを手伝っています」
「はい、趣味人で、現役時代から、さまざまなことに興味をもっていて、生涯学習のセミナーを受講したり、いろいろな活動をしていました」
「はい、今にして思えば、そうだった気がします。でも、教員時代は子育ても家のことも全部私任せで、ずいぶん勝手な人だと、恨んでいました」
「彼が勉強しやすいように、日曜日でも子供たちを連れて出かけるのも私。授業参観や学校行事も全部私がしてきたんです。でも、感謝されることもなく、私の存在って、いつもそんな感じなんです」
「はい、一度も認められたことがない。感謝もない」
「はい、さびしいと言うか、怒りかもしれません」
「はい、そうです。あの人に負けたくないという気持ちが強くありましたね。人として、家族も大事に出来ないなんて、最低だと思った頃から、子育ても、家庭内のことも、全部自分でやらなくちゃダメなんだと、覚悟したように思います」
「うん・・・子供たちも小学校高学年になって、だんだん、帰る時間が遅くなってきたから、私も子供たちが帰るまでなら、働いて、あの人に負けないようにしようと思ったということもあります。あと、子供の学費がたくさんかかることを予想して・・かなぁ?」
「うん・・・私も社会の・・、人の役に立っているということを自分自身で感じたかったんですね」
「うん、評価?なのかな?実感がほしかったんですね。だから、仕事には全力投球してきました。完璧でなければならないと思っていたし、先輩職員が出来ることなら私も出来るようにならなくちゃと思って、遅くまでかかっても、必ず与えられた仕事は仕上げたし」
「え?それは、がんばってるって見てくれてたんじゃないですか?」
「いえ、私の再雇用契約は、1年ごとに更新するかどうかを考える仕組みなので、来年、契約更新されなくても、若い人たちが困らないようにと思って、急いで教え込んでいるから、ちょっと厳しいかも知れません」
「正直言ってそんな気がしています。とにかく不安です」
「そこなんです・・・若い人のやる気をなくさせているとか、邪魔になっているとか感じないのか?と詰問されて、このごろでは、私ってどんな存在なんだろうって、だんだん、自信も元気もなくなってしまって・・」
「はい、何とか、最後の半年は逃げ出したくないんです。負けなくないんです。男なんて、ずるいばかりですからねぇ・・。男たちは細かい仕事も出来ないし、やる気もないし」
「すっきりということはないけれども、こんなにしっかりお話聴いてもらってよかったなって思います」
「はい、まずは、辞める気持ちがあることを忘れないようにするために、デスクに、カウントダウン表をはさむことでしょうかねぇ・・でも、伝えてあげたいことはたくさんあるから、その整理とか」
「ありがとうございました」
人は、自分の姿には、なかなか気づけないものです。鏡を良く見ても、行動や思考までは移りません。
せめて、コーチが、その鏡となってあげることが出来ればと思いました。
転職希望者へのコーチング~自分の気持ちに気づかせるためのセッション~
販売実績は常に上位にあり、精力的に店舗を運営し、業務改善、人材育成、採用などの分野において、他の模範とされることが多く、実行力のある社員として重宝がられてきました。
藤田さん自身も、会社は同族会社の中小企業であってもやりがいがある。そこそこ、努力が認められれば、自分も役員を目指せると今までは思ってきたそうです。しかし、社長が代わり、新社長の考えが自分とは合わず、このごろは、部長の態度も変わりはじめ、見切りをつけた社員は退職を始めたそうです。藤田さんもこのまま会社に残って、本当に生き残れるか真剣に考えたほうがいいと、辞めた同僚からアドバイスを受けて以来、自分の将来について考えてきたそうです。
転職すべきかどうかをテーマに、コーチングのセッションを始めて五回目に、やっと自分の気持ちを素直に受け入れた藤田さんとのセッションです。
「はい、転職しようかと迷っている自分の気持ちは、自分の問題であり、それはそれとして、会社で仕事している以上、会社では今までどおりの成果を挙げなければならないと思っています。だから、率先垂範で自分がまずは動くことで手本を見せようと思っています」
「はい、やはり、中小企業診断士を目指そうと思います。その足がかりに、異業種への転職を果たし、その仕事をしている間に資格を取ろうと思います」
「はい、これまでの経験の転用が可能だと思い、医療器具メーカーにします」
「はい、医療の分野は、今後の超高齢化を考えれば、ますます需要が高くなると思います。そうなれば、当然、医療器具の開発も盛んになることでしょうし、その営業は、熾烈を極めると思います。これまでは、販売していたものが、スポーツ用品だったり、洋服、雑貨だったりしたわけですが、今後は、医療器具を販売しながら病院の経営などを勉強し、病院経営のコンサルティングも出来るようにしていきたいと考えたからです」
「はい、効率よく会社を運営した経験を転用すれば、それは可能だという自論を仮説に基づいて検証してみたいと思いました。経営コンサルタントとして、どんな領域でも仕事が請けられるようにしたいということです」
「はい、ですから、今後は三~四年に一度、戦略的に転職をして、さまざまな分野の仕事を経験しながら、コンサルテーションの種を見つけていこうと思います。机上論ではない、実務経験に基づいた指導やアドバイスが出来るようであれば、社外取締役のように重用されるのではないでしょうか?」
「今、四〇歳と仮定して、六〇歳が独立の年。二〇年間で、六・七の実務を経験出来ますね。その分、専門領域の広いコンサルタントになれると思うんです。今の会社の経営コンサルタントは、新社長にいろいろなアドバイスをしているようですが、現場を預かる自分たちからしたら、ずいぶん、現実的ではない指導があると感じているんです。経営コンサルタントとしては有名な人らしいですが、うちの会社にはこれまでの伝統や社内風土があって、すぐに変化させられないという事情があります。それに、現場を知っているのは、自分のような店長たちです。自分たちの意見も聞かずに一方的に指示されても、受け入れられないことはたくさんあるんです。だからこそ、自分は、実務を経験し、一線の視点でコンサルティング出来る人を目指そうと思ったんです」
「はい、時間をうまく分けようと思います。休日出勤はせず、残業も控えてビジネススクールに通う時間を確保しようと思います」
「いいえ、でも、どこの会社だって、今は長時間労働を控えようという動きがあるはずですし、残業は習慣化しているだけなので、自分は入ったときから残業はしない人だというイメージを作れば、さほど苦しい思いをしなくても帰れると思います」
「はい・・」
「・・・・」
「・・・たしかに、認められなくなって悔しいという気持ちが強くて・・」
自分の気持ちを晴らすために転職しようとしていることに気づかせようとコーチングを組み立てました。
当事者は、常に自分のことで精一杯になります。コーチは、その気持ちを受容し承認しながらも、常に冷静に、客観的な立場で、社会的に考えるとどう見えるのか?と伝え、新たな考えを持つ視点を与えるという重要な役割を果たします。
厳しい意見を伝えるには勇気がいりますが、クライアントの良き理解者であり、良き支援者であるために、恐れず行動することが大切です。
コーチングは誰のためにすることでしょうか~コーチングを職場に導入し成功させる要素の一つ「自分の姿勢」~
そんな棚橋さんが、いつになく憮然とした表情で、コーチングのセッションをスタートさせました。
「ええ、私は長男なので、墓参りとか供養とか、それなりに家庭での役割もありますが、それを除けば、日ごろ読みたいと思っていた本を三冊、乱読ですが出来ましたしね。私は有意義に過ごせたと思います」
「うん・・。一つ厳しいことを申し上げてもいいですか? 棚橋さん、コーチングは誰のためにあると思いますか?」
「うん、そうですよね。この場合の相手とは『聞かれなかったので、言わなかっただけ』の彼ですか?」
「では、先ほどの言葉尻をつかむようで申し訳ないんですが、ご自分の目標が達成出来ないという気持ちについてはいかがですか?この場合、ご自分の評価を気にされた発言であると感じたのですが」
「本人の目標の達成を残念に思うのと、ご自分の評価を気にされるのとでは、コーチング姿勢が変わってくると感じますがいかがですか?」
「一つは、表情です。ご自分の目標が達成出来ないとき、いつもセッション中に見せる表情があります。でも、今日はいつもとは違った表情でした。あきらかに、自分の評価にこだわりをもたれているような表情でした。それをどんな・・と聴かれると、絵もうまくないし、お伝えするのは難しいので、勘弁してもらえますか?」
「うん、そうですね。目つきが悪いというか、怖いほど強く何かをにらんでいる。そんな感じではありました」
「今後に向けて、確認したいのですが、ご自分の目標の達成と、部下の支援との間に距離があるとき、棚橋さんが気をつけたほうがいいと思うことはなんですか?」
「そうですね。コーチングは相手の支援を目的に行うという基本を忘れないでいただければと思います。ところで、来週までの1週間の目標についてですが・・」
「そうですね。是非、実行してみてください」
損保会社の調査員としてキャリア三年の東さん~上司とのコミュニケーションミスがきっかけの転職~
東さんが、コーチングを知ったのは、Webの情報検索からで、藁にもすがりたい思いから、何か解決の方法がないかを探ったからだといいます。「1年目と二年目、そして現在と、東さんの中で何が変わったんでしょうか?」
唐突かな?と思いながらも、少しでも早く状況を把握するために、コーチは率直な質問を早い段階で投げかけました。
「二年前の春の定期異動です。女性なんです」
「今の上司。とてもすてきな人ですよ。結婚していらっしゃって、家事や育児と両立されている。女性にありがちな感情の起伏も激しくないし。キャリア・ウーマンって感じかしら。
でも、だから、すっごく近寄りがたいって言うか、別の世界の人って感じで私たちを見ている気がするんです。女性社員が固まっておしゃべりしていても、脇をスっと黙って通り過ぎられ、おしゃべりに加わることがない。
かといって、私たちに興味がないわけではなく、飲み会しようかとご自分から誘ってくださったりもします。
「たしかに、契約社員としては失格だと思います。ただ、上司は選べないから、あわない上司と出会った場合、どうしたらいいか、そんな経験もなかったので負けず嫌いがでたというか、自分だってそれぐらい報告して指示を仰がなくても出来るって小さな抵抗をしてみたというか、悪気はなかったんですけれどもね・・。
深く考えずに行動した結果が、正社員としての採用を見送られることにつながるとは思っていなくて・・・。取り返しのつかないことをしたなぁと、後悔でいっぱいです」
「残りの契約期間を少しでも楽しく働くために、もう一度、上司との関係をやり直してみたいんです。でも、どうしたら良いか分からなくて」
「いや、仲直りではないですね。信頼される部下となって、仕事をしてみたいです。彼女のように出来る女性になれたら良いですね」
「ええ、そうですね。ロールモデルとしてみればよかったんですね」
「うん・・・難しいですね、私への信頼感がないわけですからね。どうしたら信頼を取り戻せるのでしょうか?」
「うん・・・聴いたことはないですけど、自分が上司だったら、信頼しませんよ、こんな部下」
目標を立てても、実行に移せない。目標があるだけに、行動出来ずにいる自分を引け目に感じてしまう。
目標を立ててそれに向かって行動していく。そのために今の自分に不足していることは何か。それを克服する手段はあるのか。どんな方法で行うか。自分でそうするつもりがあるか。目標・ビジョンを考えて前に向いていくことは、とても大事なことです。しかし、時によっては、目標を修正して新たな目標に向かってすすむことも、選択肢の一つなのです。
今回の事例を読まれて、東さんが自分の非を認めることによって、十分にやり直すことが出来る。転職などそう簡単には出来ないのだから、今の会社でやり直すべきだ。私ならそうするし、私がコーチならそういう方向に導く自信があるとお考えの方もいらっしゃるでしょう。しかし、コーチの気持ちを押し付けるのがコーチングでしょうか。クライアントを支援するのがコーチの役目なのです。
この場合、「上司とのやり直し」に向けて支援するのもコーチングですし、「転職」に向けて支援するのもコーチングです。最終的にそれを決めるのは、クライアントである東さんだということです。
思い切って目標を変えることで、自信を取り戻した東さんは、新しい職場に馴染むまで、コーチングを続けようと決心しています。
ビジョンコーチングの重要性に気づいためがね屋さんのカリスマ店員~自己奮起力を高め、将来にむけてビジョンを立てる~
販売が天職だという仲野さん。彼は、その人の顔立ちや表情を引き立てる、人の個性にぴったりフィットするフレームを売るめがね屋さんの社員です。もちろん、度をあわせる腕も非常によく、彼の手にかかると、どんな人も、これが私?と疑いたくさえなるような魅力ある「めがねと人を出会わせるコーディネーター」として活躍しています。そんな彼が突然、職場を変わりたいと、相談に来たので、びっくりしながら、セッションにのぞみました。
「仲野さん、どんなことがあったんですか?」
事実を確認するために、まずは質問です。
「会社が合併して、相手先の会社の社長が新会社の社長になったんです。社長が変わって、経営方針が変わっちゃったんですよ。これまでは高級路線出来ましたが、『時代が変わったのに気づかない社長だったから、この会社は、うちに吸収されたのです』と、新しい社長の挨拶は、これまでの社長の仕事やり方を全部否定するような方向の話ばかりだったんです」
大きなため息をつきながら、仲野さんは話します。
「そんな就任の挨拶を聞いていて、僕は、この会社にこのままいてもいいのかなぁ・・という気持ちになってしまったんです。これまでの社長には、大変目をかけてもらっていたし、新しいフレームの輸入に成功して社長賞をもらったのも、社長の『自信もってやって来い!』という後押しがあったから出来たことであって、決して自分一人で出来たわけじゃないと思うんです」
「仲野さんは、社長の信頼を得られていたんですねぇ・・」
「吸収合併だから、僕たちの会社の社員は、これからどんどんリストラされるってうわさもあるし。僕なんか、一番最初に目をつけられますよね?前の社長にかわいがってもらっていたんだから・・・。なんだか、ますます気が滅入ってきちゃいます」
「私には、あなたの不安な気持ちも理解出来ます。が、このほんとうにリストラされるのでしょうか?」
「だって、私は社長からの信頼をいただいていた、いわば、子飼いの社員なんですよ。あの新社長の話しぶりでは、前の社長が敵だと言わんばかりなんですから・・」
「戦国時代のようですね。ちゃかしてごめんなさい。敵とか味方とか、そういう色分けをしている根拠を何か感じるのですか?」
「いいえ、別に根拠はありません。新社長の言葉から、私がそういうイメージをもっただけかもしれません。でも、私の直感は当たるんです」
「直感が当たるんですね。それでもそれは仲野さんの直感であって、根拠があるわけではないんですよね?」
「そうですね・・・根拠はありませんねぇ。でも、普通、ニュースなどを見ていると、吸収された側の社員が悲哀を味わうということになっていますよね。僕たちの会社が食われたんだから、やっぱり社員はリストラされるか、一生、役職にはつけないということじゃないでしょうかねぇ」
「仲野さんは、今回の企業合併をどのように考えておられるのですか?」
「会社の負けです。そして私自身の人生の敗北ですかねぇ。社長だったわけじゃないけど、会社のために、一生懸命働いてきたわけですからねぇ。それは、給料のためだったし、いつかは役員になって、この会社をもっと大きくしようと思ってやっていたことなわけで。その頃から考えたら、敗北ですよ。私の人生、もう終わりだな」
「そうですか・・。仲野さんの人生は敗北で終わってしまうという気持ちなんですね」
しばらく沈黙の時間の後、コーチは冷静に次の質問をしました。
「ところで仲野さん、仲野さんの人生を描きなおすとすると、どんなふうに描きなおすことが出来ると思いますか?」
「それは、タイムマシンにでも乗って後戻りするならということですか?そんなの無理ですよ。今の状況を認めないで、過去にさかのぼって人生を描きなおしことに何の意味があるんですか?私はそんな過去にこだわらずに、先のことを考えて転職しようと思っているんです」
語気を強めて反論する仲野さんに対して、
「いえ、過去のことにこだわって思い出に浸ったり、やり直せれば思うのではなく、人生を描きなおしてみるということはこの先の仲野さんの人生をどう設計するかということなのです。会社は吸収されて新しくなったんです。仲野さんの人生が仕事と切り離せないものであるなら、この変化をチャンスとして利用することを考えましょう。仲野さんの人生は終わったわけではなく、新しくなったんです」
と、コーチは穏やかに言いました。
「チャンスですか。なるほどそう考えることも出来ますね」
「そうなんですよ。変化はチャンスなんです。新しいことを考えるとしたらどうですか。この先楽しくなりませんか」
「確かにここから新しい人生が始まるわけですね。くよくよしていても始まりませんね。ここは一つこれから何をしていこうか五年先、十年先を見据えながら考えてみることにします」
「そのとおりです。五年先、十年先を見据えて今日から何をしようかと考えて、それを実行に移しましょう」
「コーチのおっしゃるとおりですね。五年先、十年先を見据えながら考えてみるだけではだめですね。今日からの実行が伴わないといけませんね」
「そうです。実行しましょう。しかし、一度に沢山のことをしようとすると無理も生じますので、あせらずじっくりと考え、考えがまとまったらすかさず行動することにされたらいかがでしょうか」
人は、予期しないことが身に起きると、自分の勝手な思い込みによって、自分の心に待ったをかけるかのごとく、行動することを放棄してしまうことがあります。そしてその思い込みは、しばしば全く論理的ではありません。
新しい事態ですから、ここで一度立ち止まって、どうしてこうなったのかと、原因を究明することは確かに大切なことですが、過去に原因を探しに行っても、その過去が変わるわけではありません。それよりも、むしろ、この変化をどう捉えて、目標の修正や人生のプランを描きなおすことを考えて、1日も早く行動し始めることが大切です。目標を立て、戦略を考え戦術を立てる。
縮こまっていないで自己奮起力を高めて行動する。行動した自分を自己承認しながら更に自己奮起力を高め、次に進む。
そうすることによってまた新しい未来が開けてくるわけです。意気消沈しているときこそ、将来に向けってビジョンを立て行動に移る、ビジョンコーチングが重要になります。
成果のないコーチング実践に転職を考え始めた地方公務員の吉田さん ~コーチとの成果の確認のあり方~
ところが、三ヶ月の成果を確認する時間を持つことによって、三ヶ月前となにも変わっていないどころか、職場の状況がますます悪くなっていることに気づいてしまいました。
吉田さんは、今後、このまま地方公務員でいても良いかどうか、いくらやっても人が動かないこんな職場にいてもいいんだろうか。自分の力が発揮出来るところはほかにあるのではないか、そう思い始めていました。
「わかりました。これからの三十分は吉田さんのためにあるのですから、吉田さんがお考えの転職をテーマにコーチングをすることにしましょう」
一気に話す吉田さんの言葉を、コーチは、丁寧に聞き取っていってくれました。時に鸚鵡返しをしたり、時に要約したりしながら、吉田さんの話の聞き役に徹してくれたので、吉田さんは一五分の間、胸のうちの全てを明かすことが出来ました。
ひと段落したところで、お互い一息つく時間を持ちました。その沈黙を破ったのはコーチで、「吉田さん、吉田さんの職場の風土を見直したいという熱い思いを、これまではどんな風に上司に伝えていましたか?」
あまりに唐突だったため、吉田さんは、すぐには答えることが出来ません。
なぜ、答えがまとまらないのか?吉田さんは、自分を自分で責め始めています。
そんな吉田さんの心が伝わったのかコーチは、「ゆっくり考えていいんですよ。待っています」と、やさしく伝えてくれました。
どういう目的でこの質問を受けたのか?
やがてコーチが、
「はい」
そんなやり取りでも、コーチは一向に感情的にならずに、普段どおり穏やかに言いました。
「はい。その通りです。あんな人達と仕事をするのはもうイヤなんです」
フィードバックは、大切ですが、あまり、そもそもはと出発点を明確にしすぎたり、目標を意識しすぎたり、進捗状況にだけ視点をあてると、相手のやる気が失われることもあるようですね。
働く目的がわからなくなった女性 ~転職について考える女性が仕事をする理由を考える~
今年限りで辞めようかどうしようか?迷ってのコーチングです。
「結局、去年から体質改善の注射も打たず終いでした」
たとえば、私が、買い物にいく時間を伝えてそれまでに、必要なものがあれば一緒に買ってきますよと声をかけても、そのときは、言わないでおいて、夫が食事しているときに、今日、由美さんが買い物に行ったのに、私のものを買ってきてくれなかったと言いつけているんです。
こういう理不尽な扱いを受けたくないから、家にずっといたくない。それだけは、はっきり今回の問題を考えていく上で感じました」
体調の悪い人へのコーチング~仕事中心に生きてきた若手女性社員。話したい思いを受け止める会話~
このままでは、自分がどこに流れ着くかが心配で・・とおっしゃる人材派遣会社のコーディネーター歴三年の今井さん。今回のセッションは、人生設計のお話です。今井さんは、金融系の特定派遣をしている人材派遣会社のコーディネート業務をしています。
マッチングの精度が高く、派遣先企業からも、スタッフからも信頼が厚く、この仕事は天職だと思って、少々の残業も、きついクレームの電話も、まったく気にせずに三年間、ただひたすら努力をしてきたと胸を張っておっしゃいます。
ところが、四年目にかかろうとしたこの夏、今井さんの身体に変調が起きたそうです。
三週間ほど頭が重い感覚が抜けず、思い切って心療内科を訪ねたら、「すこし会社を休んで、気分がリラックスする方法で休暇を過ごしてください」と言われてしまったそうです。
この場合のセッションは、組み立て方が難しく、今井さんのペースに合わせて今井さんの話したいことをしっかり聴きましょうという約束で、セッションをスタートさせました。
「今井さんが一番話したいことは何ですか?どんなことでもどうぞ」
「う~ん・・一番かどうか分かりませんが、私のこの身体、どうなっちゃったのか、それはとても不安です。この先、どうなるのか・・」
「身体がどうなるかが心配ですか?」
「そうですね。私の仕事をちゃんと変わりの人がやっているかも心配、スタッフの中に、新しい職場で仕事を始めたばかりの人がいて、電話かかってきているかもしれない。そんな時、私がいないなんて知ったら、裏切られたって思うかもしれない。クライアントに新しい人材を入れていただく提案をしていることも心配。途中で放り出したと思われないか?」
「たくさんの心配事がありますね。それらの仕事は、すべて自分で処理されてこられたの?」
「はい、営業さんは忙しいし。スタッフの面接は私が担当だから。一番、私がスタッフのことを知っているじゃないですか?だから、お仕事を紹介して、働いてもらうのが私の責任じゃないですか?そう思って一生懸命仕事をしてきました」
「たくさんの仕事をこなしたんですね・・尊敬します。どこからそのエネルギーが沸きあがるのでしょうねぇ」
「さぁ、みんなのためになりたいという衝動かな?」
「身体の中から力がわくっていう感じかしら」
「そうですね。この会社は、大学生のアルバイトでお世話になった派遣会社の仕事に興味をもってそのまま入社させてもらった会社でしょ。一緒に働いていたスタッフさんのところには、月に二回くらい、営業さんが来て楽しそうに話していた姿を見て、いいなぁと思ったのがきっかけですから、スタッフフォローが出来るコーディネーターになりたいと思っていたんです」
「それは、現状、どのくらい達成出来たと感じていますか?」
「80%は達成したと思いたいです。でも、派遣先と合わなくて三日でやめちゃうスタッフさんと電話で話す時とか、お仕事を紹介してもぜんぜんいい返事がもらえないことが続くと、この仕事をこのまま続けた先にどんな道が待っているのかな?と不安になります」
「今回の身体への信号は、そんな不安がサインを送ったんだろうか?」
「そうですかねぇ・・。キャリア・カウンセラーの資格をとって、スタッフさんのキャリア・ビジョンの設計をお手伝いしてきたんですけど、自分のビジョンって、描けているのかな?」
「十年は難しいかもしれないけど、五年先の自分は、やっぱり派遣で仕事していると思う?」
「うん、それが分からないんですよね。もっと何かがしたいわけでもない。でも、この会社でこのままでいいのかは分からない。急に、目標がなくなっちゃったんでしょうか?」
「そもそも、目標ってなんだったの?」
「う~ん・・目標というか、とにかくコーディネーターとして、スタッフさんとお仕事をうまくマッチングしたかったし、クライアントさんのために役に立ちたかったんです。でも、それが目標かと言われると、そうかもしれないし、そうでないかもしれない。わからないです」
「あまり、思いつめないほうがいいと思いますから、質問を変えてもいいですか?」
「はい」
「だれかに、今の気持ちを話されましたか?」
「上司とか?ですか」
「ええ、上司や、先輩、あるいは話しやすい誰かがいますか?」
「先輩とは時々話しますが、あまり自分の話はしませんでしたねぇ。スタッフのことを相談したり、クライアントとのことは相談したりしましたけど・・・」
「仕事の話が中心だったんですね?」
「そうですね。スタッフさんからみて、いいコーディネーターでなければって思っていましたから、全部の力を仕事に注いでいたかもしれません」
「新卒の頃から、コーディネート業務をしていたんでしたっけ?」
「そうです。最初は、仕事の内容も分からなくて困りましたけど、だから、キャリア・カウンセラーの資格もとって、勉強して。一生懸命だったから、あまり考えなかったけど、自分は、この先どんなふうに生きていくのかなぁ・・」
「うん、一番見つけたいのは、自分のこれからの生き方かしら?」
「そうですかねぇ・・スタッフさんには、キャリア・ビジョンをもってなんて言ってるけど、自分が一番、わかってなかったりして・・」
「今井さんは、コーディネーターが天職だと思っているんでしょう?」
「はい、そうです!ただね、こんなコーディネーターになりたいというはっきりしたイメージがなくなっちゃったんです」
「ロールモデルは?会社にいませんか?」
「うん・・先輩に一人、すっごくあこがれている人がいたんですが、その人、この間、自分の会社を立ち上げて、辞めていかれちゃったんです」
「身近にはいなくなった?」
「そうですね。新しい会社にお尋ねしてみようかな?でも、忙しいと悪いし・・」
「アポイントメントを取ってから伺ったらどうでしょうか?」
「そうですね、電話してみようかな?」
「どこへなら連絡出来ますか?」
「携帯、教えてもらっているので、変わってなければすぐに直接取れます」
「いつ先輩に連絡しましょうか?」
「あはは、この流れは、コーチング!明日のお昼ごろにします。休んでいてもスタッフさんからの電話が時々入るんですが、あまりない時間帯にします」
「やっぱり、スタッフとクライアントを行動の軸においていらっしゃる。まさしくプロですね」
「ありがとうございます。これから私、どこに行くのか、自分のことを考えてみます。とりあえず、先輩に明日のお昼、電話します」
少し明るい表情になって、今井さんはセッションを終えました。
このセッションが、身体や心に負担にならなかったか、心配ではありましたが、話を聴くプロに力を借りたいという希望であれば、セッションを持つことはかまわないと実感しました。
若手の先生と教頭先生の会話~コミュニケーションを考え直す~
中学校で数学を教えるようになって七年目。熱血先生として評判の横井先生、熱血ぶりにかげりが出ています。このごろの生徒の学力低下はひどいものであり、どうやって指導していけばいいのかと悩みの深い横井先生。近頃では、生徒がどんなことを考えているのか、自分のやり方に不満をもっていないか、ついていけないと考えているのではないかと思い出して生徒の言動のすべてが気に障るようになりました。
文武両道、数学の授業もクラブ活動のバスケットボールでの指導も熱心に行うことから学校の中でも有名な熱血先生でしたが、このごろでは、部活動の指導にも熱が入っていないように見受けられるようになっていました。熱血先生の極端な変わりように教頭の田中先生は心を痛めていました。
期末テストも終わり、珍しく部活動の指導を早めに終えた横井先生が、ひとり職員室にいたのを見計らって、教頭先生は横井先生の隣に腰を下ろしました。
「お疲れ様です、横井先生。このごろ、元気がないようで心配なんですが、何かあったのですか?」
と、何気ない世間話を始めるように、教頭先生は横井先生に話しかけました。
横井先生は、深いため息をつきながら「教頭先生、この前の期末テストの結果でも明らかなように、僕の教えている生徒たちの成績、惨憺たるモノなんです」と、横井先生は胸のうちを吐き出すように話し始めました。
「生徒たちはまじめに僕の授業は受けているんです。とても熱心だと思います。僕も、授業の進め方は工夫しています。でも、テストになると、皆、盛田先生の指導のクラスより成績が悪いんです。ある保護者からは、3者面談のときに、『指導力がたらないのでは?』と、露骨に指摘されてしまったし。どうしたらいいのかわからなくて・・・」
胸の中にずっとしまっていた荷物を降ろし始めた横井先生は、次から次へと話します。
「生徒たちは、普段、とても楽しげに授業を聞いてくれているんですが、問題を解けというと、『わからん』だの、『難しい』だのといって真剣に問題と向き合おうとしないんです。
時間がないから、どうしても、授業最後のほうに出す問題については、正解を出すまでの過程を板書し、ノートに写させて各自で勉強しておくようにと伝えるんです。
次の授業のとき、振り返りにと問題を扱うと、覚えているらしくそのときには出来るんですが、理解していないからかテストになって、応用問題にすると、まるっきりわかっていないようなんです。私は数学は暗記じゃなくて、順序立てて物事を考えていき、答えを導いていく過程が大事だと考えています。ところが生徒達は、暗記ものと捉えているらしく、少し応用を利かせるともう出来なくなってしまうのです。
例題をどんどんやらせて、解き方を暗記させていくのも一つの手なんでしょうけど、それでは数学を勉強する意味がないと思うんです。例えば、『分数の割算は逆さにしてかければいい』というテクニックを覚えるのではなく、どうして逆さにしてかけるのだろうかということを順序だって理解してもらいたいんです。ところが、生徒達には・・・・」
どうやら横井先生は深い悩みを抱えているようです。
教頭先生は黙って横井先生の話を聴いていましたが、横井先生の言葉が切れてから、十分に時間を空けて、穏やかに質問をしました。
「横井先生、よく話してくれましたね。私はとても嬉しく思います。同時に、あなたの悩みがとても深いことを感じています。少し時間をかけて、その問題の解決に向けて、横井先生を支援していきたいと思いますが、いかがでしょうか?」
「教頭先生、ありがとうございます。こんな話、だれにも相談出来ず悩んでいたんです。教師が授業のあり方で悩んでいることを人には知らせられなくて、どうしたらいいのか困っていたんです。思い切って教頭先生にお話してみました。ですから、校長や学年主任には黙っていてくださいね。もちろん、保護者の方にもです」
「横井先生のお気持ちはよくわかります。今日うかがったことは、横井先生と私の間だけの話としましょう」
「ところで横井先生、先生は、生徒たちにどうなって欲しいんでしょうか?」
「え?どうなって?そんなこと、考えたこともありませんでした。今考えますと少なくとも、自分の力で考えられるようになって欲しいと思いますんです。数学の魅力は、考えて答えを導き出すところにあります。
今の生徒は、すぐに解決の方法を知りたがる。答えと解き方を聴いて、ほんとうにそのとおりになるだろうか?と、結果だけを確認している。それでは、考える力はつかないと思うのです。だけど、カリキュラムの時間はめいっぱいで組まれているし、盛田先生のクラスに遅れてはならないし・・・。
そうなると、暗記させてでもいいから、カリキュラムどおり進めようと思ってしまいます。自分の〝そうあってほしいと〟いう気持ちとやっていることが矛盾しています」
「横井先生、一つ、今、私が感じていることを言ってもいいですか?」
前置きをしてから、教頭先生は言葉を続けました。
「横井先生は、ご自分の指導方法に生徒がついてこないと嘆いたり、盛田先生の指導結果と、ご自分の指導結果を比べて嘆いたりしておられる。その嘆きはそれぞれの生徒のしていることについてであって、自分のことではないですね。盛田先生とのことでも、盛田先生とご自分のことではないですね。生徒がしてくれないと嘆いているわけですね。
問題は、生徒側にある。生徒さえちゃんとしてくれさえすれば・・とお考えではないですか。だけれども、すべて他人任せな考えでは、何も解決しないと思うのです。解決をするために先生は、何が出来ますか?」
「え?!」と、再び横井先生は黙り込んでしまったまま、しばらく時間が過ぎました。それでも教頭先生は、じっと次の言葉を待ってくれているようです。
「教頭先生、明日まで待ってもらってもいいですか?もう一度、ゆっくり考えてみます」といった横井先生の眼に、ほんの少しですが力が入ったように感じた教頭先生は、「今後もこの問題を一緒に考えさせてください。横井先生、今日はどうもありがとう」と言って、職員室を後にしました。
教頭先生は、生徒とのコミュニケーションをよくするために、コーチングを学んでいましたが、馴れ合いにならないコミュニケーションを目指しているばかりでなく、先生とのコミュニケーションを図るためにも、スキルが活かせることに気づいて、職場で活かしているそうです。
若手の教員は、自分の行動を自分で評論する力は強いが、当事者として問題を受け止める力が弱いと感じているようです。
若手教員のモチベーションを向上させたり、悩みを聴いてあげられるよき先輩教員として、コーチングのスキルを活かしているとのことです。
営業に異動して悩んでいる清水さん~不平不満を提案に変える~
これまでは、技術開発員としてキャリアを積んでおり、会社からの異動辞令には「どうして?」という気持ち以外には感じることがなかったそうです。確かに、これまでも営業に同行して、お客様へのプレゼンテーションなどの際には、補足説明をし発注につなげるなど、売り上げ拡大に貢献していた実績はあります。
しかし、どちらかというと口も重いほうだし、人と話すのは苦手でそれだから人と話をしなくてもいい技術開発を仕事として選んだというような意識もあり、自分に営業など勤まるのだろうかととても悩んでいました。
そんな時、営業部長の都築さんに食事に誘われ、仕事のことでハッパをかけられるのはイヤダなと重い心を引きずりながらも、同行することにしました。
しかし、都築営業部長は、もともと人事部で長く社員教育に携わっていた人で、自分と同じように、営業との関連が薄い中での異動を受けた人ですが、営業にうつってからは、かつてないほどの高い成績をあげている社内で有名な人です。他部署から異動してきて、全く新しい仕事をきちんとこなされている都築さんから、何かしら自分のこれからのヒントでももらえれば無駄な時間になることはないな、そう思うことによって、なぜか清水さんにとって都築部長のお誘いはいやいや同行するということでもなくなりました。
三十分もじっくり話を聞いていただいたころでしょうか?都築部長は、穏やかに清水さんに質問をしました。
「会社は清水さんのことを適任だと考えて起用したわけです。もちろん、最初から全部出来るとは思っていません。次第にプロになられるだろうと思っているわけです。一方、清水さんはミスキャストだとおっしゃる。それでは清水さん、清水さんの今の不満を、提案として訴えるとすると、会社にどんなことが言えると思いますか?」
私は、部下の不平・不満を、提案に変えるスキルを持つことも、上司の役割だと思って、コーチングを勉強しています。もしも清水さんが自分の営業能力の不足を不安に感じていて、それが会社に対する不平・不満になっているのだとすれば、自分に必要な学習をして能力開発することを提案しますが、よろしいですか?私はそうやってきました。
清水さんは都築部長の話を真剣に聴くことによって何かを感じたそうです。
清水さんは自身の不平・不満と真っ向から向き合い、同時に部下の不平不満にも付き合う覚悟で、次の日に出社しました。
奥さん依存症の自転車屋さん~事業を続ける意志の揺らぎを他責にする経営者のモチベーションを上げる~
相談くださったのは、自営業歴五年の岩山さん。経営する自転車屋さんは、中学校が近くにあることから中学生御用達の店として、順調ですが、このままでは先行きが不安とのことでした。
「あらぁ、それは大変でしたね。女の子は? 大丈夫でしたか?」
「そうですか・・何よりでしたね」
「?口が重くなっちゃいましたね」
男性は、どちらかといえば、感情を扱うことが苦手です。自分の感情も、家族の感情も、出来れば触れたくないと思っているか、わからないから触れてはならないか?苦手だから触れないようにしているのかのいずれかです。
自分の人生は自分で設計し、自ら行動することによっていかようにも変化させることが出来る、そのためには、自分の感情に正直になることが大切であることに早く気づいて欲しいと願うばかりです。
職員のやる気なさに悩む介護団体の理事長さん~あれもこれもと問題の渦中にある当事者に、問題の数と優先順位を考えさせる~
高齢者を相手に、デイ・サービスと訪問介護所を経営する理事長の辻さん。このごろは、人手不足もあって、ヘルパーのやりくりに大変な毎日です。ついには、自分がサービスのためにお宅を訪問しなければならないという現実がやってきました。
ところが、現場に出てみると、「あらまぁ・・」と思うことだらけで、つい先日は、「あんたが毎日来てくれる人だったらいいのに・・・」と、お客様に言われてしまう始末。現実には、職員に払っている給料も少なく、そんな中でみんなのやる気を高めるためにどうしたらいいのかをテーマに上げた辻さんとセッションしました。
「はい、辻さん、こんにちは。ずいぶん、お疲れの様子ですが何かあったんですか?」
「ええ、この間も急に職員が休暇をとってしまって、私しかいなかったので、急遽、訪問介護に私が出向いたんです。出向いた先で、お客様から日ごろのサービスのあり方について、『メシがまずい』などと小言を言われてしまって、翌日、その職員の顔を見るなり、『あんたたち、ふだん、どんなお料理作ってきてるの?』と、怒鳴ってしまったんです。怒鳴らなければよかったと自己嫌悪もあるし、でも、ホントにどんな仕事をしているのか考えたら、怒らずにいられなくてネェ・・」
「朝から怒鳴ってしまったわけですか?」
「はい、出勤しておはようございますも言わなかったような気がします。職員も落ち込んだけど、私はもっと落ち込んだ気がします」
「落ち込むことが分かっていても、我慢が出来なかったのかしら?」
「はい、今思うと、もっと言いようがあったように思いますが・・」
「今、改めて考えてみて、その職員に、何を伝えたかったの?」
「急に休まれると困るということ、お客様が希望する料理が出来ていないこと。この二つは、事実ですから、すぐにでも改善して欲しいです」
「その二点を、冷静に話し合うために、辻さんが心がけることは何でしょうか?」
「まずは、ゆっくり時間を作ること。私も忙しいので、彼女たちが今話せる状態かどうかを確認しなくちゃと思いながらも、『ちょっと待った』が今は出来ていません」
「いつもは、ちょっと待ったをしながらコミュニケーションをとっているのですね?」
「はい、十分に待ってからしているつもりなんですけど・・」
「十分に待ってから話をする理由は?」
「うん、辞められないようにですけど・・」
「人手の変わりはすぐには見つからないものね」
「はい、そうなんです。見つかってもすぐにお客様と仲良くなれるわけではないし、職員同士の和も大切だし」
「そうですね。ご苦労がよく伝わってきます。でも、一方で、指示や命令を出さなければならないわけですね。現実として・・どんな工夫をしましょうか?」
「事務所は、人がいないときはあまりないんです。かといって、一回は、サービスを受けているお年寄りがどこかに必ずいますし・・」
「ないない、これもだめ、あれもだめ、という考えに戻ってしまいますね。場所を変える、時間を変える、この二つのポイント以外に、何か方法はないのかしら?」
「うん・・・まさか、車の中って言うわけにはいかないし。手紙は書いている時間がもったいないから、口で伝えたほうがいいでしょうし・・」
「ところで、どうしても、辻さん自身が言ったほうがいいのかしら?」
「え?・・副理事長でもいいのかなぁ・・」
「辻さんが、その職員だったとして、誰なら言われてもいい?」
「そうですね、やっぱり役職者でなければ、『何であんたに言われなきゃいけないの?』って思いますけど、理事長の私でなくてもいいかしら?」
「なるほど、理事長である辻さんじゃなくてもいい。それなら、誰ならいいのかな?」
「そうですね、訪問介護の職員は、リーダー制にしてあるから、リーダーでもいいかな?」
「そうですか、リーダーでもいい。では、リーダーさんとはいつ、話しますか?」
「リーダーも、現場には行っているわけですから、やはり、戻ってきた後かな?」
「本人にしても、リーダーにしても、戻った後のほうがいいわけですね」
「何を伝えたいんですか?ただ、小言を言われたという事実だけですか?」
「事実は事実として言って、私の気持ち、どうして欲しいとかこれは止めてほしいとか、そんなことかな?」
「それから?」
「うん・・・よくやっているという点も褒めてあげたい」
「褒めることと、小言を言われたという事実と、注意点を挙げるのかな?」
「はい、そうですね」
「それを、リーダーに伝えてもらうって感じかな?」
「そうですね。リーダーにまずは理解してもらって、間違いなく伝えてもらう」
「それが伝わると、職員はどんなふうに変わっていくんでしょうか?」
「うん・・行動がぴりっとしてくれたらいいな」
「なるほど、行動をぴりっとさせて欲しいのね?それから?」
「行動が変われば、お客さんの満足が高まって、職員も充実感が高まるんじゃないかな?」
「職員には、充実感を高めてもらいたいの?」
「給料がたくさん出せないから、どうしてもやる気が出ないんだと思う。だから給料を上げるわけにいかない以上、職員が自分自身でやりがいをもって仕事をしてもらうようにしないと、どんどん辞めていってしまうから・・」
「二つの視点があるようですね。給与の問題と、職員のやる気はリンクした問題だとは思いますが、だからと言って、いい加減な仕事をしているのではないか?と、辻さんが職員に意見をするのは、別の問題だと思うのですが、いかがでしょうか?」
「え?給料が安いから、やる気が出ないんじゃないでしょうか?」
「確かに、リンクした問題だと思います。でも、それとこれとを一緒に考えないほうがいいと思うのは、給料が多いから、少ないからやる気が出ないとか、行動が雑になっているというのは、辻さんの憶測でしかなく、事実かどうかわからないからです。
事実を元に、行動を改めてもらいたいのであれば、まずは、仕事を大雑把にしないで欲しいという辻さんの考えを、リーダーに理解してもらい、間違いなく第一線の職員に伝えてもらうことじゃないでしょうか?」
「・・・」
深く考え始めた辻さんを前に、コーチは辛抱強く、このセッションを続けました。
当事者は、問題を抱えると、ついつい、渦中にいるために、問題の本質さえ理解することが出来なくなってしまい、結果、ミスコミュニケーションを起こしてしまいます。
コーチは、冷静に、客観的にクライアントの問題を見つめることが出来るからこそ、的確なアドバイスや、考え方を提示することが出来ます。コーチングは、自分以外の目を持つことが出来ることも、魅力の一つではないか?と、改めて感じるセッションでした。
若い起業家へのコーチング~戦略を立て、実行する経営者の支援にコーチングが有効であることに気づく~
起業をめざす人が増えています。若い人の場合は、職業経験年数も浅く、経営や人材育成に関するコンサルティングと、これまでの職業経験をいかにつなぐか、あるいは、いかに次の問題を引き起こさせないようにするかという防衛のためのコーチングセッションをご紹介しましょう。
「こんにちは、長田さん」
「こんにちはコーチ、前回は、適切なコンサルテーション、ありがとうございました。ホント!助かりました」
「お役に立てて、嬉しく思います。企業にとって、情報管理は重要な問題ですよね。今回は、たまたま早く分かったから良かったですが、派遣社員の人が家に仕事を持ち帰って家で仕事をされていたわけですよね、その結果、もしも顧客データを流失させたらトンでもないことになっていましたね」
「はい、正社員でない人については、私はこれまで社員として人材派遣会社からの社員との付き合いしかありませんでした。これまでは、同じ社員という立場で付き合っていましたが、派遣社員とはいえ、仕事熱心な人は、仕事を家でするために情報を持って帰ることが現実にあるんだということを考えていなかったので、正直、派遣社員の人を見る目が甘かったなと感じました」
「なるほど、これまでは同じ立場の社員だから、人材派遣会社の社員の立場をしっかり認識していなかったということでしょうか?」
「ええ、そうですね。使ってみてはじめて分かったことは、彼らの不安定な立場が理解出来ていなかったことですね。しかし、だからといって、私には正社員の管理をするという役目があるわけですから、派遣の社員ばかりにかまうことも出来ず、難しい立場だなぁと思いました。すべての社員の一人ひとりを、それぞれ、個別に管理するなんて、自分には到底出来ないと思いましたね・・・」
「なるほどね、一人ひとりを、それぞれに個別に満足させようとするような管理は、大変だということを学ばれたわけですね」
「はい。派遣会社の社員だからとか、自分が雇った社員だからということで区別はしてはならないと思いますが、実際には、手が回りません。派遣会社の社員の管理は、出来れば派遣元にお願いして、自分の社員の管理にだけ全力投球させてもらえたら・・と思いました。その上、今回のように顧客データを持ち帰って、自宅で仕事しようという人が出たことは、嬉しい反面、そんな大事なというか、基本的なこともちゃんと説明出来てなかった自分を、責めてしまいました」
「辛かったですね・・。今回、派遣会社の社員は、どうして自宅で仕事をするしかないと、考えてしまったんでしょうか?」
「やはり、私が、厳しく期限を守ってくださいといったことに原因があると思っています。期限を守って仕事をするのは当たり前ですが、残業契約のない派遣社員には、仕事のボリュームが適切ではなかったのではないかと反省しています」
「なるほど、期限を最優先してしまって、働く時間と、作業内容のボリュームが一致していなかったということですね」
「はい、そうですね。残業が出来ないのに、期日を守れ守れじゃ、無理ですよね」
「今回の問題で学習したことは何ですか?」
「はい、働く時間と作業の内容と、ボリューム(量)とのバランスを図らないと、相手を追い詰めるということでしょうか?」
「なるほどね、バランスをとらないと、思わぬトラブルを引き起こすことになるということを学ばれたわけですね」
「はい、そうですね」
「そのボリュームをとるためには、どうしたらいいんでしょうか?」
「はい、まず、もう、自分ですべてを管理しようとすることはやめようと思います。正直いって出来ないということに気づきました」
「具体的にどうしますか?」
「はい、私の下にいる部下に派遣会社の社員の管理を任せることにしました」
「部下に、派遣会社の社員をまとめさせるために、気をつけたほうがいいことは何ですか?」
「先にも申しましたが、派遣会社の社員は、どんなに自分がいっぱいいっぱいであっても、弱音を吐くところがありません。だから、小まめにコミュニケーションをとってもらって、ガス抜きすることだと思います」
「なるほど、小まめにコミュニケーションをとることが重要な要素である。他には?」
「はい、社員と同じように目標を持たせて、1週間、四週間、三ヶ月、六ヶ月の目標と達成について、管理することだと思いました。1日、1日での勝負ではなく、ある程度、長い目で見た目標達成や満足度を高めることが大事だということに気づかされました」
「なるほどね、時間的なゆとりがないからこそ、部下に任せてもいいことは任せる、自分がしなければならないことは自分でするけれども、優先順位をつけながら仕事を進めるということを学習されたわけですね」
「そうですね。私は自分ひとりで仕事をしていた気がします。自分以外の人を信頼していなかったのかもしれませんね」
「それだけ、ご自身にゆとりがなかったのかもしれませんね」
「そうかもしれませんね・・・」
「今回は情報の流出を防げましたが、今後こんな危機感を味わうことがないようにするために、人材管理というか、育成に努めれば防げますか?」
「いいえ、それだけでは完全ではないでしょう・・しかし、完全に防ぐことをめざすよりも、完全でなかったときにどうするかを含めて、企業防衛について、真剣に考えておくべきだと言うことは学習しましたから、社内にPJを立ち上げようと思います」
「人を信じないということですか?」
「そこまでは極端に思っていませんが、どんな場合にも備えがあれば憂いなしと言うことでしょうかね?」
「なるほどね、管理システムだけでなく、育成の仕組みが出来ればいいですね」
「そうですね。それにしても、会社を立ち上げるだけで精一杯意だったのに、いきなり人の採用や教育、管理をしなければならないなんて、自分に本当にこの先出来るのか不安です」
「コーチである私は、引き続き長田さんの支援をさせていただきたいと思っていますが・・」
「ええ、もちろんです。こんなにたくさんのことを、一人でやろうなんて思わないほうがいい。何でもお任せ出来ることはお任せする。お任せする順番は、コーチと一緒に決めればいい。今回の問題を未然に防ぐことが出来たのは、偶然だったと思います。しかし、これからは、偶然を当てにせず、自力で解決したいと思います」
情報の漏洩は、身近に潜む問題の一つです。もちろん、これを防ぐことが出来たことは何より嬉しいことでしたが、会社経営にコーチングの必要性をひしひしと感じました。
歯科開業医コーチングにふれました~コーチングを体験して自己を見つめなおす~
勤務医としての経験を元に独立し、晴れて開業医となり最初は無我夢中で走っていました。このごろ、自分は技術者として患者さんの歯を治療する歯科医として活躍したかったのか、それとも歯科の経営者として行動したかったのかに迷いが出てしまいました。
「子供の患者って、どうしたら増えると思う?」など、日ごろ石川さんが考えていることを話したくなる質問ばかりをしてくるので、ついうっかり話してしまいそうになりました。
二代目社長の自立
わたしが暮らす愛知県にもいくつかの奇祭がありますが、「国府宮のはだか祭り」もその一つです。
男42歳厄男が神様のお使いとなって、無病息災などを司ると言うこのお祭り。神男に触れることができると、1年、無病息災で過ごせるというものですから、少しでも触れようとする皆さんにもみくちゃにされてたいへんです。
人生80年という長寿社会を迎える昨今では、男40歳は、まだまだ、人生の折り返し地点に立ったばかりの若造と扱われる時代。不惑の歳に何を思うのでしょうか?
また、時代の変遷に流されず、お祭りは、文化として脈々と生き続ける姿に触れるたびに、守ることの大切さと難しさに思いを巡らせます。さて、今回は、事業承継してまもない2代目若社長とのコーチングをご紹介しましょう。社長:「やっぱり、昨日の会議も乗っ取られました! しかも、言いたいことだけ30分ほど、機関銃のように話して、さっさと妹の家に、ご飯食べに行っちゃったもんですから、残された自分と社員は、『あれはなんやったんや?』と唖然としちゃって。会議を元に戻すのに大変でした」
コーチ:「あちゃぁ・・・やっぱり元に戻っちゃいましたね。残念に思います」社長:「でしょう?どうしたらいいですかねぇ・・・」
コーチ:「あまり、社長の心を先走って言葉にすることはよくないでしょうが、できれば、参加させたくないという感じですか?」社長:「いつも、はっきり代弁してくれて助かります。自分で言葉にするよりは、罪悪感をもちませんから」
コーチ:「でも、それもできない?」社長:「はい、あまり、何もかも取り上げたら、父親はどう生きたらいいかわからんくなるでしょう。これまで社業一筋でしたからね」
コーチ:「実際、そうなさったことがありましたね?」社長:「はい、でも、本当に元気がなくなって。だから、今は銀行関係の仕事は任せとるんですわ」
コーチ:「業務を分けるという考え方ですね?」社長:「でも、結局、毎日会社に来るから、古参の社員は、親父の言葉に従ってしまう」
コーチ:「お父様の件は、今、社長が社業を全うさせることと、どのくらい関係が深いのですか?」社長:「うん・・・関係があるようなないような・・・」
コーチ:「遠慮があるだけではないですか?」社長:「そうだといいんやけど・・・」
コーチ:「お父様は変わらないでしょう。これまで通り、これから先もずっと」社長:「だから、困るんだよなぁ」
コーチ :「社長業ってなんでしょう?」社長:「安定した経営をし、社員を養うこと」
コーチ :「なるほど。それを実現するためにお父様の意見が自分と違うことが大きな問題になる」社長:「大きな問題かなぁ?・・・」というところで、セッションは終了させました。2代目社長は、まだまだ、自分がどんな戦術で経営しようと考えているのか、自分の考えをまとめ切れていません。それを、目の前にいる人が原因だと思い込むことで、自分を安心させようとしているだけかもしれません。
日本を支えている中小企業の社長たち。しっかり自分を見つめて、社業繁栄のために、自分の考えをまとめて、自立してほしいなぁと思います。
自分の役割を認識させる
各地に大雪が降り積もっていますね。自然の営みに、人は無理に抵抗するよりも、それを受け入れ、したがっていこうとすると、生活の中に工夫が生まれます。そんな工夫をして楽しんでいる皆さん、どうぞご自身にありがとうを。頑張っているな!をどうぞ。
さて、今回は、自分の役割が理解できていない管理職とのコーチングを考えましょう。
専門的知識をもっていることが、逆に、いつまでも現場思考にさせているという上司。皆さんの周りにはいませんよね?
A氏:「いやぁ、ホントに毎日忙しくてねぇ・・いっぱいいっぱいです」
コーチ:「それはたいへんな毎日ですね」
A氏:「そうなんですよ。すっごく忙しくてたいへんなんですよねぇ」
コーチ:「具体的に、どんな忙しさがあるんですか?」
A氏:「そりゃぁ、もう、たくさんあるんです。例えば、現場で機械が止まるでしょ?そうしたら、僕は点検にいかなければならない」
コーチ:「係の社員はいらっしゃらないんですか?」
A氏:「いや、いますよ。でも・・・やっぱりわたしが確認しておかないと。また、同じ事故を起こして会社に損失を与えたくはないですからねぇ・・」
コーチ:「まぁ、そうかもしれませんが、それでご自身が忙しくなってしまうのであれば、部下の育成のためにも、お任せになられるのも一つの方法ではないですか?」
A氏:「理想は、部下が育ってくれて、任せることができることですかねぇ・・」
コーチ:「今、一番手放したい仕事はなんですか?」
A氏:「できれば全部・・と言いたいところですが、現状では難しいでしょう。現場の仕事は、自分がいなければ廻りませんから。よしんば任せたとして、責任は自分がとるわけですから、それ
なら、納得できるよう、自分が動くしかないです」
コーチ:「では、管理者としての自分の役割はどんな仕事をどんな順番でこなすことだと思いますか?」
A氏:「それは難しい質問ですね。毎日毎日、日々いろんな問題が発生するし。まぁ、管理者としての仕事は、ぼちぼちやっても遅れて取り返しがつかないことはなさそうだから、それが後回しにできるのかなぁ」
コーチ:「では、Aさんの上司は、Aさんにどんなことを期待して、管理者としたか、考えてみましょうか?」
A氏:「・・・・・・」
管理者がすべてリーダーだと考える必要はありませんが、A氏の職場では、リーダーであることも望んでいます。
リーダーは、チームのビジョンを描くという、他の人にはできない役割を与えてもらえます。
日々の業務を完全にこなすことは大切です。
しかし、リーダーにしかできない、ビジョンが描けないのであれば、
明日、危機に陥るかもしれないと言うリスクに備えておくことができないのであれば、それは、管理者と言えるのでしょうか?
A氏とのコーチングは、現在、自分の役割を認識させることをテーマに続けています。
価値を知る・・・的外れの上司の癇癪
さて、2011年のスタート、皆さんはどんなふうに切られていますか?
わたしは、1月1日の朝6時から、地元のFM放送で番組を持たせていただいている関係から、初日の出は、スタジオで生放送を進めながら見ることができた。そんな1年の始まりでした。
番組内でも紹介させていただきましたが、今年の仕事への信念は、
「より多くの方の内なる力を引き出すことに全力投球する」と掲げました。皆さんはどんな目標をお立てになりましたか?
そして、それはどうすれば達成できるのでしょうか?
毎日こつこつと、同じことを繰り返しているようですが、昨日よりは今日、今日よりは明日の仕事の結果に満足する。そんな誠実さの中に、目標の達成があるのではないでしょうか?
そして、その目標の達成は、次の目標への道しるべとなって、また、新たな目標が見つかる。イノベーションは、技術や産業だけの話だけではなく、自分の中にこそ見出せるものだと信じて・・・皆さん、楽しみながら、感謝しながら前進していきましょう。さて、今週は、入社以来初めての大型物件を受注した社員と上司のコーチングを取り上げてみました。
皆さんは、こんな新人に「かんしゃ(感謝)」ができますか?
それとも「かんしゃく(癇癪)」を起こしますか?部下:「ようやく、契約書いただけました!!」
(会社に戻ると大声で、チームの皆さんに報告がありました)
係長:「よかったなぁ・・・よくやったなぁ!!自分も嬉しいよ」部下:「ありがとうございます。ようやく契約書もらえましたが・・・」
係長:「もらえたけど・・? なんだ?」部下:「はぁ、でも、それは係長がお客さんに裏でネゴしてくれてたんでしょ? 俺、知ってるんです・・・」
係長:「それはそうだが・・・君の熱意が、自分を動かしたんだよ。どうにかしてやりたいという気持ちをさ、引き出したんだから、君のねばりがちだよ」部下:「でも・・・やっぱりこれは係長のおかげです。99%は係長の力です」
係長:「まぁ、そうかもしれんが、いいじゃないか。課長に追い込まれていただろ?今月も売れなきゃ、お前の席はないもんだと思えって。」部下:「そうなんですよね・・・ホント、係長ありがとうございました。まだまだ、自分、ぜんぜん力ないっすよね」
係長:「じゃぁ、ぜんぜん力がないとしたら、どうしたらつくと思う?」部下:「力なんて、そんなに簡単につくわけないじゃないですか?」
係長:「そりゃそうだが、何とか自力で売りたいんだろ?」部下:「そんなこと言ってないじゃないですか? 今後も、係長、面倒見てください。よろしくお願いします」
係長:「ん?? じゃ、君は、今日の商談が自分の力だけで決まったことが悔しくて落ち込んでたんじゃないのか?」部下:「はぁ・・・だから、そんなに急には力はつかないですって。それが今日までの商談でよくわかったから、係長にお礼を言おうと思ったんです」
係長:「・・・・・・」どこまでも、他力本願な部下を前に、係長は、営業の基本である「自分の価値づけ」をさせ、人としての魅力づくりから、指導をし直しているそうです。人間力をあげなければ、いくら提案力や解決力が着いたとしても、物が売れない。そう危機感を抱いたようです。ところで、このコーチングは残念ながら、上司と部下の価値観があまりに違うため、失敗に終わりました。
「二人のコーチングは、価値合わせをすることからやり直そう」。
部下とのコーチングに失敗し、危うく怒鳴り付けそうになったという係長と私のコーチングのテーマは、「価値を知る」と決めて、チャレンジ中です。
手を焼くよりも、工夫をする
わたしは、誕生月が12月と言うこともあって、1年の振り返りと、来年1年の計画を立てるのが、誕生日前後の習慣になりました。
前年12月に立てた目標項目さえ記憶にない・・・なんていうものもありますが、概ね、自分が描いたイメージに沿って時間が流れるようになりました。
来年からは、このブログの更新も、遅れることがないように・・
目標達成項目の1つに加えたことは、言うまでもありません。
と同時に、これに目を通していただく皆さんからの励ましによって、「人のために行動したい」というモチベーションが高まり、行動が左右されるという甘えん坊の特徴を生かして、皆さんからのメッセージによる励ましがいただけると、更に確実なものになると考えました。
どうぞ、皆さん、応援コメント、よろしくお願いします。さて、甘えた話はここまでにして、今週は、そんな甘えん坊社員とのコーチングを事例にしてみました。
手を焼くよりも、工夫をする。
人育ては、自分磨き。皆さんなら、どういうコーチングをするか、考えながら読み進めてくださいね。部下:「売上、できなかったら、また社長に激を飛ばされるんでしょうか?自分、正直、社長の熱さが苦手で・・」
係長:「まぁそういうなよ。社長は歯がゆいんだと思う。自分たちが数字さえ作れば、社長はもっと楽になれると思うんだが、何せ、経済が冷え込んでいるからなあぁ・・なんて、甘えてる場合じゃないし。ここ半年、予算達成できない月が多いからな。給料がもらえるのは、社長の熱さのおかげなんだし」部下:「そうですね。でも、もうちょっと冷静に言ってもらえると叱られてる気がして、何とかしなきゃと思うこともできるんですが」
係長:「感情が入るのは仕方ないさ。そのくらい、社長が怒ってるんだって思えるだろ?」部下:「そりゃぁそうですが、怒ったって売上できるわけじゃないし。もっと具体的に何が悪いか教えてもらえれば・・」
係長:「それは自分の役割だな・・部下の育成は管理者としての仕事の1つだからな。これからは、もっと具体的に注意するかなぁ」部下:「そんなぁ・・・」
係長:「ところで、自分、どうしたら売れるようになるんだろうなぁ。
お客様のところでは結構、話が続くようなのに、肝心なところになるとお客様の口が開かない。何か思い当たることはないかな?」部下:「そうですね・・・自分は一生懸命、自分の扱っている商品の話をしているだけなんです。でも、お客様は急に今日見なさそうに、途中で横向くんですよね。つまらないのかなぁ・・」
係長:「あのさ、君はお客様の話、どのくらい聞いてるんだろうなぁ」部下:「話、聞くんですか? 売るのは自分で、お客の話しなんて、聴く必要あるんですかね?」
係長:「そりゃ、ニーズがあるかないかわからないところで営業はしづらいんじゃないのか?」部下:「はぁ・・話し、聴くって何を聴けばいいんですか?」
係長:「どんな仕事をしているのか、どのくらいの社員数があるのか?
この商品を買っていただくためには、使って楽しい、嬉しい、便利になる、そういうイメージを描いてもらわなければ、売れるものも売れないんじゃないかな?」部下:「はぁ・・・どうやって聞けばいいんですか?マニュアルないし」
係長:「じゃぁ、練習するか?付き合うよ」部下:「はぁ、恥ずかしいなぁ・・」
係長:「みんな恥ずかしいけど、新人の頃はやるんだ。頑張ってみたらどうかな?」成長したいけれども、何をしたらよいか戸惑う思う新人。残念ながら、自分では何をどうしてよいかわからない。そんな時は、その状況を見ていた上司から声をかけて、モチベーションを上げさせることでやる気が高まることが多いようです。
今は、即戦力になる人材を好む傾向にありますが、最初からすべての仕事ができる新人はいません。ゆっくり、じっくり育てる楽しさを感じてみませんか?
人材採用に関するコーチング
今週は、セルフコーチングからスタートしましょう。ところで、先日来、正社員の採用に関するご相談をたくさん承っています。どのご相談も、学歴や職歴よりも「人柄がいちばん重要」ということでした。
仕事は教えればいい。
学歴は、学校卒業して長く経ってしまえば、参考程度にしかならない。だからこそ、採用が難しい・・と、頭を抱える経営者が多いようです。
今号は、そんな経営者の人材採用に関するコーチングを紹介しましょう。皆さんなら、どうしますか?コーチ:「新規正社員の募集ができるのは、応募者にとっては何よりのプレゼントですね」
経営者:「そうですかねぇ・・その割に、今一つピンとくる応募者がいないんですけど・・」コーチ:「なるほど、ピンとこないんですね?」
経営者:「なんかねぇ・・履歴書見るとたいがい、最初の会社に半年もいない。ひどいのになると、すごい大手のビッグネームなのに、1ヶ月しか続いていない。どういう神経してるのか?っ
て思っちゃいますよね?」コーチ:「長く続いている人が必要ですか?」
経営者:「そりゃぁ、コロコロ変わっている人は、うちもすぐに変わっちゃいそうで厭じゃないですか?」コーチ:「なるほど。コロコロ変わられては嫌なんですね?」
経営者:「だって、採用にはお金も時間もかけているんですからね。すぐに辞める様な人は採用したくないですよね」コーチ:「なるほど。では、どういう人が必要ですか?」
経営者:「どういう人?・・・」コーチ:「能力は何が必要ですか?」
経営者:「素直さかなぁ・・・熱意のある子もいいなぁ」コーチ:「素直さのある人、熱意のある人ですね。でも、それは人としての資質で、能力ではないですよね?能力は?」
経営者:「どんな子が向いていると思いますか?」コーチ:「それでは、どんな能力が必要か、言い換えるなら、どんな強みを持っている人を採用すると良いか、配属先の業務の洗い出しと、配属先の人と能力、資質の分析から始めてみません
か?」採用の不一致は、応募者側にも問題がありますが、実は、採用する側にも、問題があるものです。
どんな人材が必要なのか、じっくり考えてから、面接を始めることが大切です。経営者は、とかく近視眼的になりがちです。コーチが、冷静に、客観的に情報を分析して、時にはアドバイスを加えることによって、自分の考えを明確にする支援ができるものです。
思い込みを外し、具体的なイメージを描きやすくするためのコーチング、楽しんでくださいね。
「承認」の中でも扱いが難しい「叱る」について考えてみましょう
秋がゆっくりやってきたと思えば、すぐに紅葉のニュースが届くようになりました。相変わらず、人も季節も、忙しく時間が過ぎているようです。さて、今号からは、「承認」に焦点を当てて、考えていきましょう。
大人になると、人から褒められるチャンスは、とても少なくなりますね。
この前、人に褒められたのはいつですか?
それはだれからでしたか?
こう質問すると、ほとんどの人が「いやぁ~、褒められた記憶なんてこの頃にはないですねぇ・・」とおっしゃいます。
では、仕事をしている時間中、叱られたのはいつですか?
そう質問すると、「今も怒られたばっかりで、うんざりしていますよ」と、即座に答えが返ってくる、若いクライアントはたくさんいます。
承認=褒められることではありません。
叱られることも、承認です。
承認とは、相手の存在自体を受け入れ、認め合うことです。
だから、相手の成長を願って叱らなければならない時、タイミングを外さず叱る承認を恐れてはなりません。
ところで、タイミングが悪い叱り方の場合、部下はどう受け止めるでしょう。
成長を願うのは、上司としての心情ですが、それは部下にはなかなか伝わりません。
まして、タイミングを逃したら、逆効果になってしまうでしょう。
今号は、承認の中でも扱いが難しい「叱る」について、考えましょう。
事例)
A君「売れました!システム受注しました」
社内に戻り、直属の上司に嬉しそうに報告するA君。同じ課の皆さんも、拍手をしてA君の報告を聴きました。
そこへ、A君の指導をしている主任のBさんが戻ってきました。
Bさん「おい、おい、冗談じゃない。A君。君の今日の営業、あれな
んだよ?ぜんぜん、準備したとおりに勧められなかったじゃ
ないか?
一体全体、何を勉強したんだよ。勘弁してほしいよ。今日は、自分が一緒にいたから良かったけど、来月から、一人で営業に出るんだぞ。もっと勉強しないと、会社の名前に信用がなくなる」
A君「はぁ・・でも、今日の説明で、お客さんは何も言わなかったじゃないですか?B主任だって、今日は自分一人でやれって言ってくれたんで、思い切ってやったから、注文いただけたんじゃないんですか?」
Bさん「確かに、一人でやれと言ったし、自分はできる限り、今日は何も言わないようにして我慢したさ。だからと言って、あんな風に、何でもできます、やりますって・・お客をだますような営業、だれがやっていいって言った?」
A君「だましてなんかいません。あらかじめ、プログラマーにも聴いていたので、やれると言ったんですよ」
Bさん「やれるのはやれるけど、費用は見てもらわないと。せっかく有償で提供できるサービスも、全部、奉仕になっちゃった。プログラマーの作業量、考えないと・・」
A君:「はぁ・・・スイマセン・・・もっと勉強します」
A君は、この後、同僚や先輩に会うたびに、「せっかく売ったのに、怒られた・・」とこぼしたそうです。
Bさんは、おそらく、A君の初受注を目の当たりにできて、嬉しかったことでしょう。指導の甲斐があったと、自分を褒めたことでしょう。
しかし、同時に、今後の営業に課題があることを、強く感じたのではないでしょうか?
その、強い思いが先に、言葉に出てしまったのではないでしょうか?
事例)
A君「売れました!システム受注しました」
Bさん「初受注、嬉しいだろ?僕も嬉しいよ」
A君「ありがとうございます」
Bさん「これで、来月から一人で回ることに少し自信が持てたかな?」
A君「いやぁ、まだまだ不安がいっぱいです」
Bさん「それじゃぁ、自信がつくようにするために、今日の営業の進め方について、一緒に考えてみよう」
こんなふうに、A君のモチベーションと、嬉しい気持ちに配慮できたらどうなるでしょう・
皆さんがBさんなら、どんなコーチングを進めますか?
考えてみてくださいね。
質問のスキルアップ 2
今号では、行動を促す「質問」を考えましょう。
気づけてはいるのですが、行動できない。
そんな時は、行動するイメージができていない、あるいは、行動のための準備が整っていない、あるいは、目標そのものの設定に無理がある等、何らかの障害を抱えていることに気づかせる働きをもつ質問が必要になります。
質問されることによって、自分の心の奥底にある答えを導き出すことで、適切な次の1歩につなげることができるようさまざまな角度からの質問を作って、答えてもらうよう、働きかけてください。
事例)
新人A君:「係長、相談があるんですが・・・今、お時間よろしいですか?」
係 長:「もちろんいいよ。声のかけ方が、うまくなったね」
新人A君:「はぁ・・・そうですか?この間、叱られたので、覚えていました」
係 長:「わたしが叱ったかな? わたしじゃないんじゃないか?」
新人A君:「いえ、あの、係長ではなくて・・・主任のGさんに・・」
係 長:「ああ、G主任か。あの人、厳しいからねぇ」
新人A君:「いえ、あの、G主任が悪いわけではなく、僕が教わった通りにできないので・・」
係 長:「ところで、何の相談かな?」
新人A君:「あ、やっぱりいいです。僕が教わった通りにできないだけですから・・」
係 長:「?? いいのかな?」
新人A君:「はぁ、やっぱり・・僕って、何回怒られても覚えられなくて。物覚え悪いだけですね」
コーチングのスキルを覚えたばかりのころに陥りがちな事例です。
部下に声をかけられたら、とりあえず褒めなければならないという配慮から、部下の成長点を認めようと目についたことを褒めてみる。ところが、褒められた方は、褒められても納得しているわけではないし、自分が思ってもいなかったことを言われ、戸惑うばかりか、抱えている問題の答えは、「やっぱり自分に悪いところがあるんだ!」と思うことで自己納得をしてしまい、本題に入る前に自己解決してしまったという事例です。
相手の様子をうかがいながら、本題に入る前に話しやすい環境を作る目的のため、手段としてアイスブレイクするのは構いませんが、この事例のように、本題に入れず完結してしまったら、コーチングの本来の機能を果たせず、コミュニケーションは終了してしまいます。
相手の様子が深刻であれば、すぐに本題に入れるよう、会話の組み立てを工夫してみましょう。
事例)
新人A君:「係長、相談があるんですが・・・今、お時間よろしいですか?」
係 長:「もちろんいいよ。どうしましたか?」
新人A君:「はい、先日主任のGさんから、何度も同じことを言わせるな!と、叱られてしまったんです。自分では、十分注意したように思うんですが・・・」
係 長:「自分では注意したのに、G主任から叱られたんだね?」
新人A君:「はい・・・かなり落ち込んで・・やる気が出ないので、余計にG主任に怒られるし、わたしはどうしたらいいんでしょうか?」
係 長:「君が今、いちばん嫌なことはなんだろう?」
新人A君:「いちばん嫌なことですか? そうですね、G主任に怒られることかなぁ」
係 長:「そのほかには?」
新人A君:「そのほかですか?」
係 長:「そう、怒られることだけが嫌なんだろうか?」
新人A君:「はぁ・・実は、わたしは今の自分の姿が嫌いです」
係 長:「今の姿?落ち込んでいる姿が嫌い?」
新人A君:「はい、こんなことで落ち込んでどうする。自分の仕事をしっかりやろう!と、自分を励ましても、やる気が出なくて・・。G主任を見かけるだけで、胃の奥が苦くなるような気がするし」
係 長:「自分が、G主任から逃げてるように思うのかな?」
新人A君:「はぁ、そんな感じです」
係 長:「どうなりたい?」
新人A君:「すっきりしたい・・・というか、仕事でミスをなくすようにするためにどうしたらいいか、それが問題ですよね?」
係 長:「君は、自分の課題が何であるかも理解している。だけど、それでも体が動かないのに苛立っている。自分が自分らしく働く姿はイメージできているのか
な?」
新人A君:「実は、あまりイメージできなくなっています」
係 長:「急がずに、イメージしてみたらどうかな? ちょっと忙しく考えすぎているように思うよ。これから、私も協力するから、半年後出来るようになりたい仕事を考えてみよう。今日は悪いが、この後会議がある。続きは明日でもいいかな?」
もやもやしている新人A君の悩みが深いだけに、1度の相談では終われません。そんな時は、時間をおくことも必要です。
質問のスキルアップ 1
「質問」のスキルは、相手の「気づき」を促すもっとも重要なものの1つですが、皆さん、苦手とされるようです。
なぜ、質問のスキルが高いことが望まれるのでしょうか?
人材育成や自己成長に「考えさせる」ことの重要性が高いと言われる所以はどこにあるのでしょか?
自分で考えて答えることは、自分が望んでいることが何か、自分自身の答えを探ることであるわけで、望む通りに実行させることによってモチベーションは維持できるでしょうし、自ら望んで行動したことを果たせた時の充実感や達成感は、自己信頼を高めることに大きく寄与することになり、次もまた頑張りたいというモチベーションの正の作用を生むとされるからです。
しかし、人は常に自分のしたいことを正確に理解しているわけではなりません。
潜在的な欲求として持っている自分の考えが、わからなくなってしまっている、あるいは、持っていることにさえ気づかずにいることが多いのです。
上司や先輩の言う通りに仕事ができることは、ある一定のキャリアまでは大切です。
しかし、いつまでも、新入社員ではない訳ですし、現代社会のように一人ひとりの価値観が違い、情報が氾濫し、取捨選択が困難な時代こそ、現場の一人ひとりが会社を支えることが求められる以上、自分で考え答えを出さざるをえません。しかし、いくら一人ひとりが考え、その考えから判断した結果の行動が望まれたとしても、勝手に独走して良いということではありません。
企業理念に基づいて、同じ方向を見定めて進んでいることを確認する必要があるのです。
その確認のツールとしても、また、考えを十分に引き出すためにも、この質問のスキルは、承認スキルと同じくらい大切にして、十分皆さんがトレーニングを積み、同僚や上司さえも考えさせ行動させるよう、刺激を与えられるようになりましょう。
事例)
出勤した部下の表情が、冴えない時(観察の結果から会話を組み立てます)
質問者:「君は今朝、どんな気持ちで迎えましたか?」
(選択肢のない質問)
部 下:「はぁ・・相変わらず暑いなぁ~っと思いました」
質問者:「その暑さは、あなたにどんなふうに作用しますか?」
(深く掘り下げ、本質を引き出す)
部 下:「やる気を失わせます」
質問者:「なるほど、やる気を失わせるんだね。
(評価せず、本人の答えを復唱します)
では、どうしたらその失いがちなやる気を高めることができるかな?」
(対策を自分で考えさせるきっかけを作る 意図的になりすぎないように配慮)
部 下:「暑くなければ、多少は上がると思います」
質問者:「暑いというのは、気温・室温ということですか?」
(確認のための質問はシンプルに)
部 下:「はい、部屋の温度を少し下げてはいかがでしょうか?」
質問者:「他の女の子たちへの配慮はどうしようか?」
(自分だけのことを考えさせない)
部 下:「はぁ・・・我慢してもらうかなぁ?」
質問者:「抵抗が大きい気がするな。他にどんなことができるだろう」
(答えは1つではないことに気づいてもらうために、別の選択肢を考えさせる)
部 下:「他に?ですか・・・」
質問者:「例えば、扇風機を回すとか」
(提案も、質問になる)
部 下:「そうですね。自分の傍に扇風機をおいてそれで空気を攪拌しましょう」
質問者:「そうしたら、どんな仕事が進むかな?」
(具体的な行動をイメージさせる)
部 下:「いやぁ、実は・・見積もり出さなければならないのが2社ほどたまっているので、それを今日中に仕上げます」
質問者:「わかりました。では、わたしは、扇風機を探してきましょう」
日常の会話をコーチングにするヒント
係長:「あ~あ~、また0ですか?! いったい何してるんですかねぇ。他の皆は、6時間で成果がでて
るんだから、経済が悪化してるから売れないんじゃないんだよ。君の売り方が悪いんだよ!」
部下:「はぁ、あの・・・努力はしてるんですが」
係長:「結果がすべてだろ!営業が、0ですって報告して、何が努力だ、聞いて呆れる」
部下:「でも、今日もいつもどおり、訪問先のお客さんと話はできたんです。40分ほど、話して、いつも
の通り、うちの商品の良さを説明しました!」
係長:「だからどうした?話して売れないなら、君の能力が足らないってことだろう!なおダメなんじゃ
ないか?」
部下:「はぁ・・・すいません・・・」いつもと同じ行動、いつもと同じ時間の使い方。いつもと同じ道を通り、いつもと同じ成果に終わる。
どうして人は、「いつもと同じ」ことを選択するのでしょうか?
今号は、そんな「いつも」からの脱出を促すことを考えてみましょう。もちろん、いつもと同じ行動を起こすことが悪いのではありません。
しかし、いつもと同じことをしていて、満足感や充実感が高まらないのであれば、行動を変えてみて、結果を変える必要があります。
ところが、自分ではどう変化を起こしたら、自分の望む結果が出るのか見当もつかず、またいつの間にか同じ行動に戻ってしまうことになったことはありませんか?人は、自分の経験を頼りに思考を巡らせます。
経験のないことにチャレンジしようと、脳は自然にはメッセージを送りません。
だからこそ、職場にも、家庭にも、社会にも、身近なところにコーチングの能力を身に備えた人が必要なのです。コーチは、いろいろな面で、クライアント(相手)の考えを眺めることができます。
なぜなら、支援者だからです。
クライアントの(相手の)思考の穴を埋めたり、違う方向から見つめることができるから、質問をすることができるのです。
また、クライアント(相手)がきづかぬうちに望むものや、すでにある答えに気づかせるための関わりを持つことができましたよね?コーチングは、構えてすることもできますが、日常のあらゆるシーンにおいて、自然体でできるようになることがいちばん!です。
いつもと同じ行動を繰り返して、「あ~あ」とため息漏らす人が周りにいたら・・・ぜひ、コーチングしてみてくださいね。
クレームは、業務改善の種。大事に育てましょう
今号は、そんなやり取りを通して、コーチングを考えてみましょう。課長:「すいません、クレームになりました。社長があれほど力を入れられた新商品だった
のに、申し訳ないです」
社長:「なにぃ?どこが悪いってんだ?」
課長:「はい! 昨日、納品しようと思って点検していましたら、表面の磨きが足りないと
ころがあって、気になって修正させたんですが、やはりお客様から指摘されてしまっ
て・・」
社長:「あの商品は、輝きの素晴らしさが特徴の1つだと説明したはずだ!なんで、磨き残
しなんかに気づけなかったんだ?」
課長:「はぁ、あの~その前の成型のときから、すでに工程に遅れが出てまして、修正しよ
うと思ったんですが」
社長:「思うだけで仕事が進めば、俺は苦労はせん!誰のところで遅れが出たんだ?」
課長:「はい! 社長、社員には私からよく話をして、改善計画を出しますので、今はクレ
ームの処理をさせてください」
社長:「クレームの処理はもちろんだが、誰のところで止まったかわからんじゃぁ、改善の
しようがないだろうがぁ!」
課長:「はい、この件は、わたしも含めて、全員が少しずつ、改善することが望まれますの
で・・」
社長:「で、誰が怠けたんだ?」
課長:「・・・・」どこの現場でも、聞こえてきそうな会話ですね。
この二人の思いは、おそらく一緒のはずです。
ゴールは、「良い商品を納品させたい」ということだと思います。
しかし、二人は立場が違うので、ゴールの見方と、ゴールの目指し方が違うのです。
だから、同じゴールを目指していても、会話が成立しないのです。
社長は、しくみに問題があるなら、それを最優先に解決することによって、次のロットからすぐに商品の完成度を安定させたいので、原因となった人を特定して、その仕事への適性があるかどうかを判断したいのでしょう。
そして、人を入れ替えてでも、すぐに体制を整え直した中で仕上げたものと入れ替えることで、クレームの処理だけでなく、お客様の満足を高めたいということなのでしょう。課長は、人を特定するような犯人探しは、社員のモチベーションが下がるだけで、仕組み全体を見直すことによって、チームワークを高めて商品の完成度を上げて安定させたいと考えるのでしょう。また、このクレームの処理を優先させることが最重要事項だと考えてるのでしょう。人は、他者の立場に身を置いて、物事を考えることが大切であることを知りながら、本当の意味で、立場を入れ替えたり、その人の思考を真似たりすることができない限り、相手の立場になって考えることはできません。
コーチは、そんな二人の思いを、それぞれ、整理して自分の思いに気づかせることができます。
お互いの会話が平行線のまま続くのであれば、ぜひ、コーチを探してみてください。
コミュニケーションの障害は、価値観の違いだけで起こるものではありません。立場の違いによる考えの差も、十分に理由になることに、コーチである皆さん、気づかせてあげてくださいね。