コーチングスキルとは
コーチングとは、「人は無限の可能性をもっている」「その人が必要とする答えはその人のなかにある」「その答えに気付くためにはサポートが必要である」この3つを基本にして、人には達成したいと思う気持ちや目標があり、その目標を、自ら決めた方法で積極的に素早く達成することができるように、個人的な特性と強みを活かし、その人が本来もっている能力と可能性を最大限に発揮することを目的として、自ら考えさせ、行動を促すために、相手の取るべき手段を引き出すコミュニケーションサポートのことをいいます。 「人は無限の可能性をもっている」「その人が必要とする答えはその人のなかにある」わけですが、それだからといって、「答えはあなたが持っている、あなたは出来る人なのだから、どうすればいいか自分で考えなさい」とつき話してしまえばいいというわけではありません。もちろん、それでも答えは導き出せるでしょう。コーチはコーチングを行うことによって、相手が望む目標をより早く、より多く達成できるようサポートしていく わけです。 コーチングを行う際に、コーチが使用するスキルをコーチングスキルといいます。コーチは決して指導しません、クライアントが答えに自ら気づくようにサポート(支援)していくわけです。クライアントが「自分は無限の可能性をもっている」「自分が必要とする答えは自分のなかにある」「コーチのサポートにより、その答えに気付くことが出来る」とクライアント自身で自覚し、次の行動にまで落とし込んでいくことをコーチとしてサポートするのです。 「クライアントが自分で気づく」ということが、重要です。コーチとクライアントと間に良好な信頼関係が保たれ、クライアントが自分の能力に自信を持ち、自分の持っている答えに到達していくことが、コーチングの目的です。 そのために、コーチングスキルが重要なものとなります。 |
コーチングの3大スキル
コーチングとは、クライアントがコーチとのやり取りの中で、クライアント自身が状況を正確に把握し、自分の把握した状況に対してとるべき的確な対応を認識し行動につなげていくことが出来るように仕向けていくために行われるコミュニケーションです。 コーチングにおける主役は、コーチではなくクライアントです。 コーチはあくまでもクライアントの答え(取るべき行動)に対する気づきを促すサポート役となります。クライアントの答え(取るべき行動)に対する気づきを促すために重要になるのが、コーチとしてクライアントに自分の思っていること、感じていることを何でも話してもらい、それに対して予断を持たずに聴く(1)傾聴のスキル、クライアントの現状や考え方等に対してそれを認めていく(2)承認のスキル、クライアントが自ら考えて答えを導き出せるように仕向けていくような質問を行う(3)質問のスキル、この3大スキルです。コーチはクライアントとのやり取りの中で、この3大スキルを使いながら、的確なコミュニケーションをとることによって、クライアントが望む目標をより早く、より多く達成できるようサポートしていくのです。 |
傾聴:コーチングを知る
来談者中心療法(ロジャース理論)(Client-centered Therapy)
ロジャースの学説「来談者中心療法」の核心は、「人は誰でも自らの内部に、自己を成長させ、実現させる力(growth drive)を持っている」という考え方であり、カウンセラーが複雑な精神分析的理論に従って、クライアントの話を解釈したり、分析したり、指示を与えるよりも、クライアントの気持ちを受容し、共感的に理解することによって、クライアントは、自ら立ち直っていくことが可能であると考えています。 従って、カウンセラーの役目は、言語的および非言語的コミュニケーションを通じて、クライアントの自主的な問題解決や人格(パーソナリティー)の成長・発達を促進する援助活動にあるとしています。 カウンセラーとクラインアントの関係について、開発された来談者中心療法は、人と人との関係についての最も適切な理論として、実践されてきたものです。このことは、コーチとクライアントとの関係においても同様に適切な理論として実践されています。この来談者中心療法の実践に使われているのが積極的傾聴技法です。 |
「きく」ことには、3種類あります
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- 1.訊く(ask):
- 尋ねる。尋問する。
訊き手がひたすら質問します。
訊き手の訊きたい答えを訊き出すために、訊き手が話し手を追いこむようにする姿勢です。
聞きたいことをあらかじめメモにしてそれにそって訊く場合もあります。
話し手の気持ちなどどうでもいい、訊き手が訊きたいことを訊けばそれでおしまいとなります。
刑事ドラマの取調室の状況。裏づけをとるために訊きます。
- 2.聞く(hear):
- 聞こえる。
「聞く」というのは、相手の声や言葉が聞こえてくるということで、「音声として耳に入ってくる」ことをさします。
聞き手が自分の都合のいいところだけ聞いています。
聞き手の都合の悪いことについては、聞こえていても聞いていない(「うわのそら」状態)のです。
聞き手の聞きたい答えだけを選別して聞いているのです。
「門」の中に、「耳」が入っています。聞くだけ聞いたら門を閉めてしまう。その後は聞かないのです。
人の噂話、興味があれば聞いているが興味がなければ聞いていません。
電車・バスでの次の駅のアナウンス、自分の降りる駅がわかっていれば聞こえていても聞き流しています。
- 3.聴く(listen):
- 積極的に耳を傾けて、話しを聴く。(積極的傾聴)
話し手のそのうちにある感情や情感を聴きます。
話し手は自分の気持ちをできる限り正確につかみ、表現しようと努力するようになります。
「聴く」というのは、相手の言葉を聴き、「心の内面をとらえようとすること」と定義されています。
「耳を傾けて十四の心で聴く」ということです。
電車・バスでの次の駅のアナウンス、自分の降りる駅がわかっていなければ一生懸命聴いています。
相手の立場に立った聴き方
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傾聴の重要性とスキル:コーチングを知る
傾聴がコーチングの基本
コーチングを行うには、まずクライアントが何を考えており、どうしたいと思っているのかを聞き出すことからはじめます。 クライアントの心の中に隠れているもの、潜在しているものを、顕在化するのがコーチングです。 しかも、それはコーチが教えるのではなく、クライアントが自ら気付くのを援助する行為です。そのために「傾聴」が重要になるのです。「傾聴」はコーチのために行うのではなく、クライアントのために行うものです。それゆえ、コーチの心構えとして「あなたが私に聴いてもらいたいことを全てなんでも聴きます」ということが言われるのです。 |
傾聴スキル
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傾聴される側、聴き手の心理:コーチングを知る
傾聴される側、傾聴してもらえないときの心理
傾聴してもらえていないと感じたら、話し手は、「話しをしても無駄。もう話しをしない。適当に話せば言い。冗談じゃない、反応のない人に話すほど暇じゃない。馬鹿にするな、人の話をちゃんと聞け」などと思ってしまい、一刻も早くこの場を立ち去ろうと思うものです。 話し手は聞き手が聞いてくれていて、それに対してどんな反応を示すか、どんな意見を持っているかを聞いて、自分の考えていることの正当性を確認したいのです。自分ひとりが一方的にしゃべっていて、聞き手が無反応、無視されていると感じたのでは、聞き手に対して話しをする意味・価値を見出すことができません。 |
聴き手の心理
「聴くこと」には三つのレベルがあります。
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傾聴不調時の対応:コーチングを知る
「傾聴」の不調はなぜおこるか
コーチングはコミュニケーションサポートであると言われています。コーチングが上手くいかないことの根本原因がここにあります。一般的に、コーチングは上司から部下に向けて行われます。 従来の指示命令型の一方向のコミュニケーションに慣らされた「上司」「部下」の間で、急に双方向のコミュニケーションであるコーチングを始めても有効に機能しないのは、自明のことです。 |
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「傾聴」不調への原因
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「傾聴」不調への対応
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「傾聴」を効果的なものにするために
「傾聴」を効果あるものにするためには、ポジションパワーによる「傾聴」(聴いてやるとの態度)ではなく、人間性豊かなパーソナルパワー(何でも聴いてあげる)による「傾聴」を心がけるようにすることが必要です。 「傾聴」を心がけているのに上司の行動が部下に受け入れられないとするならば、その上司は日ごろからポジションパワーでリーダーシップを発揮しているからです。ポジションパワーはその地位についていれば、必ず身についているパワーです。自分は決してポジションパワーを使って、部下に接していないと思っていても、人間的魅力パーソナルパワーを備えていない上司に対する部下の対応は、上司のポジションパワーを意識したものにすぎないのです。 自分の地位をよりどころにして発揮しているリーダーシップ=ポジションパワーによって、「指示」をだしている上司が行う「傾聴」行動は、同様にポジションパワーでもって行われているのです。上司がポジションパワーで「傾聴」していると気づいた部下は、自分のためになることとして「話し」などをしません。 「傾聴」とはコーチがクライアントのために行うことであり、コーチの自分のために行うことではありません。 そしてクライアントもクライアント自身のためにコーチが「傾聴」していると気づいていて始めて「傾聴」が効果的なものとなるのです。「傾聴」している意味をコーチとクライアントの双方が認識できたとき、はじめて人が人とホンネで話し合えるのです。そして、お互いが相手のことをひとりの人間として認めるのです。このことはビジネスの場におけるコーチングはもちろんのこと、日常生活の場においても同様のことです。「親」だから・・・、「先生」だから・・・では、通用しないのです。 |
承認:コーチングを知る
「承認」の意味
承認とは対象物を認めることです。 |
コーチングにおける「承認」
クライアントの行動・考え・発言を認め、指示することと定義されています。 つまり、「承認」とは、クライアントの全てを認める、その存在すら認めるということです。 そしてコーチがクライアントを「承認」していることを、口に出してクライアントに伝える行為です。 「承認」とはクライアントのいいところを見つけて、ほめることであると言われます。 たしかにほめられるといい気持ちになり、モチベーションがあがるものです。そして、けなされるといっぺんにやる気を失うのが人間の常です。 それゆえ「豚もおだてりゃ木に登る。河童もけなせば溺れ死ぬ。」などと、ほめることの大事さを言われるのです。 たしかに、「承認」とは、相手を「ほめる」ことにはちがいありません。しかしながら、ほめて、おだてたらそれでいいのかというと、そうではありません。コーチングの「ほめる」とは「相手の存在を認めた上でほめる」というところがポイントとなります。つまり「承認」とは、単なる結果をほめるのではなく、相手の存在を認めた上で、その成長や変化をほめるのです。そのためには、その人の以前の行動や発言、役割などを覚えておかなければなりません。そうでないと成長や変化というものがわからないからです。 |
承認の重要性とスキル:コーチングを知る
「承認」の方法
「承認」とは、結果だけではなくその過程・成長度合いを認めるのです。コーチから結果だけではなくそれに至る過程・成長度合いを認められることによって、クライアントは自らの考え・行動に自信をもち、自発的に成長していくのです。 思考・行動と結果の因果関係には、4つのパターンがあります。「承認」の考え方により、「承認」される状況が異なります。コーチングでは、結果だけではなく、その過程にも注目して「承認」します。
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「承認」のスキル
「承認」のスキルには、メッセージの主体別に「YOUメッセージ」「Iメッセージ」「WEメッセージ」の3種類があります。
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承認される側の心理
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「承認」の10ポイント
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承認不調時の対応:コーチングを知る
「承認」の不調はなぜおこるか
クライアントが持っている「すばらしいもの」にコーチとして気づいたら、コーチは「承認」のスキルを使って、クライアント自身が自分の持っている「すばらしいもの」に気付くことを支援するのです。=プラス方向での「承認」です。「ほめる」ということがこれにあたります。 また、コーチとして、クライアントの「変えたほうがいいこと」に気づいたら、それについてもコーチとしては「承認」のスキルを使って、クライアント自身が自分で「変えたほうがいいこと」に気付くことを支援するのです。=プラス方向に向けるためのマイナス方向での「承認」です。「叱る」ということがこれにあたります。 「承認」の不調は、「承認」の意味を単純に「ほめればいい」ということと理解していることから生じていることが多いものです。クライアントに自発的行動を促すことがコーチングの目的であり、そのためにはクライアントにとにかくいい気持ちで前向きな人間になってもらいたいと考えているコーチは、相手を「ほめる」ことを重要視し、「承認」を行い、その不調に首をかしげるのです。「承認」を行うことは、決して間違っていない、「承認」のスキルの使い方がまちがっているだけです。 今までの厳しい自分というものの反省から、急にやさしい、物分りのいい、人をほめるコーチへと変わらなければいけないと手のひらを返すように、相手を「ほめちぎる」ことをすることが問題なのです。たしかに相手を「ほめる」ことは、「承認」の重要な要素であるが、相手を「ほめる」ことは「あまやかすこと」、「増長させること」とは違うのです。 |
「承認」不調の原因
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「承認」不調への対応
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「承認」を効果的にするために
日本人は一般的に相手を「ほめる」ことが苦手だと言われています。 地位・立場が上に行けばいくほど人をほめなくなります。自分の沽券にかかわると思っているのか、相手を「ほめる」ことをやらなくなるものです。 また、相手をほめたとしても、相手の反応が芳しくないと思うことがあります。そのときの「承認」行為は、相手のためではなく、自分のために行われているのです。 「承認」は「相手」のためにすることであって、「私」のためにすることではありません。自分の持っているすばらしいものに気づいていない人が多いので、それを「承認」という形で気づかせてあげるのです。 コーチから「承認」されることによって、クライアント自身が自分のやっていることを認識し、その意味を考え気付くのです。クライアントのモチベーションが高くなりコーチングの効果が出てくるのです。 日本人は、面と向かって自分の気持ちをいうのは苦手です。相手をほめるときにもその苦手意識がでてくるものです。わざわざ言わなくても「阿吽の呼吸である」とか、「言わなくても私の気持ちはわかっているだろう」とか考えがちになるのです。しかしながら、「承認」しない限り、相手はわからないものと考えましょう。 Iメッセージを使って、クライアントを「承認」することを心がければ、コーチの気持ちはクライアントに伝わるものです。照れないで率直にコーチの気持ちを表現するIメッセージを使うことです。 コーチングスキルだから「承認」するのではありません。心から「承認」することです。それゆえ無理やり探し出す必要はありません、だれでも必ずほめるところはあります。相手のいい点を認めるように常に心がけていれば必ず「承認」することになります。 |
「叱り方」について:コーチングを知る
「叱る」ということ
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コーチングのスキルに「承認」があります。「承認」をただたんに「ほめる」ことだと理解しているとするとコーチングには「叱る」ということは存在しないことになります。
しかしながら、コーチングには「叱る」ことは存在します。「叱る」ことも「承認」の一つなのです。
「ほめる」ことがクライアントに自ら考え,気付き、行動を促すことを、支援する目的で行われるのと同様に「叱る」ことはクライアントに自ら考え,気付き、行動を促すことを、支援する目的で行われます。
コーチングにおいては「叱る」ということは、「人は自分自身で成長しようとする力をそのうちに秘めており、そもそも、人は自ら考え自ら行動しようとする存在なのである」という前提にたち、クライアント自らが有能な人材へと成長しようとする力を引き出す為に使われるコミュニケーションスキルです。- 1.コーチングにおける「叱る」ことの効果:
- (1)コーチが「叱る」ことによってクライアントは自ら考えます。
- (2)コーチが「叱る」ことによってクライアントは自ら気付きます。
- (3)コーチが「叱る」ことによってクライアントは自ら行動します。
- 2.コーチングにおいて「叱る」方法:
- (1)クライアントそのものを「叱る」のではなく、具体的な事実について「叱る」ことです。
- (2)冷静に話しをします、感情的にならないことです。
- (3)クライアントの自ら成長しようとする力があることを信じて行います。
質問:コーチングを知る
「質問」の意味
「質問」とは質問する側と質問を受ける側があり、質問する側は「わからないこと」、「疑問点」を持っており、質問を受ける側が質問する側から質問を受けることにより、その答を提供するということです。 質問を受ける側が答を持っていればすぐに答えられます。答がわからないときは、質問を受ける側はその答を考えて答えようとします。 |
質問には、二種類あります。
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質問とは、質問を受ける側が「考える行為をする」有効な手段
例えば、「55×48は2640である」と先生が言えば、生徒はそれ以上考えません。ところが、「55×48はいくつでしょうか」と先生が質問すれば、生徒は一生懸命に考えます。 自分では、わかりきったことでも、他人の眼から見ると不思議なこともあります。それについて質問を受けると、なるほどそういう考え方もするのかと目からうろこが落ちることもあります。 逆に、人の考えていること、やっていることが、どうにも不思議でたまらないから、こちらから質問することもあります。そうすると、「相手の目からうろこが落ちる」のことになります。 それゆえ、どんどん質問を受けるべきであり、また、どんどん質問をするべきなのです。大きな勘違いってこともあります。ひとりよがりは過ちの元です。 |